季語は四季折々の風情を愛でる日本文化の象徴です。季語に含められる動植物を中心に、写真付きの俳句歳時記風にまとめた「季語シリーズ」、今回は夏の二十一集です。なお猫凡は私の俳号です。
【烏瓜の花】
林縁に生える野生の瓜の妖しの花。スズメガを呼ぶために夜開き、翌日には写真のように萎んでしまいます。
烏瓜咲かすや魔女の息白く 岩崎すゞ
後朝の素顔恥じらひ烏瓜 猫凡
【雨蛙】
空気が湿を含んでくるとしきりに鳴くので雨蛙。特に夏の夕立前のイメージでしょう。
雨蛙鳴く日よ痛む膝の芯 水原秋櫻子
米不足人も蛙も雨頼み 猫凡
雨蛙でもう一句。
アデニアの下あてどなく雨蛙 猫凡
【蛇】
蛙の天敵で、多くの人からも忌み嫌われる爬虫類。よく見れば色柄も動きも大変美しいのですが。古語で「くちなは」。
日盛りの蛇とかちあひ道の上 岡井省二
朽縄にしてはメタルの流れ星 猫凡
【ゴーヤの花】
ゴーヤの実つまり苦瓜は秋の季語ですが、花は歳時記未収載のようです。カボチャなどと比べ華奢で縮緬じわが涼やかなこの花はぜひ夏の季語として認定していただきたいものです。
苦瓜の花を訪ひけり紋黄蝶 中緒和子
ゴーヤの花「坊や苦瓜お好きかしら」 猫凡
【緑蔭】
木下闇も緑蔭も夏の木陰ですが、前者は暗さ、後者は心地良さが主眼でしょう。
緑蔭や光るバスから光る母 香西照雄
緑蔭や動かぬ浮子と舟漕ぐ背 猫凡
【茄子の花】
ナスはインド原産とされる夏野菜。果実は水分が多く、体にこもった熱を冷ましてくれます。花は薄紫で、透け感がありこちらも涼やか。
君はただそこにいるのか茄子の花 岡本敬三
自己主張するまでもなし茄子の花 猫凡
【青田】
まだ穂が出ていない状態の若い稲が青々茂った田。日本の夏を象徴する風景。
一点の偽りもなく青田あり 山口誓子
しゃがんだら青田と山と空と我 猫凡
【凌霄花(のうぜんかずら、のうぜん、りょうしょうか)】
中国原産の蔓植物。鮮やかなオレンジ色の花を次々咲かせます。
凌霄の花が引つ張る蔓の先 中畑耕一
日輪に憧れ焼かれ凌霄花 猫凡
【ブイブイ】
コガネムシの異称。コガネムシ、カナブン、ハナムグリは生物学上は区別されますが、俳句だとごちゃ混ぜで、全部ぶんぶんとかブイブイと呼ばれることがあります。
かなぶんぶんオートロックのドアを打つ 斉藤ゆみ子
ブイブイは食って糞して落ちてブイブイ 猫凡
【萱草(かんぞう)の花】
ユリ科の多年草。夏に橙色の六弁花を咲かせますが一日で萎んでしまいます。憂いを忘れる花、忘草とも。
萱草の花に日暮のピアノ鳴る 秋篠光広
思い出すと苦しい見れば萱草の花 猫凡
【蟹】
五対の脚を持ち、第一脚が鋏となっている甲殻類。川や海の身近な生き物です。
いくたびも蟹岩を落ち身をかくす 加藤知世子
skid row 斜に構えて溝の蟹 猫凡
【ユッカ】
リュウゼツランの仲間の常緑低木。肉厚の大きな葉が放射状に出、長い花茎に俯いた白花を多数付けます。
顔上げぬ者ら眼科にユッカ咲き 伊丹三樹彦
勁さしか無き味気無さ花ユッカ 猫凡
【揚羽蝶】
単に蝶だと春の季語。写真はナミアゲハのペア。日本の多くの場所でアゲハは年2回成虫になりますが、なぜか夏の季語とされています。派手な模様が夏に似合うからでしょうか。
女學院前にて揚羽見失ふ 浅井一志
檸檬成らずそれもまた良し揚羽舞ふ 猫凡
【虎杖(いたどり)の花】
イタドリはタデ科の強健な多年草。通常は白花ですが、赤いものがあり、紅虎杖、明月草と呼ばれます。
いたどりに風百日の喪があける 高田律子
青空に虎杖なぜか目から水 猫凡
【ナイター】
日没後の野球試合を意味する和製英語(本来はnight game)。暮れゆく空の下、納涼気分で野球観戦、乙ですなぁ。
ナイターの点燈しなほ薄暮なる 岩崎健一
凡戦のナイター風も生ぬるし 猫凡
【冷酒(ひやざけ)】
冷の日本酒。飲み方の多様化で日本酒をロックで、という方も見受けられます。
浮世絵を出よ冷し酒注ぎに来よ 小澤實
瓜揉に冷酒夏もまた愉し 猫凡
【海猫】
身近なかもめで、みゃあみゃあと猫のように鳴き交わすことから。
串で喰う栄螺 海猫騒ぎすぎる 伊丹三樹彦
海猫や目泣き腫らし今日も飛べ 猫凡
【千日紅】
ヒユ科の一年草で、夏中愛らしい花を咲かせ続けます。千日草とも。
紅に倦むことなき淡さ千日草 稲畑汀子
耐えることそれが光るか千日草 猫凡
千日紅でもう一句。
日々そこに在る尊さよ千日草 猫凡
如何でしたか。季語シリーズは能う限り続けてまいります。次回もどうぞお楽しみに。
思い当たる銘柄はございますでしょうか?🍶