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so.ra
2021/03/10
【瑠璃の冬の物語】その26
僕のいた世界から母さんの世界が見えた。母さんがとても辛い想いをしているときに、母さんを助けることができなくて僕は本当に辛かった。
あの崖から母さんが落ちるときに、僕の代わりに龍神が母さんを抱き止めて助けてくれた。
母さんを助けてあの不思議な世界に連れていってくれたのは、龍神なんだよ。
この世界にはたくさんの時空があって、それが交わる瞬間がある。その時母さんのもとに行って助けることができる。僕は、ずっとその時を待っていたんだ。そして、やっと今日、母さんのもとに来ることができたんだ。
ねぇ、母さん。
母さんは、あの穏やかな世界にずっといることもできたんだ。でも、愛する人と生きるために、辛くて苦しいことも多いけど、もう一度この世界で生きることを決めたね。
僕は、神様と出会ったときに、神様の元で使命を果たして、時が来たら母さんや父さんの元に帰ることを願った。そして、今日その時が来た。
神様は、僕にこの世界へ帰ることも、神様の世界に留まることも、選んで良いんだと言ってくれた。そして僕は、母さんが選んだように、この先の道を選んだんだ。
今も母さんや父さんを心から愛している。みんなと一緒に野山をかけて生きていた世界に帰りたいとも思う。でも、今は、それ以上に僕でなくてはできないことをやりとげたい気持ちなんだ。母さん、僕は神さまの世界に戻るよ。
母さん、心から大好きだよ。
そして、父さんに会えないのは、とっても残念だ。でも、もうすぐ時空が交わる時間が過ぎてしまう。僕は、あの鳥に乗って、神さまの世界に帰らなくちゃならない。ほら、鳥が迎えに来てくれたよ。
太一がそう話す空に目を向けると、満月の下を、真っ白な鳥が彼方から飛んで来るのが見えた。
太一はもう一度強く瑠璃を抱き締めると、立ち上がった。
月明かりに照らされるその逞しく立派な姿を見上げて、瑠璃も静かに立ち上がった。
「母さん、僕は母さんのもとに生まれて幸せな人生だった。この世界で過ごした時間も、辛いことも苦しいことも、みんな大切なものだった。ありがとう母さん。僕たちはきっとまた会えるよ。見えないけれど、どこにいても絆はちゃんと繋がってるからね。どうぞ父さんや僕の弟と幸せに生きて下さいね」
そういうと、太一は白い鳥の背中にひらりと飛び乗り、「母さん、元気でねー!」と大きく手を降りながら空の彼方に去っていった。
太一に助け出されて過ごした時間は、わずかな時間だった。けれど、それは瑠璃にとって時が止まったような永遠とも思える時間だった。喜びも愛も悲しみも感謝も。。たくさんの言葉にならない想いが胸に溢れて、瑠璃はただその想いを愛おしく太一の言葉をかみしめ涙を流した。
「ありがとう太一。元気でねー!」瑠璃の声が白い鳥の姿を追いかけて山々にこだまする。
鳥に乗って太一が飛び去った空に、瑠璃はいつまでもいつまでも手を降り続けていた。
やがて月は少しずつ白み、山の稜線から一筋の光がさしてきた。その光を受けて、瑠璃の握った手のひらから、縄が砂のように溶けてさらさらと落ちていった。
瑠璃は深く息を吐き、そして空を見上げて息を吸い込むと、懐かしい我が家をめざして歩き始めた。
続く
🌸よろしかったら、物語を【瑠璃の物語】【瑠璃の冬の物語】の下のタグからご覧下さいね。
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so.ra
大切なものを 預かっているよ いつでも取りに戻っておいで💖 たくさんの陽だまりの花たちと あなたをお待ちしています😊🍀 2021年12月14日 わたしの詩を、書きとめていただいて、とっても嬉しくて、今日から作家ですと名乗ることにしました🤗みんなに愛と勇気と癒しを贈る人になれるよう頑張ります😊
キーワード
sora の物語
瑠璃の冬の物語
瑠璃の物語
僕のいた世界から母さんの世界が見えた。母さんがとても辛い想いをしているときに、母さんを助けることができなくて僕は本当に辛かった。
あの崖から母さんが落ちるときに、僕の代わりに龍神が母さんを抱き止めて助けてくれた。
母さんを助けてあの不思議な世界に連れていってくれたのは、龍神なんだよ。
この世界にはたくさんの時空があって、それが交わる瞬間がある。その時母さんのもとに行って助けることができる。僕は、ずっとその時を待っていたんだ。そして、やっと今日、母さんのもとに来ることができたんだ。
ねぇ、母さん。
母さんは、あの穏やかな世界にずっといることもできたんだ。でも、愛する人と生きるために、辛くて苦しいことも多いけど、もう一度この世界で生きることを決めたね。
僕は、神様と出会ったときに、神様の元で使命を果たして、時が来たら母さんや父さんの元に帰ることを願った。そして、今日その時が来た。
神様は、僕にこの世界へ帰ることも、神様の世界に留まることも、選んで良いんだと言ってくれた。そして僕は、母さんが選んだように、この先の道を選んだんだ。
今も母さんや父さんを心から愛している。みんなと一緒に野山をかけて生きていた世界に帰りたいとも思う。でも、今は、それ以上に僕でなくてはできないことをやりとげたい気持ちなんだ。母さん、僕は神さまの世界に戻るよ。
母さん、心から大好きだよ。
そして、父さんに会えないのは、とっても残念だ。でも、もうすぐ時空が交わる時間が過ぎてしまう。僕は、あの鳥に乗って、神さまの世界に帰らなくちゃならない。ほら、鳥が迎えに来てくれたよ。
太一がそう話す空に目を向けると、満月の下を、真っ白な鳥が彼方から飛んで来るのが見えた。
太一はもう一度強く瑠璃を抱き締めると、立ち上がった。
月明かりに照らされるその逞しく立派な姿を見上げて、瑠璃も静かに立ち上がった。
「母さん、僕は母さんのもとに生まれて幸せな人生だった。この世界で過ごした時間も、辛いことも苦しいことも、みんな大切なものだった。ありがとう母さん。僕たちはきっとまた会えるよ。見えないけれど、どこにいても絆はちゃんと繋がってるからね。どうぞ父さんや僕の弟と幸せに生きて下さいね」
そういうと、太一は白い鳥の背中にひらりと飛び乗り、「母さん、元気でねー!」と大きく手を降りながら空の彼方に去っていった。
太一に助け出されて過ごした時間は、わずかな時間だった。けれど、それは瑠璃にとって時が止まったような永遠とも思える時間だった。喜びも愛も悲しみも感謝も。。たくさんの言葉にならない想いが胸に溢れて、瑠璃はただその想いを愛おしく太一の言葉をかみしめ涙を流した。
「ありがとう太一。元気でねー!」瑠璃の声が白い鳥の姿を追いかけて山々にこだまする。
鳥に乗って太一が飛び去った空に、瑠璃はいつまでもいつまでも手を降り続けていた。
やがて月は少しずつ白み、山の稜線から一筋の光がさしてきた。その光を受けて、瑠璃の握った手のひらから、縄が砂のように溶けてさらさらと落ちていった。
瑠璃は深く息を吐き、そして空を見上げて息を吸い込むと、懐かしい我が家をめざして歩き始めた。
続く
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