
株式会社メルシーフラワー(www.merci.co.jp)は首都圏を中心に展開する、量販店の花委託販売会社です。今回はSNSの活用が事業改善に繋がった事例として、取締役副社長の日巻賢二氏に話を伺いました。
(写真)左から株式会社メルシーフラワー 取締役副社長 日巻賢二氏、GreenSnap株式会社 取締役 澤田翼
花の委託販売のパイオニア、メルシーフラワー。
まずはメルシーフラワーの事業についてお聞かせください。
メルシーフラワーは首都圏約650店舗のスーパーやホームセンター、量販店にて花の委託販売をしています。創業昭和50年ということで、スーパーで委託販売をしている会社の中では一番歴史が古く、そして規模も最大となります。
委託販売を始められたきっかけはなんですか?
委託販売という事業スタイルは、弊社代表の大間が独立して花屋を営んでいた当時、スーパーで売られていた納豆をヒントにして始まりました。
当時は今と違って納豆屋さんが商品棚に陳列し、売れた分だけスーパー側に請求して売れ残りは回収するという、いわゆる委託販売の形で取引されていたんですね。大間はそれを見て、「この仕組みなら人件費がかからないし花でも通用するのではないか」と着想を得たのだそうです。
今考えてみると、新型コロナウイルスによって駅前の花屋や専門店、冠婚葬祭関係が厳しくなる中で、スーパーで展開していく委託販売はとても良い選択でした。
目標はスーパーの花売り場を“専門店化”すること。
日本最大規模ということですが、今、目指すものは何ですか?
現在は花売場の“専門店化”を目指しています。“専門店化”というのは、花の専門店で展開されるような高いクオリティの商品を委託販売でも実現するというものです。
今でも花屋の個人店や専門店は、間口が狭くて店内に入れば何か買わないといけないのではという圧迫感がある。その点、スーパーに並ぶ花ならオープンですし、とても気軽に花と接点を持てますよね。
さらにコロナ禍ということもあって、今後は花屋が量販店で委託販売する業務形態が増えていくと思います。私たちはその中で差別化を図るために、ここ数年は“専門店化”というキーワードを掲げて励んでいるんです。
ともすればスーパーにある花って「安いけどダサそう」だとか「仏花ばかりでおしゃれな花束なんて売ってない」と思われがちなのですが、そんなイメージを払拭すべく、数年前から野心的に企画を練って商品内容を変えたり、広告を打ってブランディングしているところです。
まずは会社の認知から。プロモーションの変遷。
これまで実施してきた広告やその経緯をお教えください。
広告を打つときに、まず目指したのが会社認知度の向上でした。
これには二つ狙いがあって、まず一つ目は消費者に向けて「メルシーフラワー=スーパーで売っている花」という結びつけをすることです。
やはり委託販売だとスーパーの中で商品が並ぶだけなので、店の看板を大々的に出すというのが難しく、どうしても認知されにくかった。商品のラベルや値札に「メルシーフラワー」とつけてはいましたが花の品種名と勘違いされることも多く、消費者の中では特定のスーパーにある花という位置付けでしかなかったんですね。
その認識をまずは変えていかなければということで、3〜4年前からラジオCMなどを始めました。
もう一つの狙いは何だったのでしょう?
もう一つは若年層へアプローチをして“専門店化”を進めることです。
売れ筋である仏花を買う購入層は今後減っていくであろうと。そうなると新しい年齢層に花を買ってもらう、購入層の年齢を引き下げていく戦略は、長期的に考えて必要不可欠なことでした。
そのためには商品や企画、売り場づくりなどの面で、15歳から34歳くらいまでのいわゆる若年層が求めるおしゃれさや視点が必要になってきます。新卒を採用して新しい風を取り込もうとした時、そこで必要になってくるのも若者間での会社の認知度やブランディングでした。
そんな狙いもあって、SNSの運用を始めました。
“専門店化”を加速させたSNSプロモーション。
実際にSNSの運用を始めてみていかがでしたか?
Instagramなどを開設して運用を始めたのですが、最初はなかなか上手くいきませんでした。どうしようかと悩んでいたとき、紹介いただいてGreenSnapに出会ったんです。
GreenSnapでアカウント運用を始めたのは2020年2月ごろ。今ではフォロワーも1.1万人(※)を超え、新卒採用でもSNSを見て連絡したという子がいたり、どこのスーパーでフェアをしているのか、どこでお花を販売しているのかというお問合せを頂くようになり、SNS運用によってあらゆる面で良い影響がでてきています。
※2021年9月現在
結果的にSNSが“専門店化”を進める一助にもなったんですね。
そうですね。総務省家計調査でも20代の切り花消費が150%ほど伸びているという調査結果がでています。これからはZ世代・ミレニアム世代の学生・社会人や主婦層が雑貨感覚、ファッション感覚で花を買う。
市場の動きが変わろうとしている今、これをチャンスと捉えて社員にも商品や売り場イメージを変えてほしいと思っています。もちろん、以前から買ってくださっているお客様も大切に、なおかつ若年層がいいなと思ってくれる商品をいれる。ここのバランスや折り合いを、新しい世代と一緒に築くべきだと考えています。
SNSで消費者のイメージのギャップを埋めていく。
SNSプロモーションを経て、実際に購入層の年齢の変化は感じますか?
売れ筋商品を見ると、新規のお客様が今までの年齢層と変わったことがよくわかります。
今までは菊などの仏花が売れ筋だったのですが、最近行ったフェアでは、フロックス、パンパスグラス、アマランサス、紅アオイ、水引草など季節の草花が人気でした。
こういったビジュアル的にかわいい、面白い、少し変わった花というのが売れ筋になってきたのは、明らかに購入層が若返った影響だと思いますし、GreenSnapなどのSNSプロモーションがあってこそだと感じています。
また、コロナ禍になってからお彼岸やお盆などの、いわゆる物日で苦戦をしいられた一方で、物日以外の普通の日の売り上げが伸びました。私たちが勤務している神奈川物流センターでは6月の既存店前年比が110.
これも新しい顧客が増えて、日常に花を取り入れようという気運が高まっている証拠です。
もちろんSNSプロモーションだけの結果ではなく、コロナ禍という社会的背景などのいろいろな要因が関係しているとは思いますが、結果的に狙い通りになりましたし、良い傾向だと思います。
SNS上での消費者やフォロワーのリアクションはいかがですか?
「スーパーでも専門店にあるような花が売っているんだ!」という反応をもらえることが多くなってきており、消費者向け・新規顧客獲得のPRとしてもSNSプロモーションは成功し始めていると感じています。
SNSへ投稿する際には、暗い印象を持たれがちな仏花は明るいイメージで、季節や旬に合わせたフェア企画では、個性的な花の紹介をはじめ、花の飾り方やディスプレイでフェアの世界観を伝えることをとても意識しています。
その効果もあってか、投稿を見てスーパーへ花を買いに行ったユーザーさんが自身のSNSに投稿してくれることが増えてきました。まさかスーパーのお花売り場にという『掘り出し物感覚』で投稿してくれることで、メルシーフラワーの会社名と商品がユーザー同士で拡散されていく。
こういう反応が実際に見られると、SNSが確実に貢献していると実感しますね。
ユーザーの投稿を見ると、購買行動も見てとれますよね。
“専門店化”の先に見据えているのは、単なるスーパーの花ではなく、あそこのスーパーに行けば“メルシーフラワーの花”が買える、という位置付けになること。そして行動を生み出すことです。
たとえばあるファッションブランドの切り花が成功していますが、それはそのブランドのシンプルかつ高価すぎないという安心感やブランドイメージがあってこそだと思うんです。
それと同じで、メルシーフラワーにも安いのに専門店と変わらないクオリティがあるというイメージが定着して、消費者の行動に繋がればと思っています。
スーパーという現実的かつ生活感のある場所で、ハイセンスな暮らしをイメージして夢のある花を買う。今はまだギャップを感じる人も多いでしょうが、手頃な価格で花が買えて、実は簡単に日々の暮らしを素敵に楽しめるという気づきを与えたいですね。
SNSがそのギャップを埋める橋渡し役になると。
そうです。SNSはスーパーの花のイメージを変えていくツールとしては最適です。
ラジオや新聞、協賛やスポンサーは、あくまで「メルシーフラワー=スーパーで売っている花」という結びつけにとどまってしまいます。もちろんそれも必要ですが、SNSはその一歩先にある「メルシーフラワーの花=質が良く、センスがある」というイメージをいち早く伝えることができます。
またSNSならではのリアルタイムな情報配信の速さで、最新商品の魅力を周知できるんです。
くわえて、GreenSnapは他のSNSよりもユーザーの反応がいいと感じています。花や植物に特化したアプリということで、やはり花に対して感度の高いユーザーが集まっている。花好き・植物好きなユーザーがメルシーフラワーの商品を投稿して他のユーザーに共有していく……。そういう循環がつくりだせるのは大きなメリットだと思います。
この循環が絶えないように、こちらも魅力的な商品や企画を考えていかなければいけない。そうすると社員のモチベーションも上がりますし、結果的にGreenSnapと付き合うことでメルシーフラワーのポテンシャルも引き出してもらっていると思います。
“専門店化”の次は指名買いできる仕組みづくりへ。
最後に今後の展望をお聞かせください。
SNSは目標である“専門店化”への取り組みや、スーパーの花のイメージを変えていく役割として必要不可欠なツールなので、今後も活用したいです。
また、Z世代・ミレニアム世代といった若年層へとターゲットをシフトしていく中で、次はいかにファン化させるかも大切だと思っています。さらにはそのファンがメルシーフラワーの花を欲したときに気軽に指名買いできる仕組みづくりも必要です。
今後はそのあたりを視野にいれて、さまざまな視点からGreenSnapと協力して進めて行きたいと思っています。