株式会社リッチェル(www.richell.co.jp)は、ガーデン用品をはじめ、ベビー・ペット・ハウスウエア用品などを取り扱うプラスチック製品の総合メーカーです。
今回はGreenSnapにて実施したオンラインユーザーインタビューの事例を踏まえながら、商品企画部長の本多孝輔氏に話を伺いました。
デザインと機能性抜群の園芸用品で定評のある「株式会社リッチェル」
まずは御社の沿革についてお聞かせください。
リッチェルは1956年に創業し、当時は日用品として浸透していなかったプラスチックに注目して、暮らしに身近な家庭用のプラスチック製品開発に取り組んできました。
1970年頃から園芸部門を立ち上げ、鉢やプランターをはじめとした園芸ツールをメインに扱ってきました。現在は周辺商材である腐葉土や肥料などを含めた園芸資材の総合メーカーとして、企画開発から製造・販売まで行っております。
御社の商品の特徴や強みを教えていただけますか?
リッチェルでは園芸初心者の方をターゲットに、ミドルからアッパーのグレードで、デザインと機能性の高い「付加価値型」の商品を目指しています。
とくに日本は高温多湿の気候のせいか、多くの園芸ユーザーは水はけを気にされるので、弊社では底穴だけでなく水や空気が通るように溝をつけて、排水性・通気性向上を図っています。
このほかにも機能性の面はかなり追求していて、手入れがおぼつかない初心者の方でもリッチェルの鉢がカバーするようなかたちで植物を元気に育てられよう、日々研究開発しています。
長期間色褪せしないよう耐光性を高めた材料選びや、転倒しにくい設計はもちろんのこと、店頭やご自宅でキレイに飾れるようにほこりの付着を防ぐ帯電防止剤をいれるなど、細かなところまで気を遣っています。
加工しやすいプラスチックならではのデザインや、カラーバリエーションを豊富に用意できることも弊社の強みなので、園芸初心者の方が興味を持ちやすいデザイン・機能性を心がけて商品開発に取り組んでいるところです。
【施策事例】1on1オンラインユーザーインタビュー
実施概要
今回は新商品「ボタニーハンギングポール」の企画開発にあたり、コンセプト案を用いたニーズ調査を目的として実施。オンラインにて7名のGreenSnapユーザーに各30分程度インタビューをした。
商品概要
20〜40代をターゲットとした、吊り鉢をかける新たな園芸ツール。賃貸物件の原状復帰も考慮した突っ張り式で、集合住宅でも飾りやすい省スペース設計。別売りのプレート・フックを組み合わせて自由に植物などを飾れる。
サマリー<実施企業の声>
- 募集が難しい20〜40代子育て世代や、園芸ライトユーザーをインタビュー対象にできた。
- 対象者を都市部在住者に絞り込めたことで、より商品コンセプトのブラッシュアップができた。
- 対象者が自宅というリラックスした環境下で実施できたため、よりインサイトに迫るインタビュー調査ができた。
- 想定していなかった気づきが得られ、商品コンセプトの方針転換にも繋がった。
まずは今回、オンラインユーザーインタビューをやるに至った背景や動機などをお聞かせください。
やはりコロナ禍で対面インタビューが難しくなったという背景もあるのですが、大きな動機としては、今回の商品ターゲットとGreenSnapのユーザー層が一致していた、という点ですね。
そもそもリッチェルにはお客様の声をものづくりに生かすという文化が根強く、20年ほど前から定期的にグループインタビューを実施していました。ただ、以前のインタビューではリクルーティングに苦労していて、来てくださる方の年齢層が高かったり園芸歴が長い方が多い傾向にあったんです。
今回の商品はとくに20〜40代の若いライトユーザーをターゲットにしていましたし、商品自体のインテリア性も高く、SNSでの拡散も狙っていたので、それならGreenSnapユーザーのほうが適任だろうと思い、お願いしました。
実際、お子さんを抱きながらインタビュー受けた方もいらっしゃいますし、コロナを機に本格的に園芸をやりたいと思っている対象者様も多く、理想的な方と出会うことができました。
今回は御社も初となる1on1でのオンラインユーザーインタビューでしたが、正直な感想をお聞きかせいただけますか?
あえて1on1インタビューにすることで消費者インサイトを探ってみたいという思いもあったのですが、狙いどおりの収穫があったので本当にやってよかったと思っています。
今回はとくに、園芸そのものや商品に対しての不満を思った以上にうまく引き出せたと感じています。これに関しては、対象者の方がリラックスできる環境でインタビューできたからこそだと思うので、オンラインユーザーインタビューのひとつのメリットだとも思いました。
普段は会議室でインタビューをするので対象者の方も緊張して身構えしてしまいますが、今回は対象者の自宅でまさに植物に囲まれながらの実施ということで、日常のシーンを思い出しやすかったのか、よりリアルで実体験に基づいた意見や具体的な悩みを聞くことができました。
オンラインユーザーインタビューを経ての変化や、いかせた点はありましたか?
じつは1on1のインタビューを経て、結果的に本命の商品案から別案に切り替えることになりました。つまり、当初作ろうと思っていたものと全く別物になったんです。
そもそも、今回のインタビューではいくつか仮案のコンセプト資料をお見せして、各対象者の方に評価をいただきながら進めていたんですね。
その中に弊社のほうでこれに決まるだろうという本命のA案があったのですが、インタビューをしていくうちに多くの対象者の方からB案のほうがよいという意見をいただき、最終的にB案へと方向転換をしました。
そうだったんですね。インタビューによって想定していた商品がくつがえるとは、こちらも想定していませんでした。
とくに今回のインタビューを経て大きなギャップを感じたのが、ライトユーザーも日当たりや水やりに手間をかけているということでした。我々はライトユーザーであるがゆえに手入れも楽にしたいだろうと想像していたのですが、実際は全く逆だったということに気づかされたんです。
とくに日当たりに合わせて置き場所を移動させているという方が多く、さらに吊り鉢は吊ったまま水やりしていると思っていたのですが、実際は多くの方がわざわざ外して風呂場で水やりし、水を切ってからまた戻しているということも分かりました。
そうなると、飾る場所を簡単に変えられる商品のほうがいい。これがいい気づきになりました。
フックやプレートは簡単に好きな位置を変えられること。ポールに固定跡をつけないような仕組みにすること。フックへの付け外しがしやすいこと。これらに重点をおいて、コンセプトや商品設計を見直しました。
ライトユーザーだからといって適当に管理しているわけではなく、むしろ植物愛が深い方が多いので、それに応えられる商品にしなければならないと思い改めましたね。
ほかにオンラインでのインタビューということで感じられたメリットはありましたか?
今回は都市部にお住まいの方に限定してインタビューさせていただいたのですが、このように対象者の絞り込みがスムーズにできることもメリットに感じました。
想定していた商品の利用シーンは集合住宅などの小スペースな暮らしの中だったので、限られた空間で植物をどう飾ろうとしているのか、そしてどういう商品や機能が求められているのかといった、企画の基幹となる疑問に対して解像度の高い回答が得られました。
コンセプトの段階からからターゲットにマッチしたユーザーの声を取り入れられるのは確かに大きなメリットですね。
そうですね。そもそもこの商品は、吊り鉢需要の増加に対して何が求められているのかというのがの企画の発端でした。
じつはコロナ前とそれ以降では、巣ごもり需要にともなってインドア吊り鉢の売り上げが2倍にまで伸びているのですが、その一方で吊り鉢をかける場所がないという意見も散見されていたんです。とくに都市部の若い世代は、賃貸だと壁に穴を開けるのは難しいので不満が溜まっていきますよね。
それなら吊り鉢をかけるためのツールが必要だ、ということで始まったのが今回の企画でした。
ただひとつ問題もあり、鉢やプランターなら長年製作しているのでノウハウもありますが、吊り鉢をかけるためのツールやマーケットに対するノウハウはほとんどなかったんです。
それもあって、今回はインタビューを活用する運びとなったのですが、このようなゼロからものづくりをするというときに、ターゲットを絞ったインタビューができたのはかなり有用だったと感じています。
周囲の反応と今後の展開
まだ商品は販売前ですが、展示会やバイヤーなど、周囲の反応はいかがですか?
お客様の声を落とし込んだ商品ということで、実際にバイヤーさんからもバックボーンがあって説得力があるという高評価をいただいていますね。本当にユーザーの声の力は素晴らしいなと実感しているところです。
もちろん小売店さんによって来店者の年齢層や園芸経験数やターゲットは違いますが、とくに若い年齢層の来店が多い小売店さんには、今回の商品のコンセプトや製作過程にとても共感していただいています。
今後の御社の展開をお聞かせいただけますか?
リッチェルとしては、今後も園芸初心者をターゲットに商品開発に取り組みたいと思っているので、GreenSnapさんでのオンラインユーザーインタビューは継続したいと思っています。
とくにオンラインなら時間や場所に融通が効くので、今まで難しかった子育て世代や都市部の消費者層とマッチングできたり、今回のようにリラックスした環境でよりインサイトに迫った意見が聞けるので、コロナ禍が終わったとしても継続したいですね。
今回はコンセプトベースでのインタビューでしたが、次回はもう少し具体的な商品をもってインタビューをしていこうとも考えています。