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まだまだ気になる放射線の植物などへの影響。「むやみに恐れることはない」専門家が伝える放射線の特徴

植物を育てるときに欠かせない土と水、そして空気。
できるだけ良い環境の中で植物を育てたい、豊に実らせたいと思いますよね。

ただ目に見えない物質は気を付けようがありません。その一つが放射線です。
一方で放射線に関する研究は進んでいます。
人への影響もわかっていることが多く、専門家は「むやみに恐れる必要はない」といいます。

そこで今回は東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から10年の今、あらためて知っておきたい放射線の基礎と植物や人への影響について、専門家にお聞きしました。

折田 真紀子(おりた・まきこ)

長崎大学原爆後障害医療研究所 放射線リスク制御部門 助教

放射線は目に見えないがわかっていることもある

私は2012年から福島原発事故からの復興に関わるようになり、住民の方の放射線への不安にお答えしたり、環境中の放射線量を測定したり、食材中に含まれる放射性物質濃度を測定したりして、現在でも福島と長崎を往復する生活を送っています。

原発事故から10年の今でも、放射線への不安を持っている方は多いでしょう。
放射線は目に見えませんが、わかっていることもたくさんあります。
特に知っておいてほしいのが次の3点です。

①放射線はいつも私たちの身の回りに存在している

②放射線による健康影響は受けた放射線の量による

③放射線は測ることができる

「放射線」は「放射性物質」から放出されています。

放射性物質から出た放射線を体に受けることを「外部被ばく」、呼吸や食事により体内に取り込んだ放射性物質から放射線を受けることを「内部被ばく」といいます。
ちなみに、放射線の単位として使われている「シーベルト」とは、「放射線によって私たちの人体にどのくらい影響を及ぼすか」を表したものです。

身の回りにある放射線


出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

自然界から受ける放射線による外部被ばくは、大地の中にある放射性物質から放出される放射線や、宇宙から降り注ぐ放射線による被ばくです。
例えば自然に存在する放射性物質の一つである「ラドン」はラドン温泉のほか、住宅の壁にも含まれています。

同様に、どこに行っても、日常食べている水や食物にはごく微量の放射性物質が含まれているため、食事によって内部被ばくをします。
例えば、肥料の3大要素の一つであり、緑黄色野菜やバナナなどに豊富に含まれているカリウムですが、このカリウムの中には「カリウム40」という放射性物質が極めて微量ながら入っています。
そのため、私たちの体の中にも存在し、体重によって保有量が異なりますが、体重60キロの男性だと4000ベクレルくらいと言われています。

日本で生活していると、平均して年間2.1ミリシーベルト程度の線量を受けます。
その内、食事による内部被ばくが0.99ミリシーベルト程度と言われています。
私たちはどこにいても、受ける放射線量をゼロにすることはできないのです。

健康への影響は受けた線量で決まる


出典:「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 平成28年度版 ver.2017001」

放射線による健康影響を考える場合、どのくらいの被ばくをしたか、つまり、被ばく線量によって決まります。

放射線による健康影響には、「確定的影響」と「確率的影響」があります。
「確定的影響」とは、ある一定の線量(しきい値)を超えるとみられる影響で、多くの症状が確定的影響に当てはまります。
たとえば、一度に100ミリシーベルト以上の放射線を受けると、男性の精子数の一時的減少を引き起こすことがあります。
また、500ミリシーベルト以上を被ばくすると、白血球、赤血球といった血液細胞の数が減少することが知られています。
ただ、しきい値以下の被ひばく線量ではこれらの症状は起こりません。

原爆被ばく者を対象としたこれまでの調査から、100ミリシーベルトを被ばくするとがん死亡の確率が0.5%増加し、それ以上の被ばく線量では、被ばく線量の増加に伴ってがんになる確率が増加することが分わかっています。

現在、日本人の死因の1位はがんで、大体30%の方ががんで亡くなっています。
つまり1,000 人の集団がいれば、このうちの300人はがんで亡くなっている計算になります。
この1000人の集団が仮に100ミリシーベルトを受けたとすると、将来、305人ががんで死亡すると推定できます。
しかし、実際には、1,000 人中 300人という値は毎年変動しますし、現在の科学では、放射線によって増えたと考えられる5人の増加分について放射線が原因だったかどうかを確認することができません。
100ミリシーベルト以下の被ばくによるがんのリスクについては、リスクとして小ちいさくなりすぎてしまうため、がんの発症の増加を証明できません。

医療の現場では、放射線は診断だけでなく、治療にも幅広く応用されています。
レントゲン撮影をはじめとして、CT検査など、現代の医療では放射線はなくてはならない存在です。
しかし、これらの検査を受けることで、放射線被ばくをすることも事実です。
例えば、胸のレントゲン撮影を1 回受けると、0.05から0.1ミリシーベルトの線量を受けます。
CT検査を1 回受けると、だいたい5から10ミリシーベルトの線量を受けることになります。
一方で、医療で受ける放射線量に線量の上限は定められていません。
なぜなら医療で放射線を利用することによる患者の方の利益が、被ばくによる不利益を上回ることを前提としているからです。
だから、その検査や治療を受ける人にとって本当に利益があるのかについて、十分に考慮される必要があります。

福島産の食材は心配せずに食べられる。放射線は測れる、だからむやみに恐れないでいい

放射性物質には「半減期」という期間があり、これは放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が半分になるまでの時間のことです。
例えば2011年の福島原発事故により放出された「ヨウ素131」は約8日、「セシウム134」は約2年、「セシウム137」は約30年です。
そのため、現在の福島ではヨウ素131は検出されませんが、セシウム134やセシウム137は土壌中などから検出されています。
放射線は目に見えませんが、放射線は測ることができます。
測ることで次の対策を取ることができます。
これは放射線防護のうえでは大きな強みといえます。

測れるという特徴を利用して、例えば発掘された土器の年代測定をする際に土器に含まれる放射性物質の量を測定することで、土器が作成されたおおよその年代を把握することに利用されています。

放射線をむやみに恐れるのではなく、このようにわかっていることを理解したうえで、今の福島にぜひ目を向けていただければと思っています。

原発事故から10年の今でも、福島の農産物などへの風評被害で悩んでいる方は多いといえます。
ただ福島産の食材はサンプリング検査が行われているので、市場に出回るものから原発由来の放射性物質が検出されることはありません。
それらを食べることに心配はいりません。

今後もこういった知識はもっと身近な形でお伝えしていきたいと考えています。

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