季語は四季折々の風情を愛でる日本文化の象徴です。季語に含められる動植物を中心に、写真付きの俳句歳時記風にまとめた「季語シリーズ」、今回は夏の二十七集で、太宰府、横浜散策中に浮かんだ句を多く収めました。なお猫凡は私の俳号です。
【茄子苗植う】
春に蒔いたものが20-30cmほどになった頃に定植します。
茄子植うやうらわかき日の雨合羽 石田波郷
植えるなり思うは茄子天ばかり也 猫凡
【五月晴】
本来は梅雨の晴れ間を指しますが、最近はGW頃の快晴の意味で使うことが増えているようです。
五月晴近江どの田も雲映す 野上雄三
五月晴青き九国博物館 猫凡
【夏の日】
夏の一日、夏の太陽、あるいは夏の強い日差しのこと。夏の日差しは夏日影とも言います
腰強き麺を茹であぐ夏日かな 森田昭子
夏の日にひときわ硬く大樹立ち 猫凡
【レモン水】
写真はシークァーサージュースで歳時記には載っていませんが、和名がヒラミレモン(平実檸檬)なのでレモン水に入れて良いでしょう。爽やかな柑橘系はやはり夏に合います。
レモンスカッシュのんで砂漠にゐたりけり 多田薙石
二万歩後ひらみれもんの水美し 猫凡
【夏の雲】
熱せられた陸地に発生する上昇気流が生む積雲・積乱雲。むくむく湧き上がるようで迫力があります。
あるときは一木に凝り夏の雲 原裕
夏の雲跳鯊となり前をゆく 猫凡
【舟遊び】
納涼目的で船を出すこと。
四万十川風無く遊船すべるごと 宮崎安子
SEABASSは走り心は空を飛ぶ 猫凡
【鵜】
素早く潜水して魚を捕らえる漁師鳥。翼に撥水性がないので、ずぶ濡れになると陸地で呑気に体を乾かしています。
嘴すこし開け炎天を鵜が過ぐる 山口誓子
トラスにてオブジェとなりぬ鵜の一羽 猫凡
【夜釣】
涼みを兼ねた夜の釣り、暗いがゆえの独特の趣が堪えられません。
肩並べ夜釣は物の言ひ易し 杉村典亮
港の灯滲む水面を割りせいご 猫凡
【蕺菜(どくだみ)】
独特の香りでお馴染みの草で、薬効が高いことから十薬の異名あり。八重咲きもあります。
どくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎
どくだみや八重に咲いても不稔性? 猫凡
【鰻】
海で生まれ川に遡上し、再び海に戻る美味なる魚。平賀源内以来、夏の土用の丑の日に食すものとなりましたが、今ではすっかり高嶺の花。
うの一字長きのれんや鰻焼く 小玉えつ女
居住まいを正して喰らふひつまぶし 猫凡
【定家葛の花】
キョウチクトウ科の有毒蔓植物。式子内親王を愛した(?)藤原定家が、死後も彼女を忘れられず、ついにこの葛に生まれ変わって彼女の墓に絡み付いたという伝説があります。古典に「まさきのかづら(真拆の葛)」「まさきづら(真拆葛)」とあるのも本種のことらしいです。
虚空より定家葛の花かをる 長谷川櫂
あてどなくただゆらゆらと真拆葛このしがらみを断ち切れたなら 猫凡
【樟若葉】
クスノキは樟脳の樟とも楠とも表記します。新緑は輝くようで生命力に満ちています。
神在す青葉の楠の畏けれ 小川濤美子
樟若葉緑の山となりにけり 猫凡
楠若葉でさらに。
樟若葉大きな雨の木となりぬ 森賀まり
若葉楠舟とし宙の彼方まで 猫凡
【忍】
古木や岩に着生するシダ。土がなくとも耐え「忍ぶ」という意味。よく釣忍として鑑賞されます。
人知れず暮るる軒端の釣忍 日野草城
忍ぶのは忍か楠か分かりかね 猫凡
【紫陽花】
アジサイ科の落葉低木で、花は梅雨の代名詞。
紫陽花に頭痛もとより親譲り 鈴木真砂女
太宰府天満宮心字池にて
紫陽花や振り向く心捨て前へ 猫凡
【送り梅雨】
梅雨明け間近の大雨。鬱陶しい梅雨の終わりへの期待が込められた言葉。
前任者そのままの椅子送り梅雨 執木龍
送り梅雨豊けし此処は水の惑星 猫凡
【花菖蒲】
アヤメの仲間ノハナショウブの栽培種。江戸時代から多くの品種が作出されてきました。
花菖蒲風を捉へていよよ濃し 石川風女
この想い菖蒲の袱紗で包みたし 猫凡
【緑蔭】
強い日差しの中の木立の陰。
大緑蔭あり日蓮宗大本山 鈴木フジ子
千年樹緑蔭さえも神々し 猫凡
緑蔭でさらに。
緑陰に話して遠くなりし人 矢島渚男
ももとせの恋人憩ふ緑陰に 猫凡
【ビール】
麦を発酵させて作る軽い酒。古代エジプトやメソポタミアでも飲まれたほどの歴史あり。
人もわれもその夜さびしきビールかな 鈴木真砂女
とりまビアぷはーと言えばはいおじさん 猫凡
いかがでしたか。季語シリーズは能う限り続けてまいります。次回もどうぞお楽しみに。