季語は四季折々の風情を愛でる日本文化の象徴です。季語に含められる動植物を中心に、写真付きの俳句歳時記風にまとめた「季語シリーズ」、今回は(もう春ですが)冬の第十三回です。猫凡というのは私の俳号です。
【冬の朝】【寒暁(かんぎょう)】
寒い冬の中でも一番寒い時。清少納言は「冬はつとめて」と書き、身の引き締まる感じを愛しました。男前!
寒暁の鼻をそろへて牛の息 長谷川嘉代子
所縁なき子供の笑顔冬の朝 猫凡
【冷し】
寒し、は空気の温度感、つめたし、は接触した時の低音感、と考えれば良いでしょう。
冷えた手を載せれば摑む手であつた 佐藤文香
欄干冷し水面の顔のなほ冷し 猫凡
【生姜掘る】
生姜は地上部が枯れたら収穫で、晩秋から初冬がおおむねその時期です。単に「生姜」は秋の季語、「生姜掘る」「生姜湯」は冬の季語とされているようです。
掘り上げて夜風匂へり生姜畑 斎藤道子
親萎び子力満つ生姜掘り 猫凡
【冬の海】
名曲「津軽海峡冬景色」や「哀しみ本線日本海」の暗さ、寂しさ、激しさ、でしょうか。
次の波はすこし遠くの冬の海 佐藤文香
冬の海叫びたいだけ叫んでも 猫凡
【冬の波】
北西季節風が起こす波濤が岩も砕けよと打ちつける凄まじさ。
舫ふなり光に傷む冬波に 佐藤文香
冬の波サラシの刹那透きとほり 猫凡
【蠟梅】
葉のない枯れ木のような姿に肉厚の黄色い花をびっしりつけて早春を告げる木。中国原産ゆえ唐梅(からうめ)とも。
Wi-Fiをかよひ蠟梅めける声 佐藤文香
照らすのは夕陽か或は蠟梅か 猫凡
【冬の鳥】
鶯は春の、目白は夏の季語ですが、これらの小鳥を一番観察しやすいのは冬です。餌の少ない冬には里に降りてきて、僅かな水場で渇きを癒したり水浴びしたり。冬に生き物を見られると嬉しくなりますね。
雪の鳥たちはとまつて木の高さ 佐藤文香
冬鳥に給餌すつづら要らねども 猫凡
【鈴懸の実】
スズカケノキ(プラタナス)は街路や公園によく植えられる木で、鈴をぶら下げたような実が特徴です。それなのに季語となっているのは花(春)。実は歳時記未収載。冬の寂しさを和らげてくれるような実も是非季語に加えて欲しいものです。
鈴懸の実が片雲の風の中 後藤比奈夫
抗へず沈む思ひよ鈴懸の実 猫凡
【冬雀】
冬の雀には他にも「寒雀」、「凍え雀」、「ふくら雀」など様々な名前が付けられています。それだけ親しみ深い存在なのですね。
ふくるるは薬袋と寒雀 南雲愁子
水浴びて直ぐにふくらの雀かな 猫凡
寒雀でさらに。
寒雀子規全集に夜明けたり 田川飛旅子
生きるとは闘うことか寒雀 猫凡
【小雪】
こゆきと読めばちらつく程度の少しの雪、しょうせつと読めば二十四節気の一つで初冬の頃を指します。
立ち睡る馬のまはりを舞ふ小雪 有馬朗人
小雪舞ふ蒴柄紅き苔の上 猫凡
【氷柱(つらら)】
雫が凍って円錐状に垂れ下がったもの。垂氷(たるひ)、銀竹(ぎんちく)という洒落た異名も。
いま落ちし氷柱が海に透けてをり 橋本鶏ニ
同じ水つららは透けて雪は白 猫凡
【ストーブ】【オイルヒーター】
雪国でもない限りストーブはあまり見かけなくなりました。オイルヒーターは密閉されたオイルを電気で温め、放散される熱で部屋を温める器具。無風で、ほぼ無音、空気を乾燥させにくく、寝室などに向いています。
妹よストーブに火の出来上がる 佐藤文香
オイルヒーター妻眠る胚となり 猫凡
【寒鴉(かんがらす、かんあ)】
年中見かけるカラスですが、鈍色の空に漆黒の姿であのデスヴォイス、冬ならではの風情です。
松に冬の鴉はくちばしを拭ふ 佐藤文香
寒鴉一声弑した歯髄に響く感 猫凡
【朽野(くたらの、くだらの)】
あらゆる草が枯れ果てた冬の野原。枯野と同じ意味ですが、朽ち果てた感じが強く、音の印象は全く違います。元は百済野という地名だったそうです。
くたら野や人を喰ふと鳴く烏 一茶
くだら野に雪はくすきのえに逝き 猫凡
【冬の梅】【早梅】
梅は早春の花ですが、年内くらいから咲く早咲きのものをいうようです。
冬の梅あたり払つて咲きにけり 一茶
梅早し君に見せむと心急き 猫凡
【枯蔦(かれづた)】
葉が枯れ落ちて蔓だけになった蔦。ツタは小さな吸盤でどこにでも這い上がります。
枯蔦や石の館の夜の雨 松根東洋城
枯蔦の装飾音符風の歌 猫凡
【千鳥】
干潟や磯などでちょこまか動いて採餌するスズメサイズの小鳥。場所によっては年中見られますが、鳴き声の寂しげな印象などが冬に似合うからか、冬の季語とされています。多くの種類が含まれ、写真は白千鳥です。万葉集の「淡海の海夕波千鳥汝が鳴けばこころもしのにいにしへ思ほゆ」が有名ですね。
ほほゑんでゐると千鳥は行ってしまふ 佐藤文香
千鳥はだるまさんがころんだ強い 猫凡
【雪】
三大季語の一つで、日本の美意識の代表的なもの。豊作の予兆として稲を司る神がもたらす便りと古人は考えました。
雪を来て踊る子どもはおほきな子 佐藤文香
しづしづと雪舞い降りて刺殺事件 猫凡
雪でさらに。
ゆめにゆめかさねうちけし菊は雪 佐藤文香
むつのはなアガヴェに抱かれ永遠となる 猫凡
お楽しみ頂けたでしょうか?季語シリーズは能う限り続けていくつもりです。今後もどうぞよろしくお願いいたします。
それともやっぱり大と小🙄?
最近チュン活をしている中野さとるさんのインスタを毎晩眺めてから寝ているのですが、キビシイちゅん生の中にも「りらっくちゅん」してるひとときが見られてホッコリします🥰
夢の中だけでも雀「我ときて」🥹