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AI耐寒ヤシ植物園 パート3

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本シリーズでは生成AIを用いて日本の本土(本州・四国・九州)で屋外越冬できる可能性があるヤシ、いわゆる「耐寒ヤシ」をビジュアル化し、その生態や魅力を解説していきます。 学名順に掲載しています。今回は第三弾として、Livistona alfrediiからRhopalostylis sapidaまでをご紹介します。
AI耐寒ヤシ植物園へようこそ。

「AI耐寒ヤシ植物園」の第三区画がオープンしました。
ポピュラーなフェニックス属やビロウでおなじみのリビストナ属から、多くのヤシ愛好家の心を掴んで離さないトラリヤシやニカウヤシ、さらには耐寒性において世界最強と名高いハリヤシなど、今回も個性溢れるヤシたちが多数登場します。
パート1、パート2を読破してすっかり耐寒ヤシの虜になった方も、今回初めてこのディープな世界に迷い込んだ方も大歓迎です。AIが描き出した美しくも逞しいヤシたちの姿を、どうぞ心ゆくまでご堪能ください。

​本まとめをご覧いただくにあたり、まずは以下の点をご一読ください。
※基本的な注意事項は前回と同様です。既にお読みの方は、以下の注意書きを読み飛ばして本編へお進みいただいて構いません。




​【⚠️必ずお読みください⚠️】

​本シリーズに掲載しているヤシの画像は、すべて生成AIを用いて描き出したものです。そのため、葉や幹などの形状や質感、サイズ感など、実際の植物とは異なる部分が「多々」あります。これらはあくまでその植物がどのような雰囲気を持っているかを感じ取っていただくためのイメージ図としてお楽しみください。
​各種の解説文については一部生成AIの技術を活用しつつ、筆者個人の見解も多分に含まれています。そのため、学術的・専門的な観点から誤りがある可能性も否定できません。
もし内容に誤りを見つけた場合や、「ここはもっとこうではないか?」という専門的な知見をお持ちでしたら、ぜひコメント欄にて優しくご教示いただけますと心強いです。
​本シリーズの最大の目的は、一人でも多くの方に奥深いヤシの世界に興味を持っていただくことです。厳密な植物図鑑としてではなく、ヤシの多様性や魅力を楽しむための一つの読み物としてお楽しみいただければ幸いです。




​【耐寒ヤシの分類と留意点】


​1. 耐寒ヤシの定義について

​「耐寒ヤシ」に関する厳密な定義はありませんが、本シリーズでは主にUSDA Hardiness Zone(耐寒性ゾーン/クライメートゾーン)の9b(年間最低気温がおおよそ-3.9℃〜-1.1℃)相当以上の耐寒性を持つものを基準として選定・掲載しています。
ただし、実際に本土で植栽され、越冬している種類であれば、データ上でゾーン10aとされている種類も取り上げています。


​2. USDA Hardiness Zoneとは

​USDA Hardiness Zoneとは、アメリカ合衆国農務省(USDA)が考案した、その土地の年間の最低気温を基準に地域を分類した指標で、日本では一般的に「耐寒性ゾーン」や「クライメートゾーン」などと呼ばれています。植物がどれくらいの寒さに耐えられるかを示す一つの目安として、世界中の園芸家の間で広く活用されています。

参考:ゾーンと最低気温の目安
ゾーン5a∶-28.9〜-26.1°C(-20〜-15°F)
ゾーン5b∶-26.1〜-23.3°C(-15〜-10°F)
ゾーン6a∶-23.3〜-20.6°C(-10〜-5°F)
ゾーン6b∶-20.6〜-17.8°C(-5〜0°F)
ゾーン7a∶-17.8〜-15°C(0〜5°F)
ゾーン7b∶-15〜-12.2°C(5〜10°F)
ゾーン8a∶-12.2〜-9.4°C(10〜15°F)
ゾーン8b∶-9.4〜-6.7°C(15〜20°F)
ゾーン9a∶-6.7〜-3.9°C(20〜25°F)
ゾーン9b∶-3.9〜-1.1°C(25〜30°F)
ゾーン10a∶-1.1〜1.7°C(30〜35°F)
ゾーン10b∶1.7〜4.4°C(35〜40°F)
ゾーン11a∶4.4〜7.2°C(40〜45°F)
ゾーン11b∶7.2〜10°C(45〜50°F)


​3. 指標の限界と、屋外越冬に関する重要な注意点

​ここで注意していただきたいのは、「ゾーンの数値=その地域で必ず育つ」という保証ではないということです。植物の越冬の成否は、以下のように複合的な要因に左右されます。

​湿度の影響∶ヤシにとって最大の敵は低温×高湿度の組み合わせです。特に成長点(幹の先端部)に水が溜まった状態で氷点下を迎えると、組織が凍結・壊死し、槍抜け(Spear Pull)のリスクが高まります。また、土壌に水分を多く含んでいると根が冷えて傷みやすくなります。

​樹齢と定着度∶小さな苗木の状態なのか、成木なのかによって寒さへの耐性は大きく変わります。また、植え付けは必ず春から初夏までの間に行い、冬が来る前にしっかりと根を定着させることが大切です。

​個体差∶同じ学名のヤシであっても、すべての個体がカタログスペック通りの耐寒性を発揮するとは限りません。低地の温暖な産地で育った系統と、より緯度や標高が高く寒冷な環境で育った系統とでは遺伝的に寒さへの強さが異なります。

微気候(マイクロクライメート)∶​同じ敷地内でも場所によって気温は数度変わる場合があります。寒風が直接当たる北側の開けた場所と、南向きの壁際や建物の近くでは、体感温度も実際の気温も異なります。コンクリートやレンガの壁は日中に熱を蓄え、夜間に放出するため、周囲よりも気温が下がりにくくなります。

稀な大寒波∶USDA Hardiness Zoneで示されるのはあくまで統計上の平均値で、10年に一度訪れる記録的な大寒波のような外れ値には対応していません。例えば平均気温がゾーン9aであっても、一度でも-6〜-7度を大きく下回る寒波が来れば、耐寒性が境界線上にあるヤシは致命的なダメージを受けます。

ゾーンはあくまで「目安」であり、万能な指標ではありません。実際の栽培においては、植える場所の微気候を観察し、必要に応じて霜除けや防寒対策を行うことが屋外越冬成功への鍵となります。




​【データの見かた】

📚️和名・流通名∶日本国内での主な名称です。和名だけでなく、別名や、販売される際に一般的に用いられている流通名なども含みます。学名のカタカナ表記については情報源によって揺れが生じる場合があります。

🔤英名∶英語圏での一般的な名称(Common Name)です。英語以外の現地名などは記載していません。

🌎️分布∶もともと野生の個体群が自生している自然分布域や自生環境です。人為的に持ち込まれたものが野生化している帰化分布域は含みません。

📏樹高∶最大樹高の目安です。栽培環境によって大きく変動する可能性があります。

🌸繁殖∶ヤシ科は通常、実生によって増やされるため、主に性型を記載しています。
雌雄異株∶個体ごとに性別が分かれていて、発芽可能な種子を実らせるには雄株と雌株を揃える必要があります。
雌雄同株∶一つの株が雄花と雌花の両方を咲かせます。雌雄で開花時期がずれる雌雄異熟の性質を持ち一株では自然受粉しにくい樹種もあります。
両性花∶一つの花の中に雄しべと雌しべの両方が揃っています。

❄耐寒性∶年間最低気温を基準とした世界的な指標であるUSDA Hardiness Zone(耐寒性ゾーン/クライメートゾーン)で表記しています。
植物が越冬できるかどうかは年間最低気温だけで決まるものではなく、データも情報源によって異なるケースがあるため、一つの目安にとどめましょう。

🔎珍しさ∶日本国内での入手難易度を5段階で評価しています。世界的な流通量や希少性とは乖離がある場合があります。あくまで筆者の体感に基づく極めて主観的な指標であることをご理解ください。
★→一般的な園芸店やホームセンターなどで入手可能です。
★★→一般的な園芸店で見かける機会は少ないですが、一部のネットショップなどで入手可能です。
★★★→やや入手困難です。輸入種子を取り扱うヤシ専門のショップやオークション、フリマなどで入手できる場合があります。
★★★★→かなり入手困難です。日本国内での入手は難しく、稀にコレクターの放出品がごく少数出回ることがありますが、種子を個人輸入して育てるのが最も現実的です。
★★★★★→世界的に流通極小の超希少種です。実質的に入手不可能な種もこのレベルに分類しています。




​【本まとめで紹介するヤシ一覧】


Livistona alfredii
Livistona australis
Livistona boninensis
Livistona chinensis
Livistona decora
Livistona fulva
Livistona lanuginosa
Livistona mariae
Livistona nitida
Livistona saribus
Nannorrhops ritchiana
Normanbya normanbyi
Oraniopsis appendiculata
Parajubaea cocoides
Parajubaea torallyi
Phoenix canariensis
Phoenix dactylifera
Phoenix loureiroi
Phoenix pusilla
Phoenix reclinata
Phoenix roebelenii
Phoenix rupicola
Phoenix sylvestris
Phoenix theophrasti
Plectocomia himalayana
Pritchardia hillebrandii
Pseudophoenix sargentii
Ptychosperma elegans
Ravenea glauca
Ravenea rivularis
Ravenea xerophila
Rhapidophyllum hystrix
Rhapis excelsa
Rhapis humilis
Rhapis multifida
Rhapis subtilis
Rhopalostylis baueri
Rhopalostylis sapida


​それでは、個性豊かな耐寒ヤシたちの世界をお楽しみください。


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Livistona alfredii
​📚️和名・流通名∶ミルストリームパーム
🔤英名∶Millstream Palm, Millstream Fan Palm
🌎️分布∶オーストラリア(主に西オーストラリア州北西部のピルバラ地方。カーナーボン地方のケープ半島にも隔離分布)。恒久的な湧水池や、地下水脈が浅い枯れ川(ワジ)の縁など
📏樹高∶約6~12m
🌸繁殖∶機能的雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

​オーストラリア北西部の乾燥地帯に自生する非常に希少なヤシです。
掌状葉はリビストナ属としては珍しい白みがかった青緑色〜銀青色で、Livistona victoriae と並んでシルバーブルー系のビロウとしてコレクターの間で人気があります。
成長は非常に遅く、年月をかけてゆっくりと育ち、重厚な幹を形成します。
流通量は極めて少ないですが、植物としての性質は強健で環境適応力が高いのが特徴です。
耐暑性が強く、直射日光を好み、よく日に当てることでシルバーブルーの発色が良くなるといわれています。乾燥には耐えますが、野生では地下水や適度な水分がある環境を好んで自生しているように、成長期にはしっかりと水を与えることで生育が良くなります。
耐寒性については、-3〜-4℃前後まで耐えるとされ、日本の本土の一部地域では露地越冬の可能性が期待できます。
本種は両性花を咲かせますが、​実際には個体ごとに「雄として機能する株」と「雌として機能する株」に分かれるため、実を結ぶためには雄株と雌株の両方が必要です。​つまり、見た目は両性花であっても、実質的には雌雄異株として振る舞います。
リビストナ属は一株で結実可能な種が多数を占めますが、一部のオセアニア原産種の中には本種のような機能的雌雄異株の性質を持つ種が存在します。
Livistona australis
​📚️和名・流通名∶オーストラリアビロウ
🔤英名∶Australian Cabbage Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州、ビクトリア州にかけての沿岸地域。標高0~600m付近の湿潤な森林や湿地
📏樹高∶約15~25m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

非常に強健で育てやすく、リビストナ属の中でも耐寒性が強いヤシの一つです。
「Australian Cabbage Palm」という英名は、成長点(ハート・オブ・パーム)が食用になることに由来しています。
自然分布の南限はビクトリア州東部(イースト・ギプスランド地域)にあるキャベッジ・ツリー・クリーク(Cabbage Tree Creek)で、緯度としては南緯37度45分付近に位置し、これはオーストラリアの在来ヤシ科植物全体における最南限の自生地としても知られています。
大型で、原産地では直立する幹の高さが最大で30mに達することもあります。
深緑色をした光沢のある大きな掌状葉を広げ、他のリビストナ属と同様に葉柄には鋭いトゲがあります。
成長は比較的速く、小さな苗のうちから美しい掌状葉を楽しむことができます。
-5〜-7℃程度までの耐寒性があり、関東以南の沿岸部であれば地植えが可能です。
日本国内での植栽例としては東京ディズニーシーのアラビアンコーストが最も有名で、幹が高く上がった立派な成木が4本並んでいる姿が見られます。
Livistona boninensis
​📚️和名・流通名∶オガサワラビロウ、メイジマビロウ(トゲがないタイプ)、トゲなしビロウ(トゲがないタイプ)
🔤英名∶Bonin Islands Fan Palm
🌎️分布∶日本(小笠原諸島の聟島列島、父島列島、母島列島、火山列島)。山地の斜面や尾根筋など、日当たりの良い環境に自生
📏樹高∶約10~20m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9a-9b
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

小笠原諸島固有のヤシには、本種と Clinostigma savoryanum(ノヤシ、別名セボレーヤシ)の2種が存在しますが、その中でも本土の冬に耐えうる耐寒性を備えているのは本種です。
外見はビロウ(Livistona chinensis)に酷似していますが、果実がビロウと比較して大きく、狭卵型であることで区別されます。
小笠原諸島に広く分布する葉柄の縁にトゲがあるタイプと、母島列島の姪島などに限定して自生するトゲがなくやや小型のタイプが存在し、種としては同じ L. boninensis ですが、後者は「メイジマビロウ」や「トゲなしビロウ」と呼ばれて区別されることもあり、扱いやすいことから特に観葉植物として好まれています。
耐寒性については明確なデータは少ないですが、ビロウよりも若干劣るとされています。
日本原産ということもあり、日本国内では比較的入手しやすい種類で、ふるさと納税の返礼品として手に入れることも可能です。
海外での流通量は極めて少なく、希少種として欧米などのごく一部のヤシ愛好家の間でのみ知られ、市場で見かけることはほとんどありません。

ビロウにごく近縁で、過去には両者は同一種とみなされてきたこともあり、研究者によって見解が二転三転した複雑な経緯を持っています。

1892年、ドイツの植物学者オットー・ヴァールブルク(Otto Warburg)氏が、小笠原の個体を初めてビロウの変種として位置づけ、Livistona chinensis var. boninensis Warb. と命名しました。これが最初の学名上の明確な区別です。

1913年、ヤシ科研究の世界的権威であったイタリアの植物学者オドアルド・ベッカリ(Odoardo Beccari)氏が変種としての特徴を再定義し、命名者表記が Livistona chinensis var. boninensis Becc. に変更されました。

1935年、日本の植物分類学の基礎を築いた中井猛之進氏によって、このヤシが標準的なビロウとは明確に異なる固有の形質を持っていると判断され、初めて独立種としての地位が与えられます。変種名(boninensis)を種小名へと格上げし、現在の学名である Livistona boninensis (Becc.) Nakai を正式に発表しました。これにより、小笠原の固有種「オガサワラビロウ」として広く認識されるようになりました。

しかし、20世紀後半に入ると、世界の植物分類学(特に広範な種をまとめる傾向のある「ルンパー(Lumper)」的なアプローチ)において、形態的な差が僅かであるとして再びビロウの変種として扱われる時代が続きます。多くの日本の植物図鑑や行政のレッドデータブック等でも、長らく Livistona chinensis var. boninensis の学名が好んで使われ、中井氏の独立種説は一時的に劣勢となりました。

2009年、ヤシ科植物の世界的権威であるジョン・レスリー・ダウ(John Leslie Dowe)氏の研究により、中井氏の分類通り独立種として扱うべきであるとの見解が国際的な植物データベース(キュー王立植物園のPlants of the World Onlineや、World Flora Onlineなど)に広く受け入れられました。
こうして、中井氏の提唱した Livistona boninensis (Becc.) Nakai が正名として確定しました。
Livistona chinensis
​📚️和名・流通名∶ビロウ(蒲葵)、ビロウヤシ、クバ、ホキ、アヂマサ(古名)
🔤英名∶Chinese Fan Palm, Fountain Palm
🌎️分布∶日本(四国、九州、南西諸島)、台湾、中国南部(広東省、海南島。一部の資料では広西壮族自治区や福建省に分布との記述もあるが、栽培起源の野生化個体とみなされるのが一般的)。日当たりが良く、水はけの良い石灰岩質の土壌や斜面、海岸の崖地に多く見られる
📏樹高∶約10~15m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★☆☆☆☆

日本に自然分布する6種のヤシのうち、唯一本土に自生する種とされています(シュロ Trachycarpus fortunei は中国由来の帰化植物であるという説が有力です)。
沖縄では「クバ」の名で親しまれ、琉球文化の象徴ともいえるほど生活、信仰、歴史と深く結びついた植物です。葉は団扇や笠などの生活用具として重宝されてきただけでなく、天の神様がこの木を伝って地上へ降り立つとされ、御嶽(うたき)や拝所(うがんじゅ)では神木として大切に守られています。
確実な自然分布の北限は長崎県平戸市田平町とされています。福岡県宗像市の沖ノ島にもビロウは存在し、福岡県指定の天然記念物およびレッドデータブックで北限自生地とされている一方で、近年の科学的調査や歴史研究により、祭祀や信仰を目的として人為的に移植された可能性が高いと結論付けられています。

外見は、葉の先端が糸のように垂れる様子が特徴的で、噴水のようなその姿から英語では「ファウンテンパーム」とも呼ばれています。
葉柄が葉身の中まで伸びているコスタパルメート(costapalmate)の性質を持ち、葉全体が美しく波打ちます。
幹にはリング状の葉痕の他に、縦方向に不規則な亀裂が入り、基部がやや太くなるのが特徴です。
​リビストナ属の中でも屈指の強健さを誇り、耐寒性・耐暑性・耐陰性・耐潮性のいずれにも優れています。栽培環境を選ばず、関東以南の温暖な地域であれば地植えが可能です。
本種と同程度の耐寒性を持ち、同じく日本国内で広く普及しているワシントンヤシモドキ(Washingtonia robusta)と比較してかなり生育が緩やかなため、長期にわたって大きさを保ちやすく管理しやすい利点があり、シンボルツリーとしておすすめできる種類です。

本種には以下の変種が存在します。

var. chinensis(シナビロウ)∶中国に分布する基本変種です。日本のビロウと比較して、果実がやや細長いのが特徴です。

var. subglobosa(ビロウ)∶var. chinensisと比較して、果実が球形に近いのが特徴です。日本や台湾に分布するビロウはこのタイプです。

var. amanoi(ダイトウビロウ)∶沖縄県の大東諸島固有の変種で、葉がより深裂し、背が高くなり、最大で20m近くに達します。
Livistona decora
(旧Livistona decipiens)
​📚️和名・流通名∶ビロウモドキ、リボンヤシ
🔤英名∶Ribbon Fan Palm, Weeping Cabbage Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州東部の海岸沿いに南北に細長く分布。沿岸低地や河川沿い、森林の外縁部など
📏樹高∶約9~18m
🌸繁殖∶機能的雌雄異株
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★★★☆☆

「decora(優美な、装飾的な)」という名前の通り観賞価値が高く、​細かく裂けた葉先がまるでリボンのように優雅に垂れ下がる姿が本種の最大の特徴です。
風に揺れるその繊細な姿は涼しげで、独特の柔らかい雰囲気を演出してくれます。他のリビストナ属と同様、葉柄にはトゲがあります。
幹は比較的細身で直立し、高さ6m程度に達するまでは活発に成長し、それ以降は成長が緩やかになります。
若い苗のうちから深く切れ込んだ葉を出し、鉢植えでも一般的なビロウとは異なる雰囲気を楽しめます。
​栽培に関しては日光と水を好みますが、ある程度の乾燥にも耐える適応力を持っています。
ビロウやオーストラリアビロウとほぼ同じ-6℃程度までの耐寒性を持っているため、庭のシンボルツリーとして一風変わったヤシをお求めの方には良い選択肢となるでしょう。
かつては Livistona decipiens と呼ばれていたため、現在でもその名で流通することがあります。
Livistona fulva
​📚️和名・流通名∶リビストナ・フルヴァ
🔤英名∶Blackdown Fan Palm, Blackdown Tableland Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州中央東部ブラックダウン・テーブルランドおよびその周辺の斜面一帯。砂岩地帯の岩場にのみ限定
📏樹高∶約8~13m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

沿岸の都市ロックハンプトン(Rockhampton)から西に約180km内陸に入ったブラックダウン・テーブルランド国立公園に自生する、リビストナ属の中でも希少かつ個性的な種です。
種小名の「fulva」は「黄褐色」を意味し、その名の通り、葉の裏側が美しい黄金色〜銅褐色の綿毛で覆われており、ヤシ愛好家の間では「黄金のビロウ」として知られています。
基本的には日光を好む種ですが、幼苗は葉焼けすることがあり、ある程度の遮光が推奨されています。
また、幼苗は耐寒性が著しく低いともいわれており、クライメートゾーン9bでは大きく育つまでの間は鉢植えで管理し、冬季には室内での越冬が推奨されています。成熟した個体は-3℃前後までの低温に耐えるとされています。
世界的に流通量が少ない、コレクター向けのヤシです。
Livistona lanuginosa
​📚️和名・流通名∶リビストナ・ラヌギノーサ
🔤英名∶Cape River Fan Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州北東部。ケープ川、カンパスピー川、ロールストン川、バーデキン川、ベリアンド川とその支流の河畔域。ほぼ例外なく河岸、小川、氾濫原沿いに生育する
📏樹高∶約15~20m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

種小名の「lanuginosa」は「軟毛に覆われた」を意味し、その名の通り葉柄や花序の表面に綿毛が密生するのが特徴です。
やや青みがかった灰緑色の掌状葉は半分程度まで細く切れ込み、派手さはないものの、野性的でありながら繊細さも併せ持ち、独特な魅力があります。
自生エリアが非常に狭く、野生個体数は1000株に満たないと推定され、IUCNのレッドリストでは危急種(Vulnerable)に指定されています。
リビストナ属の中でも特に乾燥や暑さ、強烈な陽射しに強く、砂漠地帯でもよく育つとされています。ただし、原産地では川の岸辺や氾濫原に生育し、地下水位が高い(水分が豊富な)環境を好んで自生していることから、生育期は適度な湿り気を保つのが理想です。
-4℃程度までの低温や霜に耐えられるとされていますが、その希少性ゆえ、本種の存在はヤシ愛好家の間でもあまり知られておらず、一部のコレクターの間でひっそりと愛されている、知る人ぞ知る存在となっています。
Livistona mariae
​📚️和名・流通名∶リビストナ・マリアエ
🔤英名∶Central Australian Cabbage Palm
🌎️分布∶オーストラリアのノーザンテリトリー州フィンケ渓谷国立公園内にあるパームバレー
📏樹高∶約15~20m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

オーストラリア大陸のど真ん中、周囲約800〜1,000kmにわたって他のヤシ科植物は一切自生しない、広大な乾燥地帯にあるパームバレーという特定の峡谷にのみ隔離分布しています。
この地は極度に乾燥した内陸の砂漠に囲まれていながら地下水が豊富に湧き出るオアシス環境であり、本種はその隔絶された環境で独自の進化を遂げてきました。
​ヤシ愛好家から特に絶大な人気を誇る理由は、その驚くべき色彩にあります。自生地の強烈な日差しや紫外線から身を守るため、若木にはアントシアニンという赤色色素が豊富に含まれ、全体が真っ赤に染まるという特徴があり、他のヤシにはない圧倒的な個性を放ちます。
この真っ赤な葉が楽しめるのは若木のうちだけで、成長していくにつれて最終的には緑色の葉になります。
栽培下で赤色を強く出すには、とにかく日光に当てることが最重要です。室内や日陰の環境ではすぐに緑色に戻ってしまいます。葉焼けに注意しつつ少しずつ強い光に慣らし、最終的には屋外の最も日当たりの良い場所で管理しましょう。
また、アントシアニンは強い光線に低温が加わることでより濃く発色します。肌寒い季節になると、一段と深い赤色に変化するはずです。
-3℃程度の耐寒性があるといわれていますが、東京で幼苗を屋外越冬させた際には-2℃前後で葉に傷みが出ました。クライメートゾーン9bでは十分な大きさに育つまでの間、冬季には保護をおすすめします。
希少なヤシですが、人気の高さもあり国内では少数ながら種子や苗が販売されることがあります。
Livistona nitida
​📚️和名・流通名∶リビストナ・ニチダ
🔤英名∶Carnarvon Gorge Fan Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州中央部のカーナーボン渓谷周辺。砂岩の帯水層から一年中水が湧き出る川沿い、渓流の縁などの常に湿り気がある環境を好み、ユーカリの林の中に混生することが多い
📏樹高∶約18~25m
🌸繁殖∶機能的雌雄異株
❄耐寒性∶8b
🔎珍しさ∶★★★★☆

種小名の「nitida」は「光沢のある」を意味し、その名の通り硬質で光沢感の強い深い緑色の葉が特徴のヤシです。
​幹がすらりと直立し、基部が太く、上部に向けて細くなっていく傾向があり、成長すると非常に均整がとれた姿となります。
幹の表面には古い葉柄基部が独特のパターンとなって残り、それが彫刻のような渋い質感を生み出します(※イメージ画像では再現されていません)。
全体的な姿はシンプルながらも気品のある美しいシルエットをしています。
耐寒温度は成木で約-8〜-9℃とされ、リビストナ属の中で最強ともいわれています。以前はより低い9a程度と過小評価されることが多かったのに対し、栽培事例やデータが集まるにつれて、現在ではより耐寒性が高い8bに分類されることが多くなっており、海外の栽培経験豊富なナーセリーでは、適切な微気候があればゾーン8aでも栽培に成功していると報告しています。
回復力が非常に高く、厳しい冬に葉が傷んでも暖かい夏の1シーズンで完全に新しく青々とした樹冠を再生することができるようです。ただし、若い苗木や植え付けたばかりの木は霜や凍結に弱いため、耐寒温度の境界線に近い地域ではしっかりと定着するまでの間、冬季には保護する必要があります。
オーストラリアでは庭園樹・街路樹用として安定した生産があるほか、アメリカでは耐寒性と成長の速さが評価され、寒冷な地域向けの景観樹として15〜18フィートクラスの大型株からコンテナ苗まで一定の流通量があります。
しかし、日本国内では全く流通せず、その存在はほとんど認知されていません。一部のヤシ愛好家のみが知る、ビロウやワシントンヤシモドキよりも美しく耐寒性の高いレアな上位互換種、というポジションにあります。
Livistona saribus
📚️和名・流通名∶タロウヤシ、リビストナ・サリブス
🔤英名∶Taraw Palm
🌎️分布∶ベトナム、ラオス、タイ、カンボジア、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン。主に標高600m以下の低地熱帯雨林
📏樹高∶約20〜40m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

東南アジアの広い範囲に自生する、リビストナ属の中でも特に背が高く育つヤシです。
現地では建築資材や日用品の材料として古くから生活に利用されており、その強健さと成長の速さから熱帯地方では景観樹として植栽されています。
一見、平均的なリビストナ属のような姿をしていますが、最大の特徴は葉柄の縁にずらりと並ぶ大きなトゲです。サメの歯を思わせる鋭いトゲには荒々しいカッコよさがあり、本種の一番の見所です。
成熟すると鮮やかな青色の果実を実らせ、生食も可能です。しかし果肉は薄く、種子がほとんどを占めているため、現地でも食用として一般的なフルーツのように市販されることはありません。
基本的には暖かく湿潤な環境を好みますが、適応力も高い種類です。熱帯低地原産のヤシとしては耐寒性が強く、-3℃程度までの低温に耐えるとされています。
Nannorrhops ritchiana
​📚️和名・流通名∶マザリヤシ、マザリパーム、ナンノロプス・リチアナ
🔤英名∶Mazari Palm
🌎️分布∶パキスタン、アフガニスタン、イラン、オマーン、サウジアラビア、イエメン、インド北西部。海岸近くの平地から標高2,000mの山岳地帯まで広く分布
📏樹高∶約2~4m
🌸繁殖∶雌雄同株。一回結実性で、開花した幹は枯れるが、株立ち性のため植物自体は生き続ける
❄耐寒性∶6b-8b(諸説あり、気候に依存)
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

ナンノロプス属は本種のみで構成され、その独特の性質からヤシ愛好家の間で高い人気を誇ります。
中東の乾燥地帯という、植物にとっては極限の環境で進化した、ヤシの中でもトップクラスの耐寒性と耐暑性、耐乾性を併せ持つ貴重なヤシです。
野生では、植物がほとんど育たない砂漠の山、岩だらけの斜面、乾燥した川床(ワジ)や谷間に好んで自生します。一見極度に乾燥した土地に見えても、地下水脈が浅く根から常に水分を吸収できる場所に定着する特徴があります。
年間降水量が僅か100〜400mmの地域で、夏は45℃を超える酷暑、冬は雪が降り-20℃に達するような寒暖差の激しい環境で生き抜いています。

外見は、​硬質で美しい葉の色彩が特徴で、個体差はありますが青みがかった灰緑色〜銀白色(シルバーリーフ)を帯びており、乾燥した荒野に佇む姿はとても神秘的です。
成長するにつれて地面を這うように、あるいは斜めに複数の幹を伸ばす株立ち状になり、個性的でダイナミックな樹形となります。
​性質は非常にタフで、地植えして根が張れば暑さや乾燥にはこれ以上ないほどの強さを見せますが、幼木はやや栽培が難しいといわれています。
多湿環境では根腐れを起こしやすいため、用土については特に排水性と通気性を重視した配合が求められます。鉢底石を敷くのも効果的です。
耐寒性については、原産地のような乾燥した気候下であれば-20℃まで耐えるという情報もありますが、一般的には-10℃前後が比較的安全なラインとされています。低温かつ湿潤な環境を特に嫌い、冬季の多湿は枯死のリスクを高めます。
珍しいヤシですが、専門店やオークションなどでは定期的に種子や苗の販売があり、入手のハードルはそこまで高くない種類です。

Nannorrhops arabica は植物分類学的には本種と同一(シノニム)であるとされていますが、アラビア半島南部などの個体群から選抜された美しい青白い銀葉(シルバーリーフ)を展開させる系統は、園芸市場や愛好家の間では「Nannorrhops arabica 'Silver'(ナンノロプス・アラビカシルバー)」という名称で区別され、一般的な「リチアナ」として流通しているものよりも価値が高く扱われています。
Normanbya normanbyi
​📚️和名・流通名∶ブラックパーム
🔤英名∶Black Palm, Normanby Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州北東部。北側のクックタウン(Cooktown)南部(ロスビル近郊)から、南側のモスマン(Mossman)近郊にかけての沿岸地域一帯
📏樹高∶約10~20m
🌸繁殖∶雌雄同株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

クイーンズランド州のごく狭い範囲の熱帯雨林に自生する珍しいヤシです。
本種の特徴は、小葉が葉軸の左右に揃った角度で並ぶ一般的な羽状複葉(pinnate leaves)とは異なり、小葉が葉軸の全周を囲むように放射状に配置された、ボリューム感のある立体的な羽状複葉(plumose leaves)にあります。
各小葉の先端は魚の尾びれ(フィッシュテール)を思わせる形状で、全体的な姿は人気の高いフォックステールパーム(Wodyetia bifurcata)に酷似していますが、本種の葉の裏側ははっきりとした銀白色であるため、幼苗でも判別は容易です。
「ブラックパーム」という英名の由来は、その内部の木材の色に由来しています。一見すると幹はグレーがかった色をしていますが、幹を縦に割った内部は非常に硬く、真っ黒な木質をしています。この強靭で黒い木材は、先住民族のクク・ヤランジ族によって伝統的に槍などの道具作りに活用されてきました。
耐寒性については、一般的に10aとされるフォックステールパームよりも僅かに優れているといわれ、-3℃程度まで耐えるという情報もありますが、過去に東京での屋外越冬には失敗しています。
Oraniopsis appendiculata
​📚️和名・流通名∶ブロンズパーム
🔤英名∶Bronze Palm
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州北東部。標高300〜1500mの湿潤な熱帯雨林地帯
📏樹高∶約15~20m(栽培下では6mを超えることは滅多にない)
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

クイーンズランド州高地の冷涼で霧深い熱帯雨林にのみ自生する、極めて希少な一属一種のヤシです。
オラニオプシス属はセロクシロン亜科(Ceroxyloideae)に属し、セロクシロンやラベニアに比較的近縁です。
葉の裏側が上品な銀色〜ブロンズ(銅)色に輝くことから、「ブロンズパーム(Bronze Palm)」と呼ばれています。
羽状複葉は最大で6mにもなり、幹の高さは20mに達する大型のヤシですが、成長は極めて遅く、幹が形成されるまでに数十年(60年とも)もの歳月を要し、幹の高く上がった巨大な野生の個体は樹齢数百年に達していると推定されています。
その極端な成長の遅さと希少性から、世界的に栽培されることはほとんどありません。
しかし観賞価値は高く、幼苗のうちから特徴的な葉裏のブロンズ色を楽しむことができるため、一部のコレクターの間では垂涎の的となっています。
栽培に関しては直射日光を避け、低地性のヤシよりも涼しく適度な風通しを意識して管理するとよいでしょう。乾燥には耐えられないため、土壌は常に均一な湿り気を保つようにします。耐寒性は-3℃程度までとされています。
Parajubaea cocoides
​📚️和名・流通名∶マウンテンココナッツ
🔤英名∶Quito Palm, Mountain Coconut
🌎️分布∶ペルーのカハマルカ県サン・イグナシオ郡タバコナス地区とされている
📏樹高∶約10~16m
🌸繁殖∶雌雄同株
❄耐寒性∶9a-9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

アンデス山脈の高地に自生する、ココヤシ(Cocos nucifera)に非常によく似た姿で知られるヤシです。
ココヤシのようなトロピカルな姿を日本の庭で楽しみたいと願うヤシ愛好家にとっては魅力的な選択肢となります。
「Quito Palm(キトパーム)」という英名は、エクアドルの首都キト周辺で古くから庭木や公園樹として親しまれてきたことに由来します。
高く伸びる頑丈な幹と、その頂部に広がる20〜30枚の大きな羽状複葉が美しいシルエットを作ります。
クルミほどの大きさのココナッツに似た果実を実らせ、この果実に含まれる種子は食用になり、インカ帝国の貴重な作物として重宝されていました。
日本の平地での栽培においては、真夏の極端な高温と過湿に注意すれば比較的扱いやすい種であると思われます。
耐寒性については、海外では成木が-6.5℃まで耐えたという報告もありますが、一般的には-3〜-4℃とされています。幼木は耐寒性が著しく低く霜に弱いため、小さなうちは鉢植えで冬季には室内に取り込み、大きく育てた上で、地植え後の最初の数年間は霜よけが必要です。
本種は長年にわたり、南米のアンデス高地(エクアドル、コロンビア、ペルー)の都市部や庭園でのみ栽培されている栽培種と考えられており、野生株は存在しない、あるいは絶滅したとされていました。
しかし、2010年になってペルー北部カハマルカ県サン・イグナシオ郡タバコナス地区(標高約1,900mの山岳地帯)で野生と見られる大規模な自生群落が発見されました。これが本当に人類の手が入っていない本来の自然分布域なのか、あるいは過去に持ち込まれたものが野生化した(逸出)ものなのかについては、専門家の間で議論が続いています。
Parajubaea torallyi
​📚️和名・流通名∶トラリヤシ、パソパヤヤシ
🔤英名∶Bolivian Mountain Coconut, Pasopaya Palm
🌎️分布∶ボリビア(チュキサカ県、コチャバンバ県、サンタ・クルス県、タリハ県、ポトシ県)。主に標高2,400~3,400m付近の高地の急峻な岩の多い谷間、乾燥した森林地帯
📏樹高∶約15~20m
🌸繁殖∶雌雄同株
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★★★★☆

世界で最も標高の高い場所に自生するヤシの一つとして知られる壮大な羽状葉ヤシです。
種子はココナッツに似た形状をしており、外見もココヤシに似ていますが、高地環境で進化し、類を見ない適応力を持っています。
​太い幹を力強く直立させ、その頂部に濃い緑色の羽状葉を豪華に広げます。ココヤシよりも密度が高く、硬質でしっかりとした質感があります。
本種には主に2つのタイプが存在し、基本種であるvar. torallyiは果実や種子が大きく、var. microcarpa(通称∶ミクロトラリヤシ)は基本種に比べて種子や果実が小さく、全体的にやや小型なのが特徴です。
原産地は冬期(7月・8月)には日常的に氷点下まで冷え込み、夏期の日中の気温は35℃に達することがあるなど寒暖差が大きく、年間降水量は約500〜600mmと少なく11月から3月の夏季に集中し、残りの数ヶ月は雨がほとんど降らない乾燥した環境です。
日本でも露地栽培の例があり、夏場の高温には意外なほど強く、冬季の過湿に注意すればそれほど難しい種ではないのかもしれません。
成木の耐寒性は約-7℃、海外では-13℃でも生き延びた記録がありますが、P. cocoidesと同様、幼木は非常に寒さに弱く、野ざらしにすると-3℃〜-5℃程度でも深刻な葉傷みやダメージを受けるケースが複数報告されています。株が小さいうちは鉢植えのまま管理し、冬季は温室や室内で保護することを推奨します。
世界的に流通量が少なく、日本国内で販売されることは稀で、コレクターの間では憧れのヤシの一つとなっています。
種子からの育成に挑戦するファンも多く、長い年月をかけて風格ある姿へと育て上げていく過程には、他にはない楽しみがあるでしょう。
Phoenix canariensis
​📚️和名・流通名∶カナリーヤシ、フェニックス、フェニックス・カナリエンシス
🔤英名∶Canary Island Date Palm, CIDP
🌎️分布∶カナリア諸島。主に標高200〜600m前後の岩がちの急峻な渓谷や峡谷の底・斜面に沿って自生
📏樹高∶約10~20m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★☆☆☆☆

世界中で街路樹や公園樹として最も愛用されている大型の羽状葉ヤシです。
日本では一般的には「フェニックス」の名で広く知られています。宮崎県のシンボルとして有名で、1966年に県民投票によって県の木に選定され、南国ムードを象徴する存在として親しまれています。
本州でも公園や商業施設の植栽や街路樹として見かけることも多く、寒さに強いヤシといえばこの木を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
長大な羽状複葉を四方八方に豪快に広げ、幹には葉が落ちた跡が規則正しく模様として残り、成長した個体には堂々とした風格があります。
他のフェニックス属と同様に、羽状複葉の付け根付近には小葉が変化した長く鋭いトゲがあるため、手入れの際には注意が必要です。
成熟した雌株は鮮やかなオレンジ色の実を房状にたくさんつけ、観賞価値を一層高めます。
​-7℃程度までの耐寒性があり、関東以南の平地では地植えが可能です。日本国内における露地栽培の北限は福島県いわき市とされています。
若木の成長スピードは緩やかですが、最終的には巨大になるため、庭に植栽する場合には将来の大きさを十分に考慮した広いスペースが必要です。広い庭をお持ちであれば、シンボルツリーとして南国らしい景観を演出してくれるでしょう。

注意点として、本種は特にヤシオオオサゾウムシ(Red Palm Weevil)の標的に選ばれやすいことで有名です。
この虫はヤシの成長点を食害して枯死に至らしめるという、ヤシ類にとって災害級の大害虫で、本来の分布域である熱帯地域ではサゴヤシやココヤシなど多様なヤシを食害しますが、温帯地域での被害のほとんどはカナリーヤシに集中しています。
日本国内でも温暖化の影響もあってか北上を続け、現在では神奈川県でも被害が確認されています。
ヨーロッパでは1996年にスペインのアンダルシア地方に侵入後、ポルトガル、フランス、イタリア、ギリシャなどへ爆発的に生息域を拡大し、僅か15年足らずの間に100万本規模のカナリーヤシが失われるという壊滅的な損害をもたらし、美しい景観の喪失や枯死した木の莫大な撤去費用などが各地の経済に大打撃を与えています。
原産地のカナリア諸島でもこの害虫の侵入により一時は甚大な被害を受けましたが、徹底した防除・駆除活動が実を結び、2016年には世界で初めて根絶に成功するという快挙を成し遂げています。
Phoenix dactylifera
​📚️和名・流通名∶ナツメヤシ(棗椰子)、デーツ、センショウボク(戦捷木)
🔤英名∶Date Palm
🌎️分布∶有史以前からの栽培の歴史が長いため特定されていないが、北アフリカの乾燥地域からペルシャ湾岸地域が原産と推定されている
📏樹高∶約15~25m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶8b-9a
🔎珍しさ∶★☆☆☆☆

人類とヤシの関わりの中で、最も歴史が古く、かつ重要な役割を果たしてきたヤシの一つです。
古代から中東や北アフリカの砂漠地帯において、その果実「デーツ」は貴重な食料源として、また交易品として文明を支えてきました。デーツは雌株にのみ実を結び、暑く乾燥した気候で熟すことでより高い糖度を蓄えます。
数千年の栽培の歴史の中で、各地域の気候や土壌に合わせて多様な品種が生み出され、その数は1,000を超えるといわれています。品種によって味や食感が大きく異なり、生食、製菓、料理のコク出しなど、それぞれの品種ごとに適した用途があります。
園芸界においては耐寒性・耐暑性・耐乾性に優れたシンボルツリーや観葉植物として扱われます。
​カナリーヤシと比較すると葉のボリュームは控えめで、幹も細く全体的にスマートな姿となります。環境や個体差にもよりますが、葉は青みがかった灰色を帯びる傾向があります。
​栽培については、とにかく直射日光を好みます。湿度の高い日本の気候下では土の排水性を高め、風通しの良い日向で管理するとよいでしょう。
鉢物が出回っていますが、本種ならではのユニークな入手手段として、スーパーなどで食用として販売されているドライフルーツのデーツの種子を蒔くという方法があります。
多くのドライデーツの種子は高い発芽能力を持ち、適切な温度と湿度の環境下では比較的短期間で発芽します。ただし、種が抜かれている商品も多いので、種ありであることを確認してから購入しましょう。
フェニックス属は典型的な「遠隔発芽(Remote Germination)」という発芽形態をとり、発芽するとまず子葉柄と呼ばれる白い管を土中に長く伸ばし、種子から離れたところで葉となる芽と根が形成されるという、ヤシ特有の面白い発芽プロセスが観察できます。
最初は1本の細長い単葉から始まり、成長するにつれてヤシらしい羽状複葉へと変化していく様子をじっくりと楽しむことができます。
Phoenix loureiroi
​📚️和名・流通名∶ソテツジュロ(蘇鉄棕櫚)、フェニックス・ローレイリー、フェニックス・ハンセアナ
🔤英名∶Mountain Date Palm
🌎️分布∶中国南部、台湾、インド、バングラデシュ、ネパール、ブータン南部、パキスタン、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、フィリピン。低地から標高の高い山岳地帯まで、乾燥した岩場や開けた森林地帯
📏樹高∶約2~5m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

南アジアから東南アジアにかけての非常に広い範囲に分布するフェニックスです。
種小名はポルトガルの植物学者ジョアン・デ・ルーレイロ(João de Loureiro)氏に由来します。
日本のウェブサイトでは「loureirii」と誤って綴られていることも多く、「ローレイリー」の名称が広く定着しており、ソテツジュロという和名でも知られています。
全体的なシルエットはカナリーヤシに似ていますが、カナリーヤシよりもずっと小型で、コンパクトながらもフェニックス属らしい樹姿を楽しめるのが大きな魅力です。
​性質は非常に強健で直射日光を好み、乾燥にも強いです。耐寒性も-4〜-5℃と比較的強く、東京近辺では新宿御苑や浦安市などで幹の上がった成木の植栽例があります。
以前は​台湾やフィリピンの個体群はP. hanceanaとされていましたが、現在では実質的な植物学上の違いはないという見解が一般的で、シノニムとして扱われています。

本種には基本変種である var. loureiroiと、変種 var. pedunculata(シノニム:var. humilis)の2つの変種が存在します。

var. loureiroi∶主にインドシナ半島から東アジア、フィリピンにかけての東方エリアに分布します。小葉の縁に薄い茶色(褐色)の線があるのが特徴です。

var. pedunculata∶主にインド亜大陸からヒマラヤ山麓にかけての西方エリアに分布します。小葉の縁に茶色の線がなく、葉全体がシルバーブルーを帯びるのが特徴で、「Blue Mountain Date Palm」という英名があります。
Phoenix pusilla
​📚️和名・流通名∶ヒメナツメヤシモドキ、フェニックス・プシラ、オオカミヤシ(P. reclinataを指す場合もある)
🔤英名∶Ceylon Date Palm
🌎️分布∶インド南部(アーンドラ・プラデーシュ州、タミル・ナードゥ州、ケーララ州、カルナータカ州)、スリランカ。海岸近くの乾燥した砂地や荒れ地、丘陵地、水はけの良い乾燥林、湿地の周辺や水田のあぜ道など
📏樹高∶約3~5m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

南アジアの低地に自生する、フェニックス属としてはやや小型のヤシです。
カナリーヤシやロベレニーのような整った美しさとは対照的な野生味のある樹姿が魅力で、基部に鋭いトゲを持つ硬質な羽状複葉を広げます。
単幹であることもあれば、株元から子株を出して株立ちとなることもあります。葉は基本的には鮮やかな緑色であることが多いものの、シルバーブルーやシルバーグリーンの個体も存在します。非常に変異が多く、同定が難しいヤシです。
種小名はラテン語で「小さい」を意味し、幹はあまり高くなりませんが、葉が横に広がるため、ある程度の植栽スペースは必要です。
直射日光を好み、過酷な乾燥や猛暑にも耐える強靭さを持っています。-3〜-4℃程度までの耐寒性がありますが、霜にはやや弱いとされています。
日本国内での流通は皆無で、人気種の多いフェニックス属の中では知名度が低い種です。それゆえにコレクションとしての価値は高く、フェニックス属が好きな方や、個性的なヤシを庭に取り入れたいという方にチャレンジしていただきたいレアなヤシです。
Phoenix reclinata
​📚️和名・流通名∶カブダチソテツジュロ、セネガルヤシ、フェニックス・レクリナータ、オオカミヤシ(P. pusillaを指す場合もある)
🔤英名∶Senegal Date Palm, Wild Date Palm
🌎️分布∶サハラ以南のアフリカ大陸、コモロ諸島、マダガスカル、サウジアラビア南部、イエメン。熱帯・亜熱帯の湿地、川沿い、森林地帯、草原など標高0~3,000m付近まで広範囲に分布
📏樹高∶約6~12m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9a-9b
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

アフリカ大陸に広く分布する、トロピカルでダイナミックな景観を作り出す人気種です。
種小名の「reclinata(寄りかかる、傾斜した)」が示す通り、根元から多くの株が分かれ、外側に向かって緩やかに傾きながら放射状に広がっていく株立ち状になるのが特徴です。
放っておくと横に広がってかなり大型になりますが、子株を間引くことで樹形をある程度コントロールすることができます。
かなりの広範囲に分布していることからもわかるように、環境適応能力が非常に高く、湿地帯から乾燥地まで様々な環境に順応できる強さを持っています。
見た目は個体によって大きく異なり、葉や幹の質感、大きさ、全体の樹姿は様々で、稀に単幹の個体も存在します。これには栽培下では他のフェニックス属と交雑しやすいことや、広大な自生地の環境に応じて変異に富んでいることが原因として考えられます。
​日本国内でもネットショップやオークション、フリマなどで比較的容易に入手可能で、南国リゾート感のあるヤシとして人気が高まっています。
耐寒性は-4〜-5℃程度とフェニックス・ロベレニー(P. roebelenii)よりも僅かながら強く、ロベレニーの地植えが難しい地域では良い代替種となり得ます。
Phoenix roebelenii
​📚️和名・流通名∶シンノウヤシ(親王椰子)、フェニックス・ロベレニー、フェニックス、ロベ、ロベヤシ
🔤英名∶Pygmy Date Palm
🌎️分布∶ラオス、ベトナム北部、中国(雲南省シーサンパンナ・タイ族自治州)。川岸や岩の多い湿潤な森林地帯
📏樹高∶約2~3m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★☆☆☆☆

南国リゾートの雰囲気満点な、観葉植物として人気の高い小型ヤシです。
「シンノウヤシ」という和名がありますが、一般的には学名をカタカナ読みした「フェニックス・ロベレニー」や、「ロベ」という愛称で親しまれています。
幹を1本立ち上げ、鮮やかな緑色の羽状複葉を優雅に広げるその姿はいかにもヤシらしく、トロピカルな雰囲気を感じさせます。
​このヤシの魅力はそのサイズ感でしょう。成熟しても高さは2〜3m程度、鉢植えであればさらにコンパクトに仕立てることが可能で非常に扱いやすく、住宅やオフィス、店舗のディスプレイに最適です。
​性質も強健で育てやすく、十分な水やりと適度な日照さえあれば初心者でも安心して育てることができます。ただし、他のフェニックス属と同様、羽状複葉の根元付近には鋭いトゲがあるため、剪定や手入れの際は注意が必要です。
国内では主に伊豆諸島の八丈島で生産されたものが流通しています。1921年(大正10年)にタイから雌雄一対の株が持ち込まれたのが本格的な栽培の始まりで、現在では島を代表する特産品となり、国内シェアの9割以上を占める日本一の生産地となっています。
​本種はその普及度合いから、日本のヤシ愛好家の間では耐寒性ゾーンのベンチマークとしてヤシの耐寒性を語る上で度々名前の上がる種です。もし近くでロベレニーが屋外越冬している庭があれば、それは「9b程度までの耐寒性を持つヤシが地植えで越冬できる可能性がある」という、信頼性の高い一つの目安となります。
Phoenix rupicola
​📚️和名・流通名∶イワヤマナツメヤシ、ルピコラヤシ、フェニックス・ルピコラ、イワソテツジュロ
🔤英名∶Cliff Date Palm
🌎️分布∶ブータン、バングラデシュ、インド(西ベンガル州、アッサム州)。標高の低い崖地や険しい斜面、森林の縁など
📏樹高∶約6~8m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

「最も美しいフェニックス」と称される、非常に観賞価値の高い中型〜大型のヤシです。
種小名の「rupicola」は「岩に住む」を意味しており、その名の通り自生地では崖地や険しい斜面に根を張り、過酷な環境下で静かに佇んでいます。
​本種が他のフェニックス属と一線を画す点は、その葉の美しさにあります。光沢のある鮮やかな緑色をした小葉の並びは非常に整っており、完全な平面に近い羽状複葉がしなやかに美しい曲線を描いて広がります。
フェニックス属特有の鋭いトゲは比較的控えめで、幹も滑らかで細く、全体的に優美で洗練されたシルエットを形成します。
日本国内では一般的な園芸店では見かけませんが、ネットショップやオークション、フリマなどでは少数ながら苗や種子が販売されることがあります。
耐寒性は-3〜-4℃程度とされており、南関東以南の太平洋沿岸などでは露地栽培できる可能性があります。
Phoenix sylvestris
​📚️和名・流通名∶サトウナツメヤシ、フェニックス・シルベストリス
🔤英名∶Silver Date Palm
🌎️分布∶インド、パキスタン、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカ。森林や平原、氾濫原や湿地帯、地下水脈が比較的浅い場所にある半乾燥地帯など幅広い環境に分布
📏樹高∶約12~15m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

南アジアに広く分布するフェニックスです。
種小名の「sylvestris」はラテン語で「森の」「野生の」を意味し、古くから栽培されているナツメヤシ(P. dactylifera)に対して自然の森や野山に自生する野生の原種であることを示しています。
葉は灰緑色であることが多いですが、個体によってはシルバーブルーの色味が強く出るものもあります。
幹の表面には古葉の付け根が美しい幾何学模様となって残り、成熟するにつれて芸術的な質感を演出します。
原産地インドやバングラデシュでは、幹を切開して滲み出てくる樹液を採取し、それを煮詰めることで伝統的なパームシュガー(砂糖)が作られます。
基本種よりも成長が速く幹が太く育つ'Robusta'という品種もあります。
性質としては直射日光を好み、成長速度は緩やかですが、一度地植えして環境に馴染むと猛暑やある程度の乾燥にも耐える高い適応力を発揮します。ナツメヤシよりも多湿環境に強く、日本の気候に馴染みやすい種類といえるでしょう。
耐寒温度は通常-5〜-6℃程度ですが、'Robusta'であれば-7℃まで耐えるとされています。
Phoenix theophrasti
​📚️和名・流通名∶クレタンナツメヤシ、フェニックス・テオフラスティ
🔤英名∶Cretan Date Palm
🌎️分布∶ギリシャ(クレタ島、キクラデス諸島、ドデカネス諸島、ペロポネソス半島)、トルコ南西部(ムーラ県、アンタルヤ県)。主に標高200m以下の海岸近くの渓谷や、年間を通じて水が流れる、あるいは季節的に水没する砂質の河床や岩場
📏樹高∶約10~17m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶8b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

地中海東部の限られた地域にのみ分布し、2種しか存在しないヨーロッパ大陸に自生するヤシの一つです。
種小名は、「植物学の祖」と称される紀元前4世紀の古代ギリシャの哲学者であり、アリストテレスの弟子であるテオフラストスに由来します。
テオフラストスの著書『植物誌』の中では、クレタ島などに生えている野生のヤシはバビロニアなどの温暖な地域で育つナツメヤシ(ポイニクス/φοῖνιξ=現在のPhoenix dactylifera)とは違い、根元から何本も叢生して低く茂る傾向があることや、実が小さく、食用に適した甘く完熟した果実を結ばないという、一般的なナツメヤシと明瞭に区別する記述が世界最古のヤシの記録として遺されています。
2000年以上の時を経て、1967年にスイスの植物学者ヴェルナー・グロイター(Werner Greuter)がこのヤシを新種として再発見・記載した際、古代ギリシャの時代に世界で初めてこのヤシの存在と特徴を記録したテオフラストスに敬意を表し、その名を冠して Phoenix theophrasti と命名しました。

テオフラストスはクレタ島をはじめ、ギリシャ本土のペロポネソス半島やテーベなどにもヤシが自生・存在していることを記録していましたが、長い歴史の中で、開発や気候変動などの影響によってギリシャ本土では絶滅したと考えられてきました。そのため、現代の植物学では長らくクレタ島とその周辺の島々、トルコ南西部の沿岸固有種と定義されていました。
2017年の調査により、ペロポネソス半島にあるパレア・エピダウロス(Παλαιά Επίδαυρος)地域で、約15〜22本の野生の自生群落が再発見され、テオフラストスの記述の正しさが証明されています。これにより、本種の自然分布域の北限が大幅に更新されることとなりました。

外見はナツメヤシ(P. dactylifera)に似ていますが、全体的に一回り小さく、葉は非常に硬質で青みがかった緑色をしています。
基部から次々と新しい子株(吸枝)が芽吹き、成熟した個体は大きな茂みを作り上げます。
トルコのボドルム半島北部に位置するギョルキョイ(Gölköy)に自生する個体群は、他の地域よりも幹が短く果実の柄が長いといった特徴を持ち、亜種(Phoenix theophrasti subsp. golkoyana)として区別されています。
​耐寒性はフェニックス属の中で最も強く、-8〜-12℃の低温に耐え、一部のウェブサイトでは8aとも評価されています。
特にエピダウロスに自生する var. Epidaurus(※植物学上の正式な変種ではなく、耐寒性の高さから園芸界で区別されているに留まります)は、オランダのナーセリーが実施した初期テストにおいて非常に高い耐寒性を示し、「耐寒性は約-15℃と推定される」と報告されています。
しかしながら、トゲの鋭さも最強クラスとされ、本種を栽培する上で最も大きな問題となるのはこのトゲの存在かもしれません。羽状複葉の付け根付近に集中して生える強烈なトゲだけでなく、羽状複葉を構成する全ての小葉の先端も硬く鋭利で皮膚に深く突き刺さる可能性があるため、剪定は危険を伴う作業となります。
日本国内では流通が非常に少なく、コレクターからの放出や専門店で稀に見かける程度となっています。
Plectocomia himalayana
​📚️和名・流通名∶ヒマラヤシロジクトウ
🔤英名∶Himalayan Rattan Palm
🌎️分布∶インド(ヒマラヤ山脈東部)、中国(チベット自治区、雲南省)、ブータン、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム。標高1,000〜2,500mの湿潤な山岳地帯
📏樹高∶つる性で全長数十mに達する
🌸繁殖∶雌雄異株。一回結実性(モノカルピック)
❄耐寒性∶9a-9b
🔎珍しさ∶★★★★★

21属、約620種が属するトウ亜科(Calamoideae)の中では最も耐寒性が強く、日本の本土で屋外越冬の可能性がある唯一の種です。
その生態は普段目にする一般的なヤシとは全く異なり、他の樹木に絡みつきながら成長していくつる植物で、羽状複葉の先端部分には葉軸が変化した「シルス(cirrus)」と呼ばれる糸鋸の刃のように下向きのトゲが並んでいる鞭状の登攀装置があり、これを周囲の木々に引っ掛けることで高い場所へと這い上がっていきます。
一回結実性で、数十年かけて成長した後、生涯に一度だけ花を咲かせて果実を実らせ、その後は茎ごと枯死します。
現地では頑丈なつるがロープやカゴ、家具を編むための貴重な天然資材として用いられるほか、成長点(ハート・オブ・パーム)は「パチャ(Patcha)」と呼ばれ食用としても優秀なため、村や道の近くなど人間の生活圏では採り尽くされてしまい、今では山奥まで行かないと見られない場所が増えています。
耐寒性はありますが、非常に特殊な生態を持つため一般家庭での植栽には適しません。樹形のコントロールが難しい上、無数の鋭いトゲに覆われているので人通りのある場所に植えるのは危険です。
その性質から、基本的に観賞用として栽培されることはなく、日本国内ではまず流通しません。まさに究極のマニア向けのヤシといえます。
Pritchardia hillebrandii
​📚️和名・流通名∶プリチャーディア・ヒレブランディ、ロウル
🔤英名∶Molokai Fan Palm
🌎️分布∶アメリカ合衆国(ハワイ諸島のモロカイ島に近いフエロ島、モカプ島)
📏樹高∶約4~7m
🌸繁殖∶両性花
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

プリチャーディア属の中でも特に美しく耐寒性が高いといわれる、ヤシ愛好家の間でも人気のあるヤシです。
ハワイに自生するプリチャーディアはハワイ語で「Loulu(ロウル)」といい、特に本種は「Loulu lelo(ロウル・レロ)」と呼ばれることもあります。「レロ」は「黄色い」を意味し、これは本種が黄金色の花を咲かせることに由来します。
かつてはモロカイ島本島にも自生していましたが、残念ながら山火事や外来動物による食害の影響で絶滅してしまい、現在ではモロカイ島の沖合に浮かぶ2つのごく小さな無人島(岩礁)の断崖絶壁にのみ自生する大変希少なヤシです。
葉柄が葉身の中まで伸び、掌状葉と羽状葉の性質を併せ持つコスタパルメート(costapalmate)型の葉で、葉全体がやや波打つのが特徴です。葉柄にトゲはありません。
成長は緩やかで、日当たりや風通し、排水性の良い環境を好みます。耐寒性はプリチャーディア属の中では強いほうで-2℃前後といわれ、多くの地域では露地栽培には向きませんが、一部地域では可能性があるかもしれません。

なお、100円ショップで「プリチャーディア」という名称で二裂した葉のヤシが販売されていることがありますが、言うまでもなくプリチャーディア属ではありません。
筆者も購入し、観察してみたところ、外見上の特徴からチャメドレア属のChamaedorea seifrizii(セフリジヤシ)である可能性が極めて高いです。
Pseudophoenix sargentii
​📚️和名・流通名∶チェリーパーム
🔤英名∶Buccaneer Palm, Florida Cherry Palm
🌎️分布∶アメリカ合衆国(フロリダキーズ諸島)、メキシコ(ユカタン半島)、カリブ海諸島。海岸沿いの砂質土壌や石灰岩地帯
📏樹高∶約3~8m
🌸繁殖∶雌雄同株。花序の大部分を両性花が占める
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

カリブ海周辺の海岸環境に自生する、個性的で美しい希少種です。
かつて海賊たちが活動したとされるカリブ海の島々に点在することから「バッカニアパーム(海賊ヤシ)」とも呼ばれています。
ワックスがかったような白い幹には古い葉が落ちた後にできる環状の紋様(葉痕)がくっきりと刻まれ、中ほどの高さで僅かに肥大して紡錘形となる傾向があります。
葉の表面は青みがかった緑色で、裏面は銀白色を帯びます。
花序はクラウンシャフトの上から伸ばし、赤い果実を沢山実らせます。
最大の特徴は、信じられないほど成長が遅いことです。筆者が過去に栽培してきたヤシの中でも、ここまで成長が遅いと感じた種類は他にありません。
最適な環境下でも一年間のうちに葉が一枚出れば良いほうで、成木になると成長は劇的に加速するといわれているものの、年間2〜3枚が最大のようです。
耐寒性については、一時的には-3℃程度まで耐える力を持っていますが、霜や長期の低温には耐性がありません。
もともと希少な種であり(IUCNレッドリスト∶VU)、その驚異的な成長の遅さから、美しいヤシであるにも関わらず栽培されることはほとんどありません。
Ptychosperma elegans
​📚️和名・流通名∶ダイオウヤハズヤシ、プティコスペルマ・エレガンス
🔤英名∶Solitaire Palm, Alexander Palm(アメリカでの流通名)
🌎️分布∶オーストラリアのクイーンズランド州北東部。湿潤な熱帯雨林や沿岸部の森林地帯
📏樹高∶約8~12m
🌸繁殖∶雌雄同株
❄耐寒性∶9b-10a
🔎珍しさ∶★★★☆☆

世界中の熱帯・亜熱帯地域で庭園樹や街路樹として植栽されている、ポピュラーな中型のヤシです。
ヤハズヤシ(Ptychosperma macarthurii)と同じプティコスペルマ属で、「ソリティアパーム」という英名の通り単幹で育ちます。​幹は7〜10cm前後と非常に細く滑らかで、上部にはオリーブグリーンのクラウンシャフトがあり、鮮やかな緑色の羽状複葉を展開させます。葉先はヤハズヤシと同様にギザギザに裂けたような形状になっています。
全体的な姿はマニラヤシにも似ていますが、より幹が細く、葉全体の広がりもややタイトで、上方向へとスマートにまとまるため、縦のラインが強調されたスタイリッシュなシルエットになります。
鉢植えではコンパクトに育てることも可能で、一定の耐陰性もあるため、海外では観葉植物として広く親しまれています。
ユスラヤシ(Archontophoenix alexandrae)とは分布域がほぼ完全に被っており(一致率80〜90%)、好む環境も同じであるため、自生地では混生している姿が見られます。
また、アメリカではユスラヤシと混同されて普及した経緯があり、本種にもユスラヤシと同じ「Alexander Palm」というコモンネームが定着してしまい、園芸市場において深刻な混乱を引き起こしています。
耐寒性もユスラヤシと同程度とされ、日本のほとんどの地域の冬には耐えられませんが、Ptychosperma属の中では最も強く、本土の中でも最も暖かい地域かつ微気候に恵まれた場所において越冬の可能性が期待できる数少ない種の一つです。
アジア、オセアニア、北米、中南米など多くの地域で安定した流通量を誇る定番のヤシでありながら、日本国内では商業生産されていないため、あまり知られていません。
Ravenea glauca
​📚️和名・流通名∶シハラヤシ、ラベニア・グラウカ
🔤英名∶Sihara Palm
🌎️分布∶マダガスカル南西部のイサロ国立公園と中南部のアンドリンギトラ国立公園
📏樹高∶約4~8m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

本種にはマダガスカル南西部の乾燥した岩場が多いイサロ地方に分布する'Isalo'と、マダガスカル南部のアンドリンギトラ山地の高地に自生する'Andringitra'の2つのタイプが知られており、その外見は大きく異なっています。
'Isalo'(イサロ)は、濃い緑色をした柔らかく繊細な葉を展開します。栽培されているものはこちらが主流で、画像もこのタイプをイメージして再現したものです。
'Andringitra'(アンドリンギトラ)は、ブティアを思わせるアーチ状に美しく湾曲した硬質な葉を展開し、種として記載された際の基準標本や記載文はこの個体群に基づいており、「グラウカ(灰白色・青緑色の意)」の名にふさわしく葉は白粉を帯びた青緑色をしているのが特徴です。
どちらにも一定の耐寒性があり、'Andringitra'についてはデータが少ないですが、アンドリンギトラ山地の上層部では過去に-7.7℃を記録したこともあることから'Isalo'よりもさらに寒さに強いと期待されています。
両タイプとも日本国内で流通することはほとんどなく、希少性の高い種として一部のコレクターの間で取引されることがほとんどです。
Ravenea rivularis
​📚️和名・流通名∶ラベニアヤシ、マジェスティックパーム、マジェスティパーム
🔤英名∶Majestic Palm, Majesty Palm
🌎️分布∶マダガスカル(トアマシナ州、アンタナナリボ州、フィアナランツォア州)。湿地帯や河川沿いの渓谷
📏樹高∶約9~15m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

世界的に最もポピュラーな観葉植物用ヤシの一つで、その堂々たる姿から「マジェスティック(雄大な)」の名を冠しています。
​幹は基部で膨らみを持ち、上部に向かって細くなり、頂部からはボリューム感のある明るい緑色の羽状複葉を広げます。
成長した個体は非常に見栄えがするため、海外では商業施設やホテルのロビー、また一般家庭のシンボルツリーとして広く愛用されています。
以前は日本でも観葉植物としてよく見かけたものですが、ワシントン条約(CITES)附属書Ⅱに掲載されて以降は流通が激減し、入手が難しくなっています。
​栽培については、原産地が河川沿いや湿地帯であるため、ヤシの中でも特に水を好む性質を持っています。室内での管理においては十分な日光と水分の維持が成功の鍵となります。
耐寒性はR. glaucaほど強くなく、-2〜-3℃が耐えられる限界で、氷点下の時間が長く続くと枯死するリスクが高くなります。
Ravenea xerophila
​📚️和名・流通名∶ラベニア・ゼロフィラ
🔤英名∶Anivona Palm
🌎️分布∶マダガスカル南部の西海岸寄りにあるアンパニヒ(Ampanihy)から、東側のアンピンガラトラ山脈(Ampingaratra Mts.)にかけての地域。ディディエレア科(Didiereaceae)やトウダイグサ属(Euphorbia)が優占する多肉植物の刺の森(Spiny Forest)や、ラテライト(紅土)や片麻岩からなる乾燥した低木林
📏樹高∶約4~8m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★★

美しいパウダーブルーを帯びた繊細な葉が特徴の、ラベニア属の中でも一際異彩を放つ超希少種です。
成長が極めて遅く、本格的に幹の形成が始まるまで数十年もの間、背丈はなかなか大きくなりません。その独特な葉姿はまるでソテツのようでもあります。最終的には直径13〜30cmほどの灰褐色の幹を立ち上げ、葉柄が脱落した後の幹肌には黒く尖った繊維状の組織を残します。
マジェスティックパームを含め、多くのラベニアが湿潤な環境を好むのとは対照的に、学名の「xerophila(乾燥を好む)」が示す通り、高い耐乾性と耐暑性を持つのが特徴です。
ヤシ科としては極めて珍しく、大根やニンジンのような太い塊根(貯水根)を地中に形成することで長期間の乾燥に耐えることができます。
栽培難易度は高めで、多くのヤシとは全く異なる管理が必要です。
直射日光が必須で、常に濡れた状態では根腐れを起こすため、極めて水はけの良い土壌で適度な間隔を空けた水やりが求められます。また、根が非常にデリケートなため、根鉢を崩すことは厳禁とされています。成熟した株は-3〜-5℃程度まで耐えるとされていますが、冬の寒さに過湿が重なると一発で枯れる可能性があります。
自生地の減少により、現在はIUCNのレッドリストにおいて「危急種 (Vulnerable / VU)」に指定されています。
世界中の植物愛好家やヤシのコレクターから熱望されていますが、国内外を問わず市場に出ること自体が極めて稀で、種子の輸入すら困難です。ヤシ栽培を極めた熱心なコレクターにとって、このマダガスカルの至宝をコレクションに加えることは、まさに夢の一つと言えるでしょう。
Rhapidophyllum hystrix
​📚️和名・流通名∶ハリヤシ
🔤英名∶Needle Palm
🌎️分布∶アメリカ合衆国(フロリダ州、ジョージア州、アラバマ州、サウスカロライナ州、ミシシッピ州)。湿った森林地帯、河川沿いの斜面
📏樹高∶約0.9~1.8m
🌸繁殖∶雌雄異株
❄耐寒性∶6b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

「ハリヤシ」という名前の由来は幹の周りに形成される針のようなトゲにあります。
密生する長く硬いトゲは15cm以上にもなり、動物などから身を守るバリケードの役割を果たしていると考えられています。
幹をあまり高く伸ばさない低木状のヤシで、地面に近い位置から光沢のある濃い緑色の掌状葉を広げます。
本種を象徴する最大の特徴はその耐寒性で、「世界で最も寒さに強いヤシ」としてヤシ愛好家の間では伝説的な存在となっています。
耐寒温度は驚異の-20℃!海外の記録では-25℃や-28℃といった極寒でも枯死せずに生存・回復した事例が確認されているなど、南国の植物というヤシのイメージを覆す強さを見せてくれます。
アメリカのニューヨーク州やコネチカット州、マサチューセッツ州など、日本の北東北や北海道に相当するゾーン6〜7で地植えされており、無保護または軽い保護で定着している個体が多数存在します。
ただし、冬の極寒に耐える力は最強ですが、生育には暑い夏を必要とするため、年間を通じて冷涼な気候下ではほとんど育たないとされています。

海外での越冬例をいくつかご紹介します。

🇺🇸アメリカ合衆国・メイン州ブースベイのコースタル・メーン・ボタニカル・ガーデンズ(Coastal Maine Botanical Gardens)(ゾーン6a)
株を保護ケージで覆い、ケージ内部に落ち葉を充填させるという手法で例年以上の厳しい冬を乗り切ることに成功しています。

🇨🇦カナダ・オンタリオ州南部(ゾーン6a〜7a)
トロント周辺では南向きの壁際といった微気候(マイクロクライメート)を活用して地植えが試みられています。植え付け1〜2年目は成長点に溜まった水分の凍結による槍抜け(スピア・プル)を起こしやすく、完全な乾燥保護を必須としますが、しっかり定着した成木は軽い保護で越冬可能のようです。西海岸のバンクーバーと比べて夏にしっかりと気温が上がるため、春〜夏にかけての葉の展開速度や回復力は断然高くなります。

🇨🇦カナダ・ブリティッシュコロンビア州南部(ゾーン8b)
ソルトスプリング島で20年以上越冬し続け、開花も確認されているほか、バンクーバー島やバンクーバー市内でも栽培例があります。西海岸の冬は比較的マイルドで、致命的な冬の寒さで枯れることは稀ですが、夏の積算温度が不足し、東海岸に比べて成長がかなり遅くなる傾向にあります。

🇳🇴ノルウェー、🇸🇪スウェーデン沿岸部(ゾーン7a〜9a)
高緯度に位置しながら海洋性気候で冬の冷え込みが比較的穏やかなため、複数の栽培例があります。ノルウェーのオーレスン、スタバンゲル、ベルゲン、スウェーデンのヨーテボリ、マルメなどで地植えでの屋外越冬が確認されています。しかし、夏の気温が低すぎるため、極めて遅い成長スピードで維持され、年々衰退するケースも見られます。これらの地域ではシュロ(Trachycarpus)のほうが遥かに安定した成長が見込めます。
Rhapis excelsa
​📚️和名・流通名∶カンノンチク(観音竹)、リュウキュウシュロチク
🔤英名∶Lady Palm, Broadleaf Lady Palm
🌎️分布∶中国(海南島、広東省、広西壮族自治区、雲南省、福建省、貴州省)、ベトナム北部。低山地や丘陵地の常緑広葉樹林の林床
📏樹高∶約1~3m
🌸繁殖∶雌雄異株。一般的には株分けで増やされる
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★☆☆☆☆

福を呼び込む縁起の良い観葉植物として知られ、「緑の宝石」とも称される、江戸時代から親しまれている歴史の長い古典園芸植物です。
葉に白や淡緑色などの斑が入るもの、葉の形状が変化したもの、矮性のものなど多彩な品種が生み出され、ヤシの中でも群を抜いてコレクション性の高い種です。
1960年代後半の熱狂的なブームのピーク時には投機の対象にもなり、一部の珍しい品種は数千万円もの異常な高値で取引されることもあったそうです。
幹は黒褐色の繊維に覆われ、それを剥がすと名前の通り竹のような節のある幹肌が現れます。
掌状葉は切れ込みが少なく、それぞれの裂片の幅が広いことで近縁種のシュロチク(R. humilis)と区別できます。
短い地下茎を伸ばして子株を発生させる性質があり、植え替えの際に一定量の根が出ている株を切り分けることで簡単に増やすことができます。
耐陰性が極めて強く、室内用のヤシとしては右に出るものがないほど優れた性質を持っています。
耐寒性は比較的強く、暖かい地域では屋外越冬が可能ですが、シュロチクには少し劣るとされています。
観音竹の品種の中にはR. excelsaだけでなく近縁種や他のラピス属との交配種が含まれている可能性があります。耐寒性は原種に依存するため、屋外越冬させる際は系統を調べるか、分からない場合は屋内での越冬がおすすめです。
例∶富士の雪、冨久宝殿=R. cochinchinensis(シノニム∶R. laosensis、9b)。端紗姫、瑞鳳=R. subtilis(9b)など
Rhapis humilis
​📚️和名・流通名∶シュロチク(棕櫚竹)
🔤英名∶Slender Lady Palm
🌎️分布∶中国(広西壮族自治区、貴州省、雲南省南東部)、ベトナム北部。標高約100〜1,200mの石灰岩の斜面、谷間、 渓谷などの湿り気があり遮光された林床
📏樹高∶約3~5m
🌸繁殖∶雌雄異株。一般的には株分けで増やされる
❄耐寒性∶9a
🔎珍しさ∶★☆☆☆☆

カンノンチク(R. excelsa)と並び、日本で最も古くから親しまれている小型ヤシの代表格です。
名前に「シュロ(棕櫚)」と付いていますが、シュロ属(Trachycarpus)ではなくラピス属に分類されます。
カンノンチクに比べて掌状葉の切れ込みが多く、裂片の幅も狭く、背が高くなる傾向があるため、全体的に細身で涼しげな印象を与えます。
栽培面では大変強健で、暗い室内環境でも屋外の明るい場所でも育つ高い適応力を備えており、慣らせばかなりの直射日光に耐えることも可能で、まさにオールラウンダーなヤシといえます。
カンノンチクよりも寒さに強く、ラピス属では最強の耐寒性を持つといわれています。耐寒温度は約-6℃、一部の栽培家からは-7.7℃(18°F)にも耐えたという報告もあります。
株立ち性なので伸びすぎた幹は切ることができ、成長も遅いため地植えでも大きさをコントロールしやすいメリットがあります。ヤシをメインとした庭園では大型のヤシを引き立てつつ、庭の完成度を底上げしてくれる名脇役となるでしょう。
Rhapis multifida
​📚️和名・流通名∶ウンナンシュロチク(雲南棕櫚竹)
🔤英名∶Finger Palm
🌎️分布∶中国南部の広西壮族自治区西部から雲南省南東部。主に標高100〜1,500mの斜面や石灰岩地帯の谷間の、常緑広葉樹林や竹林の林床
📏樹高∶約1.5~2.5m
🌸繁殖∶雌雄異株。一般的には株分けで増やされる
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★☆☆☆

ラピス属の中でも最も美しい種とされる、繊細な印象の小型ヤシです。
種小名の「multifida」は「多裂の」を意味し、その名の通りシュロチク(R. humilis)よりもさらに葉が細く裂け込んだ優美な掌状葉を展開します。その姿は非常にスタイリッシュで、モダンなインテリアにも自然に溶け込む洗練された美しさがあります。
一般的なシュロチクやカンノンチクよりも希少で流通が少なく高価で、海外のコレクターの間でも人気の高い種です。
日本のウェブサイト等ではシュロチクの一品種として扱われている場合がありますが、植物分類学上は別種であり、耐寒性にもその差が現れています。本種はシュロチクよりも耐寒性が弱く、-2℃程度までといわれており、シュロチクが屋外越冬可能な地域でも本種は傷んだり枯死する可能性があります。
地植えの可能性は温暖な一部地域に限られますが、観葉植物として特におすすめの種類です。
Rhapis subtilis
​📚️和名・流通名∶ヒメカンノンチク、ラピス・サブティリス
🔤英名∶Thailand Lady Palm, Dwarf Lady Palm
🌎️分布∶タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム南部、インドネシアのスマトラ島。標高の低い石灰岩地帯の熱帯雨林の林床
📏樹高∶約1~2.5m
🌸繁殖∶雌雄異株。一般的には株分けで増やされる
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★☆☆

ラピス属の中でも小柄で華奢なシルエットを持つ愛らしい原種です。
種小名の「subtilis」はラテン語で「繊細な、細い」を意味し、その名の通り非常に細い茎とコンパクトな葉を展開します。
​全体的なサイズは他のラピス属よりも一回り以上小さくまとまることが多いですが、同じ種でありながら見た目が全く異なる個体が多く存在します。1枚の葉が2〜4つにしか裂けないシンプルなものから、10以上の細いセグメントに分かれるものまであり、比較的大きく育つこともあります。そのため、パッと見では R. excelsa などの近縁種と見分けがつかず、同定が非常に難しい種とされています。
日本国内では原種としての流通はほとんどなく、本種をルーツとする栽培品種が観音竹として一部のコレクターの間で愛好される程度に留まります。
​性質としては、中国南部原産の R. excelsa などとは異なり、より低緯度の熱帯地域を中心に分布しているため、寒さにはやや弱いという特徴があります。
耐寒性は-2〜-3℃程度といわれ、本土でも場所によっては屋外越冬の可能性はありますが、R. excelsa や R. humilis といった優秀な代替種が存在するため、拘りのあるコレクター向けといえます。
Rhopalostylis baueri
​📚️和名・流通名∶ロパロスティリス・バウエリ
🔤英名∶Norfolk Island Palm(ノーフォーク島に分布する var. baueri を指す)、Kermadec Nikau(ケルマデック諸島に分布する var. cheesemanii を指す)
🌎️分布∶オーストラリア(ノーフォーク島)、ニュージーランド(ケルマデック諸島のラウル島)
📏樹高∶約8~15m
🌸繁殖∶雌雄同株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

南太平洋の2つの小さな島にのみ分布する、非常に希少かつ観賞価値の高いヤシです。
分布によって以下の2つの変種に分かれています。

・var. baueri
オーストラリア領のノーフォーク島に自生するタイプです。種子がラグビーボールのような楕円形をしており、var. cheesemanii に比べると小葉の幅がやや狭く、幼苗期から葉柄の裏などに赤褐色の筋や色味がはっきりと出やすいという特徴があります。近縁種のニカウヤシ(R. sapida)よりは成長が速いですが、var.cheesemanii に比べるとゆっくりと育ちます。

・var. cheesemanii
ニュージーランド領のケルマデック諸島を構成する島の一つ、ラウル島に自生するタイプです。種子がほぼ完全な球形をしており、小葉の幅が広く、羽状複葉は横に広がりやすい傾向があり、オープンな樹形になるのが特徴です。var. baueri やニカウヤシよりも成長が速いです。

どちらも分類学上では同一種として統合されるほど外見や生態的な特徴の大部分は共通しています。
非常に成長が遅いニカウヤシと比べて成長が速いことや、耐暑性があるという大きなメリットがある反面、耐寒性は僅かに劣ります。
日本国内ではまず見ることのない珍しいヤシで、ヤシ愛好家の間でもあまり知られていない種ですが、オセアニアや南欧、カリフォルニアなどの一部地域では、その端正でスタイリッシュな姿から庭園樹や室内観葉植物として重宝されています。
Rhopalostylis sapida
​📚️和名・流通名∶ナガバハケヤシ、ニカウ、ニカウヤシ
🔤英名∶Nikau Palm, Shaving Brush Palm
🌎️分布∶ニュージーランド北島のほぼ全域、南島のバンクス半島以北の沿岸部、チャタム諸島など。主に低地の森林
📏樹高∶約10~15m
🌸繁殖∶雌雄同株
❄耐寒性∶9b
🔎珍しさ∶★★★★☆

ニュージーランドのシンボルともいえる、世界で最も南に自生するヤシとして知られる種です。
「ニカウ(Nikau)」という名前は、かつて熱帯地域でココヤシを利用していたマオリの祖先が、ポリネシアの島々からニュージーランドへ渡り、冷涼な気候で育つこのヤシを発見した際、ココヤシのような実をつけないことから、「木の実がない(ni = ない、kau = 単なる/〜のみ)」という意味で名付けられたという説が知られています(諸説あり)。
外見は、幹よりも著しく太くなる大きなクラウンシャフトが特徴で、直線的な羽状複葉を上に立ち上げ、シェービングブラシを思わせるような独特なシルエットを描きます。このユニークな樹形が世界中のヤシ愛好家を魅了しています。
成長が非常に遅いことで知られ、幹の形成が始まるまで約20年、或いは30年かかるともいわれ、樹高10mの大木は100〜200年以上の樹齢に達していると推定されています。

栽培については強い陽射しを嫌い、明るい日陰の涼しい風が抜けるような環境を好みます。高温多湿を好む熱帯のヤシとは異なり、夏は涼しく保つことが特に重要です。直射日光に当てると深刻な葉焼けを引き起こします。また、自生地では常に湿った環境で育っており、水を非常に好むため、乾燥には注意が必要です。
寒さには強く、10℃以下の低温がだらだらと長く続くような東京の冬に対しては、他のゾーン9bのヤシと比較しても明らかに強い抵抗力を発揮しています。また、多くのヤシが苦手とする低温×多湿の組み合わせにも耐性があります。
原産地ニュージーランドでは個体数が多く希少な種類ではないものの、成長の遅さと特有の気難しさからか日本国内では全く生産されず、一部のコレクターの間でのみ愛されています。
地植えで大きく育て上げることができれば、他の南国系ヤシとは一線を画した個性的な景観を創出してくれるでしょう。

分布の南限はチャタム諸島のピット島(Pitt Island / Rangiauria)で、南緯44度18分に位置し、全てのヤシ科植物の自然分布の南限とされています。本種の分布の南限と、北半球で最も北に分布するチャボトウジュロ(Chamaerops)の分布の北限は、奇しくも緯度44度というほぼ同じ境界線で綺麗に揃っています。
チャタム諸島の個体群は、一般的には Rhopalostylis sapida の地域変種('chathamica' /チャタムアイランドフォーム)として扱われますが、本土産との形態的・生態的な違いが大きいため、独立した別種(Rhopalostylis sp. 'Oceana' または Rhopalostylis oceana)として扱うべきだという説もあります。
チャタム諸島は年間を通じて強い西風が吹き荒れる海域に位置するため、本土産と比べて強風や塩害に対して高い耐性があり、太い幹と幅広の小葉を持ち、マッチョな佇まいになるという特徴があります。また、本土産と比べて約2倍のスピードで成長することから近年人気が高まっています。





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最後までご覧いただきありがとうございました。
『AI耐寒ヤシ植物園 パート4』に続きます。

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@PAYA さん
こちらこそ、いつもご覧いただきありがとうございます。お探しのヤシはどちらもなかなか見かけませんが、手に入るといいですね😊

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