このシリーズは「植物虐待」を受ける子達の物語。
今回は「レインボーローズ」です。
いろいろよろしくお願いいたします。
※この小説はフィクションですが、植物の感情と物語内のバラの感情が一致する可能性もあります。
第1章:なぜここに生まれたのか
僕はレインボーローズと呼ばれています。本当は白いバラで生まれました。
でも生まれた場所は最悪です。
「レインボーローズを生産する家」だったのですから。
僕に水をくれましたが、多かったのは染料。悲しいです。あんなのまずいし、匂いがきつすぎ。悪趣味なところに生まれちゃったな、と失望しました。
でもここで死ぬわけにはいきません。
死んだらもっとひどいことをされる気がしたのです。
肥料はもらえません。くれる水も少なくなりました。染料のせいで体が弱っていきます。僕が悲鳴をあげると、僕を見下ろす人々は手をたたいて喜びます。
「わあ、綺麗な色だ。わあ、わあ」
といってるように聞こえました。
本当に毎日がしんどかったですが、少し楽しみもありました。
第2章:虐待の中での恋
(どこかな)
僕は心の中でつぶやきながら、「あの子」を探しました。
僕には好きな子がいました。
うめき声をあげるバラたちの群れに必死で目を凝らします。すると、どうでしょう。
僕の憧れていた「ファラン」が見えました。
「おーい、ファラン」
声はすっかりしわがれていました。苦しくて、喉が疲れてしまったのでしょうか。
ファランはすっかり弱っていて、返事をする元気がありません。
(どうしよう!きっと、悪趣味な染料のせいだな)
僕は考えながら、何度もファランを呼びました。
「ファラン、ファラン」
喉は枯れ、ほとんど誰にも聞き取れない声になってしまいました。
第3章:弱っていくカラダ
だんだん、体が思うように動かせなくなってきました。
光合成もあまりたくさんできません。みんなほとんど眠っています。もう死んでしまっている子もいます。枯れたバラは、人が思い切り投げ捨てられてしまいました。
(枯れたら、こんなひどい扱いを受けるのかな)
僕は思って身震いしました。可愛いファランを呼ぶほどの声は出せません。
ファランはうとうとしていて、重たい花を一生懸命持ち上げました。
「フ、ファラン」
久しぶりに声を出したので、慣れませんでした。
「ファ、ファラン?お、起きてよ」
僕は力を振り絞って呼びかけました。
「ん・・・ソラ・・・なに・・・?」
ファランはやっと返事をしてくれました。僕は嬉しくて、声を楽に出せました。
「ファラン、おぞましい染料に負けるな。バラは強いんだ。トゲのように、人へトゲを突きだせ!」
「ソラ・・・何でそんなに優しいの?」
ファランは弱々しく尋ねました。
「それは・・・」
僕の花が、勇気を出してくれました。
第4章:告白
「す、き」
僕は勇気を出して言いました。この一言が、僕のすべての気持ちをまとめていました。
「・・・私も」
ファランは顔を赤らめて答えました。
「ファラン・・・」
続きを言おうとしたとたん、目の前が真っ暗になりました。
(怖い・・・何が起こるの?)
地面はガタガタ揺れて、倒れそうです。
運良く、隣にはファランがいます。
「ここはどこだと思う、ファラン」
隣にいたバラはぶっきらぼうに言い放ちました。
「人違いよ、失礼ね。ファランという小娘はあの部屋に残って、あたしたちは出荷されていくの」
僕は何も言えませんでした。ファランを取り残して、僕は売られてしまうのです!
第5章:愛よ君に届け
揺れは収まりました。
恐ろしい人は、僕らを持って巨大な建物に運びました。
「まぁ!綺麗なバラですこと。お高く売れますね!」
濃い化粧をした若くない女の人は歓声を上げて、僕にブチュっとキスをしました。
案の定、気分が悪かった。人のよだれで花はべとべと。ぬるぬるしてて不快です。
「わたくしの唾には保湿成分が含まれていますのよ!心配なさらないで」
いやいや、心配なさらないでは人に言う言葉じゃありません。本当は僕らに言うべきなんです。
どこに保湿成分があるのでしょう。くさいし、まずいし、汚い。久しぶりの水だと思って最初は興奮したけれど、全くいいところはありません。もっといい匂いがして、おいしく清潔な水が欲しいのです。
「花に唾をつけるなんて、悪趣味ですね。これは捨てましょうよ」
僕は不愉快です。バラに「これ」というなんて許せません。人と同じ命があるのに物扱いされるなんてむごすぎます。
僕の茎を、恐ろしい人は強引に掴みました。そして、僕はゴミ箱に投げ入れられました。
第6章:ゴミ処理場に残された花びら
《遺書》
植物虐待を受けて育った。
わたしは散々苦しんだ。
人間に運ばれゴミ箱に捨てられた。
誰にも救いの手はなかった。
ゴミ処理場で粉々だった。
残ったのは、虹色の花びらだった。
わたしはもう生きていくことはできない。
粉々になっては栄養を摂れない。
生まれた瞬間からずっと苦しんだ。
最期も辛かったが、バラバラにされた時は何となく幸せだった。
ずっとあの部屋にいるより、ずっとましだった。
今、ファランは今どこにいるのだろう。
あの部屋にいるのだろうか。
すでに売られてしまったのか。
わたしと同じ運命を辿ってしまったのか。
ー バラにも命がある。素敵な命が。
今日もバラは生まれ、死んでいく。
人と幸せを分かち合えるか、
それとも人のせいで苦しむか。
それは人類に任せられていた。
人類はわたしたちの苦しみを理解し、
飾りとして一生を過ごす生き物を
なくすことができるのだろうかー
第1話 完
バラにしてみれば、人間のする事は虐待そのもの・・でも、私は人間、今日も除草剤撒いちゃった、草にしてみれば・・🥺
今夜は悩んで、寝ます🙇♀️