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「観葉植物の根元に黄色いキノコが生えているのだけど、これってなんて名前ですかね?」
じつは同じ内容の問い合わせは以前より複数回届いているので、答えるのに苦労はありません。
そのキノコの名は……。
あるとき「観葉植物の根元に、黄色いキノコが生えているのだけど、これってなんて名前ですかね?」
というメールが添付画像付きで届きました。
さてさて?
画像を開くと、ああ、これか と、思わず独り言。
じつは同じ内容の問い合わせは以前より複数回届いているから、答えるのに苦労はありません。このキノコは、よほど植木鉢が好きなのだろうか?
キノコの名は、「コガネキヌカラカサタケ」です。
コガネキヌカラカサタケは、ハラタケ科キヌカラカサタケ属のキノコ。熱帯原産のキノコとして、知られています。派手な黄色いキノコで、傘の横幅は5cmを超えることから、目立つこともあり、発見例が多いようです。
GreenSnapにも、いくつも写真がアップされていました。
たとえば、こちら。
投稿してくれた翌日にも、また、投稿してくれています。
それが、これ。
翌日には、もうキノコの傘が開いているのが、わかりますね。
じつは、植木鉢で観葉植物を育てていると、色々なキノコが生えるのですが、大きなキノコが生えたというと、たいていこの種類のキノコです。
とくに、「ベゴニア」や「モンステラ」、「スパティフィラム」など、鉢内部が常に湿潤な環境を好む観葉植物の根元に現れることが多いです。
観葉植物用の土には、必ずといっていいほど、落ち葉や枯れ枝が腐熟したバーク堆肥や腐葉土が含まれていますが、コガネキヌカラカサタケは、この堆肥に潜む、植物遺体を分解して生育する菌です。
そもそも堆肥に菌がいるのは当たり前のことなのですが、なぜそこからキノコが生えるかというと、「高温多湿」の状態を好むからです。
水やりによって保たれる「ほどよい湿度」、熱帯を思わせる「あたたかい室内」は、熱帯原産のコガネキヌカラカサタケにとって、住みよい環境なのでしょう。そのため、とくに室内で育てる湿潤を好む観葉植物の鉢に、よく発生します。
ある園芸資材メーカーから、そういえば、こんな話も。あるとき、とある園芸資材のメーカーから、私に問い合わせがありました。
「私どもが販売している商品の園芸用土に、白い菌糸が蔓延って困っている。どんな菌類か調べてほしい」というのです。
さっそく、サンプルが送られてきました。袋を開けてみると、確かに白い菌糸が広がっているではありませんか。菌糸をピンセットでつまんで取り、DNA解析をしてみました。解析の結果、この菌糸は、コガネキヌカラカサタケのものであることがわかったのです。
観葉植物にキノコが生えたからといって、植物がたちまち枯れてしまう訳ではありません。
ただし、キノコが生えるということは、土が常に湿潤になっているということなので、乾燥を好む「パキラ」や「ウンベラータ」などのフィカス類の観葉植物に生えた場合は、注意が必要です。
もしキノコを駆除したい場合は、カビやキノコに効く殺菌剤を散布することになります。ただし、どのような薬剤が確実に効果があるかということはわかりません。
というのも、農薬とは、特定の病気や害虫による被害を防ぐために、特定の植物に使うものです。コガネキヌカラカサタケに適応している農薬は、いまのところ聞いたことがありません。
駆除にあたっては、植物を室内に置きっぱなしにせず、定期的に風通しのよいベランダなどに出すのも効果があります。つまり、キノコが発生する原因となる、湿潤な環境を避けられれば、予防対策につながります。
一番根本から解決できるのが、新しい用土に植え替えることです。古い土がついたままだと、キノコの菌が残って、再び繁殖する可能性もあるので、植え替えするときは根を傷つけないように気をつけつつも、古い土をよく落としてください。
新しい用土に植え替えできないときや、古い土を再利用したい場合は、しっかり用土を殺菌・乾燥させましょう。
用土は黒いビニール袋に入れて、日当たりのいい場所で夏なら1週間、秋冬なら1〜2ヶ月おいて、熱消毒します。そのあとは、ビニールシートの上などに広げて乾燥させれば、新しく観葉植物の土として使えますよ。
ところで、このコガネキヌカラカサタケは、食べられるのでしょうか?
答えは、「わかりません」。もっとも、どんなキノコも食べられます。一生のうち一度はね……。(二度食べられるかどうかは、知りませんよ、フフフ)
冗談はさておき、このハラタケ科のキノコの中には、食べられるキノコもあり、毒キノコもあるので、よほどの怖いもの好きでなければ、食べないほうがいいです。キノコを食べたくなったら、近所のスーパーマーケットに、おいしい栽培キノコがいくらでも売っているので、どうぞ、そちらをお召し上がりください。
観葉植物はぜひ観察を怠らないようにしましょう。鉢植えなどに黄色いキノコが生えてきたら、コガネキヌカラカサタケである可能性は高いと思います。
ウワッ、気持ち悪ッ!と言って捨ててしまうのが普通かもしれませんが、しばし観察し、様子を楽しんでみるのも一興かもしれません。
フローリスト編集部