一両、十両、百両、千両、万両… まさか、小判を数えているわけではないけれど、 いずれも、同じような紅い実をつける木の呼び方。 一両…蟻通し(アリドオシ) 十両…藪柑子(ヤブコウジ) 百両…唐橘(カラタチバナ) 桁が増えるほどやはり、木の高さも高く、実も多くなるようです。 千両、十両、ありどおし(ずっとある)といい、お正月には、この三つを寄せ植えにすると縁起がいいとされたとか… これらのうち、江戸庶民に人気があったのは十両だったと。 万両、十両がもてはやされるのに反して十両ブームが起こったようで、十両を盗めば首が飛ぶ…と言われた時代の事。 大金に変わりはないのだが、それでも江戸っ子達の心意気が私には感じられます…

福寿草 Adonisamurensis…フクジュソウ Adonis は、ギリシャ神話に登場するイノシシの牙に突かれて死んでしまった青年の名前に由来。 傷から出た血のように赤い花に例えた。 欧州産の本属のものは、黄色い花ではなく赤い花らしい 旧暦の正月(２月)頃に咲き出すことから、新年を祝う花として、めでたい名前がつけられたものと思われる。 がんじつそう、ついたちそうと呼ばれる、福寿草は、まさにお正月の花。 南天と合わせ寄せ植えにされるのは、難を転じて福となすという語呂合わせからで、殷商時代の古典…尚書 洪範に長寿に関する記載として五福六極 という言葉が記されています。 五福とは… 寿(長寿であること) 富(経済的に余裕があること) 庚寧(心身ともに健康であること) 修好徳(善良な心をもつこと) 考終命(天寿をまっとうすること)の五つである。 この中の、寿…庚寧…考終命 は皆健康と関連しているのは、古代以来、人間の最も重要な願いは長寿であることを物話っている。 この五福とは逆に六極(六つの災い)という言葉があるようで… 凶短折(短命) 疾(疾病) 憂(憂慮) 貧(貧乏) 悪(悪事) 弱(衰弱) その内、短折…疾…憂…弱は皆健康と関係ある事柄。 以上のことから、人間は古くから健康と長寿をいかに重要視しているかを物語っており、健康と長寿を得られないことは、最も大きい災いであると考えられている… 北山歩生 吉祥画 南天に雀 不浄の場所や鬼門の方角には、必ず南天 が植えられている。 これは南天が難を転ずるに通じる ことからの先人達の智恵。 難を啄む吉鳥として親しまれる雀も描かれた厄除吉祥の名作。 鳥居清長 盆栽売り 初春に来た盆栽売りの若衆と、 娘たちの語らいが聞こえて来そうな作品。 下ろした天秤には福寿草や梅の盆栽が見られ、 すこし腰をおって語りかける娘の表情も豊か、町中の気分がよく描かれている。

昨年末は、門松作りでせつろしい日々でした… 明けましておめでとうございます✨ 松立てて空ほのぼのと明るも門 夏目漱石 新しい年の始まりです。 新年を迎えることができた喜びを分かち合い神に感謝したい… そんな思いから正月を迎える準備にも力が入り、やがて様々なしきたりが生まれていった… ちなみに、お正月の準備は、関東では12月8日、関西では12月13日から始まり、12月28日までにすべて済ませる。 門松を飾る日は、準備期間中ならいつでもいいのですが、28日に飾るのが一般的29日は二重苦につながる事や、数字の9が苦に通じるというゴロ合わせから嫌われます。 また31日は、一夜飾りと言われて忌み嫌わる。 その理由だけども、歳神様をお迎えする準備を、前日にあわただしく行うことは失礼にあたる為、葬儀の飾りが一夜限りであることに通じるようで縁起がよくないということです。 では、30日なら大丈夫なの？ なんて思うかもしれないが、旧暦では、30日を晦日みそかといいます。 晦日は月の最後の日を意味するため、31日と同様の扱いになりますから、門松を飾る日には適していないということになります。 旧暦では一月から春が始まる。 外は、まだまだ寒く春には程遠い気候だけども新しい年を迎える心の華やぎは新春という言葉に相応しい。 めでたしは、目出度しや芽出度しと書くことがあるようで、語源は愛(め)づに愛(め)でに甚(いた)しがついた愛で甚しで… 愛づとは、心が惹きつけられるという意味の言葉で美しいもの、素晴らしいもの、可愛いものに深い愛情を寄せる気持ちを表し、そして甚しはその状態が甚だしいことを意味するようだから、祝福の言葉として定着したおめでとうは、とても愛したいという気持ちが込められた言葉。 喜ばしい… 美しい… 見事た… 美味しい… など広い意味でめでたいという言葉は使われてきた。 おめでたい人も、結局は愛すべき人。 おめでとう…と 言う方も言われる方も嬉しくなれるそんな言葉。 一月の異称といえば睦月で睦び親しむ月という意味だから、一年の始まりを家族仲良く笑顔で過ごすことが出来ればこの一年もきっと素晴らしい年になることでしょう…

オリーブ…ルッカの収穫。 オリーブといえば、平和の象徴だけども、ノアの方舟から放たれた鳩が、くちばしにこの葉をくわえて戻った。 それは、洪水の終わりを告げた。 随分、古い話です。 オリーブは、ギリシャに所縁の植物で、昔、ある都市の権利をめぐり海神ポセイドンと女神アテーナが争った。 天上の神々は、人間に最も役立つものを創造した方に与えようと宣言。 ポセイドンは、平和と多産のシンボルとして馬を… アテーナは、力と勇気のシンボルとしてオリーブをつくった。 神々の投票で一票の差でオリーブが選ばれ女神の勝ちとなった。 その都市がアテネ… 玄関にオリーブの小枝を飾ると悪魔が入ってこないという言い伝えがあります。オリーブ

篝火花(かがりびばな)…あたたかいともしびシクラメンの和名だけども、白いシクラメンもあり篝火花と呼ぶ場合燃え立つような赤色の花を指しているのだろう。 地中海東部が原産で日本には明治の中頃に入ってきたと、シクラメンという名は、円を意味するギリシャ語に由来するとか。球根がまんまるなことからきているようです。 その球根を野性の豚がよく食べていたので豚の饅頭とも呼ばれたそう。 ちょっと可哀想だな… うつむき加減の花だけども、篝火のような花びらが、秘めた感情を表していたのだろうか… 秋から春にかけて咲き、寒い冬に心をあたたかく灯してくれそうな… そんな花だから…