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田んぼや畑の道端で小さな白い花が這うように咲いていたら、それはハコベかもしれません。繁殖力の強さから雑草として扱われることも多いですが、春の七草のひとつであり小鳥の餌にもなる古くから私たちの生活に馴染み深い植物です。
小さくかわいらしい白い花をつけるハコベはナデシコ科ハコベ属の植物で、近縁種は世界におよそ120種あるとされ日本には18種ほど存在しています。
ハコベとは一般的に「コハコベ」と「ミドリハコベ」の総称とされますが、「コハコベ」のみを指す場合もあります。春の七草として販売されているハコベのほとんどは「コハコベ」だとされています。
旬である春頃の茎や葉を干して乾燥させたものは生薬となり、繁縷(はんろう)と呼ばれ古くから親しまれてきました。
ハコベの葉や茎は柔らかくクセのない味わいなため、古くから家で飼育しているニワトリや愛鳥の餌としても利用されていたことにちなみます。
正岡子規が詠んだ「カナリアの餌に束ねたるはこべかな」という俳句から、小鳥の餌として周知され人気を集めました。ハコベは春の季語として扱われています。
ハコベの花の性質として太陽がでてくると開き、太陽が沈むと閉じてしまいます。曇りや雨の日、太陽が傾き建物の影になってしまうような日照が少ない場合もほとんど開きません。
その性質から「朝白げ」「日出草」とも呼ばれるようになりました。
ハコベとハコベラは呼ばれ方が違うだけで、同じ植物のことを指します。「葉配り」という言葉が転じて「はくべら」となり「ハコベラ」といわれるようになったのがハコベの語源だとされています。
また、日本で最も古い本草書『本草和名』に波久部良(はくべら)として記載されており、それが転じてハコベとなったという説もありますが、ハクベラの語源はわかっていないことが多いです。
ハコベはあたたかくなった春頃、2月~5月に花を咲かせます。地下茎で増えやすいため、グランドカバーのようにたくさんの群落をつくります。
ハコベの花径は5mm程度しかなく、とても小さくかわいらしいです。うさぎの耳のような白く細い花びらが10枚あるように見えますが、じつは5枚の花びらが深い部分で2つに割けているためそのように見えます。
ハコベの学名である「Stellaria」は「星」という意味で、5枚の花びらを星のように咲かせる姿からつけられたのかもしれませんね。
ハコベのつぼみと種が入っているものは見間違いやすいですが、ふくらんだ先端から緑色のつぶつぶが見えたら種の可能性が高いです。
ハコベの種は「さく果」といい、成熟すると下部から種子が弾けて周辺に飛び散りどんどん増えていきます。ハコベは地下茎でも増えやすい植物ですが、より遠くへ繁殖するための手段といえるでしょう。
ハコベというと主にコハコベのことを指します。諸説ありますが、コハコベはヨーロッパから渡来した帰化植物ともいわれています。茎や葉がやや紫色がかっているのが特徴で、コハコベの雄しべは3〜5本です。花期は3月~9月と春から秋にかけて咲きます。
コハコベの茎や葉がやや紫色なのに対し、ミドリハコベのは鮮やかな緑色です。ミドリハコベの雄しべは8〜10本ほどで、雄しべの先端は3つに分かれています。コハコベに比べ、ミドリハコベは横に広がって成長しやすい傾向があります。
ウシハコベの花柱は5本あり、葉が肉厚でやや大きめなのが特徴です。コハコベとは葉の大きさや形が異なるため、見分けがつきやすいです。花期は3月~10月と長く楽しめます。
サワハコベは山などの湿地帯に自生しています。コハコベよりも花びらの割け方が浅く、桜の花びらのようにも見えます。花期は比較的涼しい時期の5月~7月です。
全体的にコハコベと似ていますが、大きな違いとして花弁がありません。また日当たりのよい場所で成長した場合、萼片の根元が赤紫色になることもあります。種子も1mm以下とコハコベに比べてとても小さいのも特徴です。
ハコベの花言葉には「ランデブー」「密会」「愛らしさ」「初恋の思い出」「追想」などがあります。
小鳥やニワトリなどが柔らかい茎葉のハコベを好んで食べるため、ハコベのまわりに小鳥たちが集まる様子からつけられたとされています。
小さくかわいらしい白い花に集まる小鳥たちから連想される花言葉は、どれも素敵なものばかりですね。
ハコベは春の七草として食べる七草粥のほかにも、おひたしや天ぷらとしても美味しくいただけます。春にはハコベの若い茎や葉を茹でて、旬の味を楽しんでみてはいかがでしょうか?
橘