夏の季語6🌻

季語は四季折々の風情を愛でる日本文化の象徴です。季語に含められる動植物を中心に、写真付きの俳句歳時記風にまとめた「季語シリーズ」、今回は夏の第六弾です。今回も俳号猫凡で自作の句を入れています。

2021.07.19

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【入梅】
昔は6月11日頃と定まっていたのですが、現代では気象庁がその年々で判定、宣言します。

ひそかなる恋そのままに梅雨に入る 桂信子

【夏萩】
梅雨頃から咲く萩で、宮城野萩が代表格です。また、青々と茂った萩の若葉を指すこともあるようですが、そちらには【萩若葉】【青萩】という季語が存在します。

夏萩のはらほろひれと葉の靡き 高澤良一

濡れそぼち紫深し夏の萩 猫凡

【梅雨茸(つゆだけ、つゆきのこ)】
単に茸だと秋の季語ですが、多湿を好むキノコは梅雨時にもよく生えます。

わたくしに劣るものなく梅雨きのこ 池田澄子
※ねこ流解釈といきたいところですが、「増殖する俳句歳時記」の評が素晴らしいので、そのまま転載させていただきます。

『最初は、作者の純粋な自嘲の句かと思った。でも、誰にもかえりみられない陰湿な梅雨時の茸(きのこ)の独白と読んだほうが面白い。つまり、茸がつぶやいているのだ。もちろん、そこには作者自身の自嘲が投影されているわけだけれど、不思議に暗くないところが不思議(笑)な作品だ。なぜだろうと、ほとんど一日中考えてしまった。で、結論は「わたくし」という主語にあると落ち着いた。「私」でもなく「あたし」でもなく、「わたくし」とは自らを四角四面に尊重するニュアンスを含んだ言葉だから、正直に「劣るものなく」と自己卑下をしていても、主語のまっとうさが発語者の印象を救うのである。映画の寅さんが「わたくし、生まれも育ちも柴又です」とやる、アレに共通する感覚だと思う。句での茸は寅さんの仲間なのだと思うと、とても楽しい。梅雨茸を、こんなふうに不思議な雰囲気に仕立て上げた作者に拍手をおくりたい。ああ、この句をぜひとも「梅雨きのこ」に読ませてやりたいものだ。何と言うだろうか。やはり「わたくし……」と、慇懃(いんぎん)に切り出してくるのでしょうね。『空の庭』(1988)所収。(清水哲男)』

【青葉】
同じ夏の季語【若葉】よりも緑濃く、たくましさを感じさせる言葉でしょう。

目には青葉尾張きしめん鰹だし 三宅やよい

木漏れ日に若葉青葉のさんざめき 猫凡

【文目、綾目(あやめ)】
ユリ目アヤメ科アヤメ属の多年草。水辺のイメージとは裏腹に草原や乾燥地で育ちます。花弁の根元が白と黄で、網目模様があるのが特徴です。

あやめ咲てきのふもけふも雨が降る 今成ゝ人

【姫檜扇(ひめひおうぎ)】
学名Freesia laxa、フリージアの仲間の球根植物です。檜扇が夏の季語ですから、姫檜扇も夏で良いでしょう。とはいえ檜扇はアヤメの仲間で本当は違う植物なのですが。

秘めやかに葉陰で微笑むプリンセス姫檜扇よそこにとどまれ 猫凡

【烏柄杓(からすびしゃく)】
サトイモ科の多年草で、塊茎は重要生薬半夏(ハンゲ)。塊茎には窪んだへそ状の部分があり、農婦が田畑の畦道の半夏を集めて小遣い稼ぎをしたことからヘソクリの語が生まれたといいます。

烏柄杓千本束にして老いむ 飯島晴子
わたくしに烏柄杓はまかせておいて 飯島晴子
※ねこ流解釈:飯島晴子は京都出身の女流俳人。79歳で自殺。いずれも難解で、全く的外れかもしれませんが、私見を述べてみます。

「老いむ」の句:作者あるいは農婦が烏柄杓(半夏)をせっせと集めては束にしていきます。ちまちまとそうした仕事をして、僅かな銭を稼ぎ、食べ、眠り、また働き、そんな営みを繰り返すうちに人はふと自らの老いに気付くのでしょう。

「まかせて」の句:烏柄杓のような雑草の始末は私にまかせて!ということなのか?そういう報いの少ない労苦ならば散々してきたワタクシですからね、ということだろうか。それともこういう一癖ありそうな珍妙な毒草だったら私の出番よ!ということだろうか?「わたくし」という丁寧な言葉に何らかの秘密が隠されていそうで、様々な想像を刺激する不思議な一句。

【梅雨】
爽やかな初夏に続く雨の時期で、日本と揚子江流域に特徴的な気候現象だそう。梅の実が熟す頃なので「梅雨」です。

どっちみち梅雨の道へ出る地下道 池田澄子

【額の花(がくのはな)】
アジサイの母種。小型粒状の両性花を目立つ装飾花が額縁のように縁取ります。

夏の日を淡しと思ふ額の花 野村泊月

【豆飯】
グリンピースすなわち剥き豌豆の炊き込みご飯です。薄い塩味で豆の風味と色を生かす。初夏を感じさせます。私事ですが、子供の頃は豆ご飯だと幾分がっかりしたものです。せっかくのおかずの味が豆によって損なわれるからです。大人になって豆ご飯には豆ご飯の味わい方があるのだということが分かってきました。

豆飯の湯気を大事に食べにけり 大串章

平凡なひと日の終わりの豆の飯 猫凡
※作者ノート:グリンピースのピース(peas)と平和のピース(peace)の駄洒落ですが、新鮮な豆を散らした白飯、しかも愛妻が心を込めて炊いてくれる。考えてみれば実に有難い幸せです。

【浅沙(あさざ)】
ミツワガシ科の多年生水草。若芽は食用。環境省レッドリストでは准絶滅危惧種ですが、北米では侵略的外来種扱いです。愛らしい花は午後には閉じてしまいます。

早々と眠るあさざに微風かな 岡野ひろ子

【病葉(わくらば)】
病害虫にやられたり、炎熱乾燥で傷んだりした葉です。

わくら葉に跼みしままの思ひごと 岡本眸

病葉や死ぬものあれば生まるものあり 猫凡

【繍線菊・下毛花(しもつけ)】
バラ科落葉低木。蕊の長いピンクの小花が集簇して独特の風情を醸します。名前は栃木県(下野の国)で発見されたから、という説と、「葉老いて薄毛を生ず。ゆえに下毛の名あり」(滑稽雑談)という説があります。

繍線菊の花雨粒を支へゐる 正木ゆう子

【水蠟樹の花(いぼたのはな)】
イボタノキはモクセイ科の落葉低木で、初夏、香り高い白い小花を枝先につけます。しばしばライラックの台木にされます。樹皮につくイボタロウムシから蠟を採り(いぼた蠟)、昔は、蝋燭(ろうそく)や戸の滑りをよくするために使われました。現在でも日本刀の手入れ、木工製品や銅製品のつや出しに使われているそうです。「蝋燭」の蝋が虫偏であるのは、中国でロウの原料が鯨油や蜜蝋→イボタロウムシ→ハゼノキと変遷してきたことに由来するようです。

うしろからいぼたのむしと教へらる 飯島晴子

水蠟樹の花は屈んで独り見る 猫凡

【虫干し】
夏の土用の晴天に衣服・書画を干して虫や黴の害を防ぐ習慣。写真はヒメマルカツオブシムシで、この幼虫は代表的な衣類食害虫です。

虫干や家といふ箱くつがへし 井沢正江

【ランタナ】
和名は【七変化】。季語にはなっていないようですが、晩秋から夏が花期ですので、夏の季語で良いのでは?

ランタナを振り向きもせず女去り 猫凡
※作者ノート:これは妻じゃありませんよ。ただの妄想、心象風景です(汗)。七変化から女心と秋の空が浮かび、ランタナが綺麗だねと指差す男を一顧だにせず去っていく女、理解不能で呆然とする男というシーンを創作してみたに過ぎません。

ところで江戸時代から昔は「男心と秋の空」だったそうですよ。室町時代の狂言『墨塗』に「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」という台詞が見られ、小林一茶に「はづかしや おれが心と 秋の空」の句があります。結局男女問わず人の心は移ろいやすく当てにならないものなのでしょうね。

【空豆(そらまめ)】
「大和本草に云く、この豆、実空に向く。ゆゑにそら豆といふ」(滑稽雑談)。

腹立ててゐるそら豆を剥いてをり 鈴木真砂女
※ねこ流解釈:井上涼の「びじゅチューン!」の名作「富士御神火文黒黄羅紗陣羽織」を思い出します。女性が押し黙って黙々と作業している時は要注意なのです。日本女性は腹が立っても炊事をしないわけにはいかない、そばで怒りの元凶である宿六はノホホンとテレビなぞ見ている、ムラムラ込み上げる怒りを転化するように乱暴に剥かれるそら豆‥クワバラクワバラ‥‥

【忍冬の花(にんどうのはな、すいかずらのはな)】
常緑の蔓植物で、冬でも枯れないことから忍冬、花を吸うと甘いので吸葛です。花は白から黄色に変わるので金銀花とも言い、蕾を生薬金銀花として温病(うんびょう、つまり熱が主体の夏の風邪)に用います。

すひかづら今来し蝶も垂れ下り 東中式子

【鴉の子】【鴉の子別れ(こわかれ)】
鴉は夏に子育てします。巣の下を通ると親鳥は猛然と威嚇してきます。雛鳥は目が青く見えるのが特徴です。巣立ち雛にしばらくは餌を与えていた親も、いずれ自立を促して厳しく突き離すのですが、戸惑って親を呼んでいる雛の声は哀れを誘います。

たべ飽きてとんとん歩く鴉の子 高野素十

鴉の子別れ驟雨に独り鳴く 猫凡

【蕺菜(どくだみ)】
日陰の雑草の代表格。嫌われ者のイメージが強いですが、意外にファンは多く、生薬としても重要なので【十薬(じゅうやく)】の異名もあります。

十薬のつぼみのやうな昔あり 遠藤由樹子

傲慢と邪悪のレッテル貼らりょうが蕺菜のごとそこに我在り 猫凡

今回も楽しんで頂けたでしょうか?
季語シリーズはまだまだ続きます。
毎月19日の《GS句会》もよろしくお願いします。

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『夏の季語6🌻』のみどりのまとめをみんなに紹介してみましょう

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ねこたんぽさん おはようございます٩(*´꒳`*)۶
朝から 楽しませて頂きました
ありがとうございます
今日も暑い💦💦
熱中症に気をつけてお過ごし下さいね☺️

おはよう👋😆✨☀️ございます

素敵なまとめですね~😁
素敵なコメントと素敵な写真
いっぱいですね❗

今日も宜しく😉👍️🎶お願いします🙇⤵️

おはようございます。😊
今回も楽しませて頂きましたよ~!😆🎵
俳句とは深いものですね。
俳句における「わたくし」の立ち位置、とても面白いです!
「増殖する俳句歳時記」読んでみたいです。
いつもながら、写真と選句の妙、解釈の切り口の面白さ、引き込まれて読みました。
今日もよろしくお願いいたします。😃🎶

おはようございます☀
俳句、「わたくしの」も興味深いものがありました。
また烏柄杓の俳句にも。季語ですよね。我が家の畑はこれが繁殖していて💦私なら「烏柄杓 グシャッと抜いてそこに置き」なんですがね😓
塊茎は半夏(はんげ)という生薬で鎮吐作用があるとのことですが、昔は重宝してたのでしょうか?
「束にする」という動作はこの植物に対しての畏敬の念とまではいかなくても、大切さが伺えるということでしょうか?
色々想像をたくましくしてくれる「季語シリーズ」最高でした。ありがとうございました🙇‍♀️

@七緒 さん ありがとうございます😊
こちらも蒸してます🥵
気をつけて夏を乗り切りましょ〜✊

@ナオ さん ありがとうございます😊
下手な鉄砲も何とやら、でございます😆

@たねちゃん さん ありがとうございます😊
どういう視点で詠むか(読むか)、一つのポイントですよね。
「増殖する俳句歳時記」は実に素晴らしいのですが、なぜか本は絶版になっているようで入手困難です💦ネット検索で読んでいます。

@サラ さん ありがとうございます😊
サラさんのカラスビシャクの句、良いですよ!「グシャッと」の一言に感情が見事に表されていて😉

ハンゲは今でも超重要生薬です。咳の麦門冬湯、胃もたれの六君子湯、喉の違和感の半夏厚朴湯などなど、ハンゲなしでは漢方診療は成り立たないと思います。

@ねこたんぽ さん
そうなんですね。お見それいたしました🙇‍♀️この地球上には、知らない生物や植物がいっぱいありますが、こうなると人間の見地からは迷惑だと思うものも非常に為になっているのですね。また学べました。

おはようございます✨✨
シュッと暑さが引くほど集中して読ませていただきました。心の栄養ありがとうございました。

@ミーシー さん ありがとうございます😊
まとめた甲斐がありました❣️

俳句は読みませんが、
今回も、楽しみました。

はらたてている 空豆を 剥いている
の句が、ストンと落ちて来ました。
このお料理は、何かな?

どの写真も美しいです。

ありがとうございました。

@モコ さん ありがとうございます😊
そら豆の句、すごく分かりますよね😁

@ねこたんぽ さん

今回も大変興味深く読ませていただきました。
毎月ありがとうございます。
鈴木真砂女に

 羅や人悲しませる恋をして

という句がありますが、真砂女の句は、触れた瞬間に心臓の奥をキュッと掴まれ揺さぶられるようなリアリティがあるように感じます。

この空豆の句も同じで、頭の中と胸の奥に情景がしっかり食い込んで迫ってきます。

真砂女の直球的生き方と俳句がリンクしているように思え、真砂女の句を読むと生きている真砂女に会えるような気がして嬉しくなります。

🌿 モコさん
 モコさんのページをお借りしてすみません。
 空豆の句に共感する方がいらして嬉しいです。

尾張きしめん鰹だし いいなあなつかしいなあ花鰹いっぱいのって踊ってた
昔を思い出しました
俳句、深いですね

@うさこ さん ありがとうございます😊
わずかな文字で人の心を揺さぶることができる俳句、魅力的です✨

@lovelydogy さん、ありがとうございます😊
ほんの少しの字数にその人の生き方、感性、思考が表れる、とても面白いし、怖くもあるところですね。

@ねこたんぽ さん

おっしゃる通りです。

先人の句を読み、自らが詠み、それを俯瞰して我を知る

といったところでしょうか。精進精進。

参加者が出揃いはじめ一番お忙しいところと拝察いたしますので、ご返信は無用です🙇‍♀️

めっちゃくちゃ、勉強になります😃✨
毎回、季節の季語をググって調べるのですが、沢山単語が羅列してて、なかなか映像として頭に入りません😅
ねこたんぽさんのは、写真と、例句、解説まであって、頭に入ります❗

@たーぼー * さん、過分のお言葉をありがとうございます☺️
季語シリーズもこれだけ回を重ねると同じ季語や同じ例句が出てきてしまうこともあると思いますが、まあ大目に見てやって下さいまし😁

こんにちは☺
今回も含蓄のあるお話とても勉強になりました❗
「梅雨茸」「烏柄杓」などとても面白かったです。
「ワタクシ」という言葉は畏まったり強調したいときに言いますもんね。今回のキーワードでしょうか?
ちょっと女の怖さも感じます😅

豆ご飯、塩加減が決め手ですね❗大好きです😊
鴉の子の句がいじらしくて好きです♡

@そらもよう さん いつもありがとうございます😊ちょっと長文が多くなりましたが、なかなか興味深かったでしょ?
鴉の子の句は自分でも気に入っているので嬉しいです。゚✶ฺ︎.ヽ(*´∀︎`*)ノ.✶゚ฺ︎。

ねこたんぽさん、こんにちは。
昨日、今日と句会と選考お疲れ様でした〜。
最終候補に私の句も加えていただいて
ありがとうございました。とても嬉しく励みになります〜✨✨

夏の季語まとめは今回で6なんですね。毎回楽しみにしております。
ランタナ振り向きもせずの作者ノートで妻じゃありませんよと解説するおちゃめさ、素敵ですね✨😆
腹立ててそら豆を剥く女性の気持ちに寄り添える所も流石だなあと思いました。
個人的にはグリンピースご飯大好きで、それだけで私はいけるのですが😋
子供の頃はがっかりしたのですね。
今息子がそんな感じです(笑)
「わたくし」の言葉ひとつで俳句も変わるというのも勉強になりました。
心の栄養をいつもありがとうございます💞今日はゆっくり休んでくださいね。

@ゆん さん いつもありがとうございます😊
丁寧に読んで下さっていることがよく分かり、とても嬉しく、励みになります。
もう7も半分くらい出来ているのですが、時間の経つのがとても速いので油断なりません(^v^;)

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