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これまでの連載で、日本の現状や今後起こりうる未来(#1)、SDGsとはいったい何なのか(#2)、などについてお伝えしました。
今後ますます重視されていくであろう「SDGs(持続可能な開発目標)」を達成するためには、私たち一人ひとりもこれ自分ごととして捉え、行動していかなければいけないというところまで、ご理解いただけたかと思います。
最終章、第3弾の今回は、SDGsを意識して具体的にアクションを起こしていくためには、k企業や私たち一人ひとりがどのように考え、アプローチしていけばよいかのかなどについて、川井さん(GreenSnap SDGsアドバイザー)にわかりやすく解説していただきます。
SDGsを達成するには、環境問題(CO2削減など)や社会問題(ジェンダーなど)だけでなく、経済成長をも同時に実現しなければいけません。
しかしながら、社会や経済の成長は、安定した環境があってこそ成り立ちます。また、気候変動問題は人類全体に破壊的な影響を及ぼしかねないため、特に意識して解決していくべきことといえます。
気候変動の緩和は、いわゆる脱炭素です。私たちが生活していく上で、いかにCO2を出さない生活にシフトしていけるかが重要となります。
脱炭素に向けて限りある資源を循環させるためにも、必要以上にモノをつくらない、無駄に買い換えない、捨てず修理して使い続けるなど、資源消費のあり方を根本的に見直す必要があります。
例えば、これまで廃棄されていたモノを資源として活用し、廃棄物を出さずに製品を生産していく仕組み「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の実現も不可欠です。
最近では、「NIKE(ナイキ)」が廃棄物でつくったシューズを発売したり、「KitKat(キットカット)」が商品パッケージを紙に変更したりしていますよね。これからは企業も廃棄物を出さないために、使用する素材や製法を見直す必要があるのです。
意外と知られていませんが、畜産業界も輸送業界と同じくらいCO2を排出しています。
実は牛のゲップにはたくさんのメタン(温室効果ガス)が含まれているのため、気候変動問題にも大きく影響を及ぼします。つまり、これまでのような畜産業を続けるわけにはいかなくなってきているのです。
また、日本は世界的に見ても、比較的フードロスの多い国です。食料自給率38%でありながら食品廃棄量も多いという現状の日本にとっては、今後の食生活を見直すことはとても大切となります。
気候変動へ適応するには、今後ますます増えるであろう自然災害や生態系の変化、海面の上昇、感染症の北上などに備えて、それらの被害を最小限に抑えるためにさまざまな施策を打つ必要があります。
持続可能な森林の保全や活用を目的とした仕組み(FSC)の普及や、沿岸部のインフラ強化、あるいは川沿いや沿岸部からの立退さえも、今後は必要となるかもしれません。少なくとも、海抜の低いエリアにある地下駐車場や機械室などは見直しが必要となるでしょう。
また、第1弾でもお話しした通り、温暖化の影響によって今後は作物が取れなくなる可能性があるため、牛・豚・鶏ではない植物性タンパク質からできる肉などの代替食品の研究開発や品種改良も重要となってきます。
これらの気候変動問題への解決策に加えて、私たち個人に今できることには、一体なにがあるのでしょうか?
もっとも身近なことでは、プラスチックゴミや古紙などのリサイクルがあります。また、不要になった洋服は誰かに譲ったり、衣類回収サービスを利用したりすることも大切です。
ガーデニング好きなみなさんなら、ご家庭で出た生ゴミを堆肥として利用したり、ロスフラワー(元気な生花が廃棄されること)を減らすために、生けたお花をドライフラワーとしてよみがえらせて飾ってみるのもいいでしょう。
過度な冷房や暖房の使用を控えたりするほか、近場への移動や都心間の移動の際はなるべく自動車を使用しないなどの取り組みもコツコツ継続できるでしょう。
上記のような個人の取り組みは、とても尊いものに違いありません。しかしながら、個人だけの力ではSDGs達成は不可能であるため、私たちで企業を動かすことがもっとも重要といえます。
買い物は、いわば企業への信任投票です。前述のような「廃棄物を出さない製品をつくっていたり、公害を出さないなどの社会課題に取り組む企業からモノを買い、そうでない企業からは買わない」という、それくらいの活動が必要です。
金融機関も今後徐々に、社会課題に取り組まない企業には資金を融資しない方向にシフトしていきます。これに加えて、私たち消費者から商品を買ってもらえなくなれば、企業は自ずと社会課題へ取り組んでいくはずです。
私たちは普段買い物をするときの思考やお金の使い方を変えていくことで、企業を動かし、SDGsに大きく貢献することができるのです!
「SDGsを解決しよう!」といわれても、SDGsが捉える課題のスケールが大きすぎて、漠然とした気持ちになってしまう方も多いかと思います。
しかしながら、このように細かく見ていけば、私たち個人にもできることはたくさんあるのです。たとえそれがとても小さなことのように思えても、世界中の人々一人ひとりが実践することで、想像以上に大きな変化をもたらすことができます。
私たちの未来だけでなく、私たちの子供や孫、生き物たちの未来を守るためにも、ぜひSDGsのことを意識して行動し、日々の生活を送ってみてくださいね。
この連載を通して、みなさんのSDGsについて興味を持っていただけたら嬉しいです!
SDGsアドバイザー 川井健史