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さすらいのボタニスト、ヤガメです。こんにちは。
「植物由来成分だから、体にやさしい」と、洗剤などの宣伝で、ときどき耳にします。
僕なんかは、そうは思わない。
植物にだって、恐ろしい毒を持ったものもあるのです。
たとえば、トリカブトがその代表ですね。
「植物由来成分だから体にやさしい」と、洗剤などの宣伝で言われますが、僕なんかはそうは思いません。
植物にだって恐ろしい毒を持ったものもあるのです。
たとえば、トリカブトがその代表ですね。
とある殺人事件で毒が使われたことで、認知度が高くなったとも思えるトリカブトは、実はキンポウゲ科トリカブト属植物の総称です。
日本には30種ものトリカブトの仲間が自生していますが、みんな○○トリカブトや○○ブシなどの名前がついています。
たとえば、これはホソバトリカブト。
長野県で撮影しました。
秋が深まるころ、八ヶ岳山麓に行くと、林床に群生して咲いているのが観察できます。
さながら青い絨毯のよう。
もちろん、群生ばかりではありません。
遠くからも青い花色が目につくので、近づいてみると……。
トリカブトがひっそり咲いているのに、遭遇することもあります。
毒成分はアルカロイド系のアコニチン、ヒバコチンで、全草にまんべんなく含まれています。
この写真は、僕ヤガメが撮影したものです。
よ~く見てください。
ハチが花の中に、頭をつっこんでいるのがわかるでしょうか。
トリカブトは花にも花粉にも毒があるため、この花から蜜を集めた蜂蜜からは、
毒の成分が検出されるほどだそうです。
ところで、人間の場合は、どうなのでしょうか。
僕ヤガメは、以前、トリカブトと知っていて、葉を一枚口に含み、何度か噛んだことがありました。
直後、後悔しました。
舌に独特の痺れが走り、すぐに吐き出しても、30分くらい口の中がビリビリしていました。
まぁ普通あんまりやらないでしょうけど……。
よい読者のみなさまは、絶対に絶対にマネしないでくださいね。
トリカブトは、中国では生薬として使われてきた歴史もありますが、
毒性が非常に強いことから、世界各地で矢毒として利用されてきました。
毒は加熱しても残り、ひどい場合には死に至るほど強いものです。
★トリカブトの仲間いろいろ。貴重種も
毒草として知られているとはいえ、その花の美しさはなかなかのものです。
山梨県の北岳山麓などの冷涼な地域では、トリカブトの仲間であるキタダケトリカブトが、林床などに一面に生えているのを見かける時があります。
秋も深まった頃、やや枯れかかった野辺に、青紫色の花色は映えるもので、思わず写真を撮りたくなります。
その美しい花も、食べたらえらい目に遭いますが……。
★トリカブトには絶滅危惧植物も
そんなトリカブトの仲間にも、実は珍品もあるのです。
いわゆる絶滅危惧植物というヤツですね。
たとえば、オンタケブシというトリカブトの仲間は、長野県などのごく限られた地域にわずかに生育するだけです。
植物に詳しい人が見ると、サンヨウブシというトリカブトの仲間に似ているのですが、花茎に開出毛が生える点が異なります。
・絡みつきながら育つ
とびきりの希少種で、奇妙な姿をしているのがハナカズラです。
カズラとはツル(蔓)のことを指す用語なので、なかなかどうして美しい名前だったりします。
ハナカズラ以外のトリカブトは、茎を伸ばし、周囲の草にうなだれたり、しっかり立ち上がったりして育ちます。
しかしハナカズラは、ツルを伸ばし、周囲の草に絡みつきながら育ちます。
・人知れずひっそりと
この種類は、九州にわずかに数か所自生地が知られているだけで、実物を見る機会はほとんどありません。
さらに、自生地における個体数も限られています。
私が行った佐賀県の自生地では、周囲を見渡しても2株しか自生していませんでした。
・栽培してみると……
そこで、有志の方が、タネからの増殖を試みています。
僕もその方から苗を分けてもらい、栽培することにしました。
芽出しは、よく見かける他のトリカブトのように、やや硬い茎が通直に立ち上がってきます。
ところが高さが1mくらいにまで育つと、突然先端がツル状に化け、周囲に絡みついて行きます。
そしてアサガオようにツルを仕立てて育てると、秋が深まるころ、美しい青紫の、まさに「トリカブト」の花を咲かせます。
・毒アリなのに……
毒で武装しているのだから、そこいら中に、はびこってしまうのでは? とは思われがちです。
ところが、植え替えをさぼると、とたんに弱ってしまう、か弱い植物です。
毒草として忌み嫌われる存在かもしれませんが、トリカブトの仲間も掘り下げて見て行くと、なかなか面白い存在だったりします。
フローリスト編集部