ロシアではあの状態で一体誰が裏で国を支えているのだろうか。
彼の古い友人の話である、仮にZ君とする。
秀才でクラスの誰とも会話をせず、異彩を放っていて、孤高の謎の男として密かに皆から注目され、誰が一番先にZ君を笑わせられるのか、競争が起きていた。
とある美術の授業、彼が思い付きで鳳凰と龍の絵を木板に彫っていると、Z君が遂に、突然、喋った。
クラス中に静かなどよめきが走る。
それからZ君と友達になった彼は知る。
Z君は秀才どころではなかった、特に数学である。彼も彼で全国総合模試二位とかで塾も無料それなりに数学好きを自認していたが、Z君の数式の解き方がまるでさっぱりと意味が分からない。
脳が常人とは別次元、いわゆる真の天才ってやつかと愕然とするも、その代わりに運動が下の下で噂の高機能自閉症、奇しくも偶然だがZ君の母親も私の母親と同様に脚が悪く車椅子だったようだ。
当然、特別枠でちょちょいの東大合格は約束されていてその通りに進んだが、優しく真面目でコミュ障の氷河期世代の数学者などどーにもなるはずない、十数年前に渋谷を二人で歩いていた際に遭遇したのだが、まー普通にニートである。
私はこの人が例のZ君か、感慨深かった。
めっちゃ太ってた。
ガチの自閉症は大変で不遇もいいところなのだが、性質上言い訳とかいった発想自体が発想できない。
そうした特殊人材は環境によらず一定数でどこでも生じる。活躍するか否かはすくい上げる政治があるかどうかで決まる。
Kurtが死の直前に主張した言葉は、
"Empathy"だった、結局ね。
Z君は間違いなく、ふむなるほど、と完全同意するであろう人格者だった。

05/10/2022