2006年プライベート上梓した詩集より
5月だから
微かにレースのカーテンを揺らす そよ風
優雅な光の輪唱を受けとめる格子窓の影
その時、ストリングスの弱音器のトリルが
そっと、心を掠め取る 5月だから
昼下がり水辺の漣に音立てる 雨粒
不規則に海からの香り運ぶ濃煙の雲
あなたが、いっとき睫をふるわせても
きっと、気にも留めはしないだろう 5月だから
長い坂道をゆっくりと登ってゆく
とおい遠い日の自分のすがた
ためらってもためらっても、ただ黙々と
歩きつづけていた 疲れも忘れて
見えるようで見えない向こうの景色
どこに向かって歩く?それから
少し息が切れたように感じる
気づけば平坦な道を歩いているのに
「・・・してもいいかしら?」
「たぶん・・・だろう」
「めい あい・・・?」
たぶん5月だから
どっと出て来るものの招待も
慌しくも優美に濃密に目くるめく
幻惑と狂おしさの5月だから
きっと
5月だから
5月だから
「早月故」
2003,5,25
TAKATSUKI
温室
サッシで区切られた
ガラスが包み込む空間に
南国の名前も知らない花が咲き乱れ
外界とは明らかに違う温度差は
予定調和なのに
いつもかすかな違和感を覚え
かすかな羽音を立てて虫たちがひそやかに舞う密度の高い生の饗宴は日ごと夜毎
高らかに証を立てても
見守りつつしおれていく仲間たちの中での
新しい息吹・ノート メイズは螺旋
抜け出すものはただ唯光を頼りに
さまようがごとく幻影に
翻弄されるも跡形もなく
今までの印象を消し去るがごとく
次々に現れる新たなるパッションの罠
立ち止まり
じっと見つめることを
疾うに拒んで黙々と
掴み取ろうとするかのような
幻影の轍
見晴るかす遠景などありはしない
点景の連なりに
溺れ揺られ沈み込むようにして
惑い いつしかそこは緑の表示
黙示録の中の
・・・EXIT・・・
唐突に泡沫の空蝉に
身を宿すきれいに拭い去られた
寂寞と喧騒の曳航する
沈香の永遠の証
「ONSHITSU 」
2003、6・6 TAKATSUKI
なだらかな丘の向こうに
なだらかな丘の向こうに
見えるはずのない景色が見えて
聞こえるはずのない歓声が聞こえる
時刻は昼下がり、午後二時を少しまわったあたり
なだらかな丘の上に
初夏の空澄み渡り
真っ白な雲、ぽっかりうかんで
翳を落としながら緩やかに動く
なだらかな丘の手前に
午睡のまどろみから離れて
佇むかのような西洋の家
木蓮の纏いつくアーチ型の門柱
潜り抜ける木陰・葉陰
石畳踏みしめ見上げた先に そこはある
2階に張り出したバルコンからは
なだらかな丘の向こうが見えるか?
予定なき調和のとき訪いを問えば
エントランスホールは光の洪水
招かれざる客もすべからく誘うが如く
やがては上に続くきざはしのカーブ
階上の手すりのガーゴイル
きつく握り締めて前方を見れば
そこに続く回廊は装飾の小品
忘却の扁額に彩られ
突き当りの部屋のむこうに
そこ はある きっと
そしてこれは「最後のドア?」それとも
「最初のドア?」
今
将に
ドアノブに手を伸ばすところ・・・・
NADARAKANAOKANOMUKOUNI 2003,6,7 高槻
写真
アイスランド
20180626
本能寺 夜 小雨
夜9時過ぎ 本能寺 周囲をビルに取り囲まれ
門前には数組のカップル ケータイのカメラでピース
そこだけ少し薄暗く 前の商店街も閉店
アーケード蛍光灯の光も あまりさしこまず雨で濡れる
時は戦国時代 「歴史」が燦然と光を放つ
日本人のほとんどが知る 主な登場人物
主役?明智光秀 54歳
織田信長 48歳
豊臣秀吉 45歳
そして 徳川家康 40歳
なんかとても リアルに感じる年回り
自分を誰に置き換えても
そこにはある種の感慨が
大通りに面した
近くのホテルのロビーには
どこかの修学旅行生たちが
体育すわりをして教師の注意を聞く
それをガラス越しに眺めながら
通り過ぎる女同士二人連れは
「何で修学旅行に京都に来るん?」
「そら観光地やからやん!」
それをやり過ごして
踊る息子と黙々と歩く
雨はかすかに
そぼ降る
"HONNOUJI TEMPLE In the night A light drizzle"
2003.JUN. 15th. KYOTO
その鉄条網を乗り越えて
野原の真中に 空き地を区切って
張りめぐらされた 鉄条網
危険・のぼるな!と言われても
誰が見ているわけじゃ無し
そこをのぼるのが 子どもの領分
その鉄条網を乗り越えて
アスファルトの道路と
まだまだ続く広い敷地へ
断ち切るような 鉄条網
高電圧注意!とかかれても
電気が流れる様子もないし
そこをクリアするのが 不良の領分
その鉄条網を乗り越えて
何度も死線をさまよい
夢にうなされつづけながら
自由を夢見たところは フェンスの中、
それとも外?
鳥には境界線がなくても
簡単に打ち落とされてしまうぜ
ヘリコ出さなくても
ミサイル出すまでも無く
工場は依然として
見えなくしても煙を吐き出し
川に海に違った種類の液体を流し込む
一歩一歩足をかけながら
つかんだその手に
緊張の汗をためて
さあ 乗り越えていくぜ
その鉄条網を
きっとそこには何かがある
きっとそこには何かがある
どこかで銃声が聞こえる
(ような気がする)
どこかで叫び声がする
(ような感じがする)
泣き出したくなる不安と
はちきれそうな期待が入り混じる
空は少し曇ってきたみたいだ
その鉄条網を乗り越えて
先ほどまでの景色を逆さに見る
何も起こらない
何も変わらない
でも 僕は知っている
その鉄条網を乗り越えて
前に進むことを
それが当たり前になり
みんながそこに続く事を
そうしたすべての事を
陰で恐れるやつがいる事を
その鉄条網を乗り越えて
その鉄条網を乗り越えて
「sonotetujyoumouwonorikoete」
2003、7,1 TAKATSUKI
大きな暗い緑のもの
まわりをより大きな建物たちにかこまれて
ひっそりと一つの場所を守るように
おおいかぶさるように
つつみこむようにして いる
ときおり高い場所から
北のほうを向いて
タバコを吸いながら
空を見上げて
うつろいをながめながら
雲の流れに意識を飛ばして
目線を下げた私のそのさきに
かれはじっと そこにいる
いつものばしょに
いつものように
鳥たちがかれのうえに群れ集っているだろう
だんだん薄暗くなり
路上を往き来する人の種類が
変化し始める頃
かれの目が光りだす
おだやかなオレンジに近い光
それをながめて
いつもこころもち
うなずくように
首をかしげながら
現実に戻る前の
数秒間を
おまえのことを考えて
安らかな気持ちになる
公園の一角を覆い尽くし
手前の路上にまで手をさしのべようとするかに見える
大きな暗い緑のもの
その名前は知らない
けれど
仲間としていつもみている
そのおおきな木
「大暗緑聚」 2003.
初春~盛夏 東高津町 天王寺区
青空の下の綱引き (回想Ⅴ)
久々の運動会 のどかな青空の下
運動場のはずれを 電車が通る
秋
口ひげの親父が一人
カミさんたちに駆り出される
「次の出し物 保護者対抗 つなひき!」
誰でも一人はいや? 目と目が合う
「一緒にやりましょう!」
ええ!? ワイシャツにネクタイ、革靴
やばいんでないの? でも後一押し!
じゃあ、タバコ一本吸ってから・・・
横で待つ間、とりとめなく話
「大学時代はラグビー部で・・・」
おっと、やるじゃん!そういえば もう一人の松形弘樹似の親父は
「柔道やっていました・・・」
バンド一筋の青春!
こういう場合、分が悪い(場違い?)
けれど「魂」じゃあ負けないぜい!
やり手ばばみたいな先生が
手馴れた風に列を割る
「おっと、柔道は敵にまわった!!」
ラグビーと並びながら
それとなく相手チームを見る
やばい!相手チーム、でぶばっか、
それもでかい!
でも、何か変な空気だ。みんなツレ?
そのうちの一人が声かけてくる
「だれですか?」
・・「●●●のちちおやです」。
「あっ、●●くん!」
別の一人は
おれの腕に巻いたもの(飲料水のおまけの時計)をまっすぐ見ながら
「これ何ですか?」
こ、これでも、と、とけいです。
(おもわずどもる)
「ふーーん」といいながらも
自分の腕を突き出し
「これが時計です(Gショック?)!」
い、
いいですねえ・・・・
彼は満足して去る・・・
「あっ、お子さんちゃいます? 」
「あっ、ほんまや!リレー走っている!」
その次はうちの子
おたがい自分の子供どころでは
なくなってきている。
危うく見逃すところ。
でも嬉しそうに
いい顔して走っているなあ。
「相手のほうが多いんちゃいます?」
見るからに列はいびつ、
しかもほとんどが
ここの学校(◯○学校)のOBらしい
「実質戦力は3人対5人ぐらいやったりして・・・」
列は20~30人いる
それにしても、ワイシャツ・ネクタイに革靴はただ一人・・・
んなこと 気にしているまもなく
いよいよ入場!
晴れがましいぜ!
あほっぽい し!
それに、何といっても、
絵に描いたような運動会日和!
「ぴーーー」
うりゃああああーーーーーー
手ごたえ十分、
それを十二分に手繰り寄せて
あっけなく秒殺!
圧勝! ラグビーとハイタッチ!
エッ? 2本勝負?
聞いてなかったぜ
(よそみして
無駄口たたいてたから・・・)
やばい・・さっき、がちんこ・・・
冷や汗。。このあとお仕事。。。
「ぴーーー」
今度は相手も意地を見せる。
体の向きを中央と反対に向けて
すべてをかける
くそったれえいいいい!
またもや手繰り寄せる
じ・えんど
「ぼけーー」とか
「なんぼのもんじゃいっ」
とか心の中で叫びまくりながら
隣の親父と「やったね!」と握手。
テント下のかみさん連中に
ハイな気分でガッツポーズ!
指先は天を突き刺していた
あの、のどかで
どこまでも青く
絵に描いたような
ごくありふれた
永遠に続くかのような
秋の空を
最後の最期で
思い出しているかもしれないなぁ
なんて、ふっと思いながら。
青空の下の綱引き (回想 Ⅴ)
03 OCT.4th TONDA