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世界中で愛されるユリは沢山の園芸品種があり、美しく華麗なその姿から冠婚葬祭にもよく使用され、多くの人々に馴染みがある花の品種です。今回はユリの中でも幻といれているマドンナリリー カスケード ストレインをご紹介。
なぜ幻といわれるのか?秘密に迫りたいと思います。
「マドンナリリー」はレバノンのベイルート川渓谷の自生地を調査したという報告があります。ベイルート川の石灰岩地帯、北向きの日陰に自生していました。19世紀に日本から「テッポウユリ」がヨーロッパに伝わると、白い「テッポウユリ」とそれまでの「白いユリ」を区別するため「マドンナリリー」とよばれるようになってきました。日本では「ニワシロユリ」と名付けられていますが、大正時代頃は「フランスユリ」、「ヨレハユリ」等と呼ばれていました。しかし、和名、学名で呼ばれるよりも「マドンナリリー」の名前で呼ばれることが多いユリです。
マドンナリリーは紀元前から存在し栽培されていたと言われています。長く人々と関わってきた非常に歴史のある花です。
紀元前2500年頃のレリーフに「ユリの香水を作る」というものがありました。しっかりとマドンナリリーだと特定されてはいませんが、「白ユリ」が生息しており、それはマドンナリリーである可能性は高いようです。
ローマ帝国軍団が北部への侵攻する際、兵士たちはマドンナリリーの球根を持っていきました。魚の目の治療薬として使うためです。戦地に着くと球根を植え、花や球根をワインの中で砕き軟膏を作ったと言われています。こうしてマドンナリリーはローマ軍の侵攻とともにイギリス、フランスなどの各地へ運ばれて行き広まっていったと言われています。
第一次世界大戦中、北ギリシアのサロニカ、現在のテッサロキーニという場所でイギリス人兵士によりこの花は発見されました。それまでのマドンナリリーは、「自家不和合性」であり、種子の結実は難しいものでした。この「サロニカエ」は高い稔性(受粉し種子を作ることが出来ること)が認められました。マドンナリリーは種子による繁殖が出来ず、長い間挿し芽等の栄養繁殖を行って来たのでこの発見は素晴らしいことでした。「サロニカエ」の発見により、その後の「カスケード ストレイン」の育種へとつながり栽培が繁殖が容易になっていきます。発見者の名前はアンバー氏と言われます。スッと伸びている葉が、「サロニカエ」の特徴です。
「日本博物学年表」(白井光太郎氏著書)には、明和2年(1765年)に駒場の薬園でオランダより輸入した球根の栽培を行ったとの記載があり、江戸中期後半には日本に渡来していました。しかし、日本には多くの美しいユリが自生していたので広まることはありませんでした。
マドンナリリーは直径10cm程度の花を横向きに咲かせます。花粉は黄色で、花びらは純白、香水にも使われる香りは日本のユリとは全く違っています。
五領ヶ台ガーデンでは、神奈川県平塚市金目川のほとりにあります。周りは田んぼや畑に囲まれ、農場からは富士山を望むこともできます。この湘南地区の自然に囲まれたなかで「カスケード ストレイン」「ストッカース フォルム」「サロニカエ」「ケルヌウム」「スレイツ バラエティ」の5種類のマドンナリリーを栽培してます。
マドンナリリーの原産地は中東のレバノン、ベイルート川渓谷で乾燥した土地です。そのため日本で育てる場合、植え付け用土は水はけのよいものを選ぶのが良いとされています。また他のユリに比べて乾燥を好むので水やりは控えめにしましょう。(地植えの場合は降雨で十分です)マドンナリリーは地植えをしません。雨後の光で病気を発生します。
通常ユリの球根の植え付けは大きさの2〜3倍の深さで穴を掘りますが、マドンナリリーは上根がないので、球根は浅植えします。茎が立ってきたら折れないように支柱で支えます。
アブラムシはマドンナリリーが好きなので、月に1回オルトラン粒剤などの薬剤を根元に散布します。葉枯病には、弱く2月末から開花までは2週間おきに消毒を行います。密集して株数を多く栽培する場合は株間を十分に広げることが予防になります。
マドンナリリーの系統の中で最も丈夫で、作りやすく、球根の肥大が早い種類で花も一番早く咲きます。そのため日本でもっとも栽培しやすいマドンナリリーの系統品種になります。
この「カスケード ストレイン」はジョージ・S・スレイツ氏(U.S.A)が30年の時間をかけて、在来のマドンナリリーとサロニカェを交配し、強健、花が大きく、葉枯病に対して抵抗性を持つ優れた種類を選抜していきました。その後、オレゴン・バルブ・ファーム氏がスレイツ氏の仕事を引き継ぎ、「カスケード ストレイン」という名前で世の中に発表、販売されていきました。
マドンナリリーはキリスト教や聖母マリアの象徴として、ヨーロッパで古くから愛されてきたユリです。透明感のある白い大きな花や強い芳香が魅力的で香水の原料としても用いれらています。庭での観賞だけではなく花束を作って飾っても見応えがあります。日本ではテッポウユリ他品種のユリが普及していたこともあり、希少品種であることから「幻のユリ」と言われています。
希少品種で手に入れるのも、育てるのも難しいと言われていたマドンナリリー、近代の知恵により日本でも育てやすくなったマドンナリリー「カスケード ストレイン」を育ててみませんか?きっと歴史あるその美しく華麗な姿の虜になると思います。
GreenSnap編集部