サントリーフラワーズ株式会社は、花苗や野菜、切り花などの開発・生産・販売をおこなう、園芸業界のリーディングカンパニーです。今回は2020年にオンライン商品発表のひとつとして業界初の3D展示会実施に踏み切った経緯や反響、園芸業界とSNSマーケティングの戦略について、花ビジネス部の河内由美氏に話を伺いました。
(写真)左からサントリーフラワーズ株式会社 花ビジネス部 河内由美氏、GreenSnap株式会社 取締役(セールス管掌)澤田翼
サフィニアとともに始まったサントリーフラワーズ
──サントリーフラワーズの事業や商品について教えてください。
サントリーというと飲み物というイメージが強いと思うのですが、花事業の歴史は意外と深く、実は30年以上も前からサントリー株式会社(当時)で花の研究開発に取り組んでいました。
もともとサントリーには、ワインならぶどう、ビールなら麦といった関係性の中で、植物の造詣が深い社員がたくさんいたので、その知見をいかして花苗の研究開発に着手しました。
約30年前というと、大阪花博をきっかけとしたいわゆるガーデニングブームの時代。戸建てを購入して庭に植物を取り入れたいという家庭が増えていた背景もあり、そのブームに乗るかたちで初のブランド品種「サフィニア」が大ヒットしました。
このヒットをきっかけにサントリーの花事業が急加速し、その後も青いカーネーションや青いバラの開発に取り組んで、2002年に現在のサントリーフラワーズ株式会社が設立した、というのが会社の沿革です。
サフィニアとともにサントリーフラワーズの歴史があるのですね。
サントリーのお茶といえば「伊右衛門」が有名ですが、じつは伊右衛門はまだ誕生してから15年くらいしか経っていないんです。その一方で、「サフィニア」というブランド花苗が30年以上も続いているというのは、個人的にすごいことだと感じています。 こんなにも長い間ずっと愛して購入し続けてくれている消費者の方々のおかげです。
同時に、サフィニアを超えるブランド花苗を作りたいと励んでいるところです。
とくにこれからの夏シーズンに力を入れているのが「サンパラソル」という花。暑さにめっぽう強く、初夏といっても35度近くなるときもあるような日本でも育てやすいのが魅力です。その他、暑さに強い商品として涼しげな色合いが人気の「サンク・エール」や小花が可愛い「フェアリースター」などを夏の主力商品として売り出しています。
コロナ前後で変わった売れ筋商品の傾向
コロナの影響でガーデニング始めた人が増えましたが、なにか変化はありますか?
やはり若い人や初心者が増えてきたという感触があります。年代的には30代が多いですが、これは家を買ったきっかけというのに加えて、コロナ禍でおうち時間が増えたことが要因だろうと。
都心部だとマンションなどの集合住宅が多いですが、地方に広げて考えてみると、新築の住まいの玄関先にお花を飾るという習慣が今でも見受けられるのは喜ばしいことですね。
一方で、50〜60代前後の子育てが終わったくらいの年代の方も増えました。ここもおうち時間の増加など、コロナが追い風になったのだと思います。
そうですよね。僕もコロナがきっかけでベランダガーデニングをはじめました。
やはりコロナでより打撃を受けた関東では、集合住宅に住まう傾向が高いので、ベランダでガーデニングを楽しむ方が多いですよね。
最近だと、花びらにハート柄が浮かび上がる可愛らしい品種、サフィニアアート「ももいろハート」が人気です。人気の理由は花柄の可愛さもあると思いますが、コンパクトにまとまって咲くので、ベランダで育てやすいという部分もあると思います。
コロナ禍や居住環境によって、商品の売れ行き傾向も変わってきたのを実感しています。
“熱狂度”を上げるSNSプロモーション戦略
SNSを使ったプロモーションを始めようと思ったのはいつごろですか?
2019〜2020年あたりから思いきってデジタルマーケティングに力を入れようとシフトしました。以前から始めたいと思ってはいたものの、マーケティング部門のリソースが潤沢なわけではないので、なかなか実施まで至ることができなかったというのが正直なところです。
とはいえ、新規ユーザーの獲得や、SNS時代に合わせた戦略が必要だということで、当初はコロナに関係なく始動しました。
その流れで弊社をご活用いただいたというわけですね。
GreenSnapと取引を始めたのは5年ほど前ですが、アプリ内にサントリーフラワーズの公式アカウントを立ち上げたのは、デジタルにシフトすると決めてからの2020年2月です。
結果的にそのあとすぐコロナが流行り、今までのようなプロモーション活動ができなくなったり、また巣ごもり需要も増えたので、本当に始動していてよかったと思いました。
実際にGreenSnapで公式アカウント運用を始めてみていかがでしたか?
アプローチの方向性を、既存ユーザーから新規ユーザーに切り替えられたと思います。
デジタルにシフトする前までは既存ユーザーに対してのプロモーションということで、フォトコンテストやマストバイキャンペーンなどが中心だったのですが、デジタルにシフトしてからは全く違うアプローチのプロモーションを仕掛けています。
具体的にはどういったプロモーション戦略ですか?
これは実際にアカウント運用を始めてみて気づいたことではありますが、園芸はやはり趣味領域ということで熱狂度が高い人がとても多い。
この利点をいかして、たとえばサフィニアファンのユーザーがSNSにサフィニアの様子を投稿することで新規ユーザーに拡散するといった、インフルエンサー的なアプローチで新規ユーザーを獲得していくことを狙っています。ターゲットの軸を熱狂度の高いユーザーに置いた戦略です。
ガーデニングはさほど難しいわけではないので、1年やれば熱狂度が上がりやすい趣味だと考えています。そういった性質がある中でこのようなSNSの活用は親和性が高いと思います。
ユーザーの”熱狂度”は今までどう捉えていたのですか?
今まではいわゆる定点調査的なことを行っていた程度でした。熱狂度といった定性的な部分は、分母が限られたリアルのプロモーションイベントでしか推し量れない部分だったので、デジタルにシフトしたことで分母を広くでき、なおかつ可視化できたことは大きいなと思っています。
GreenSnapとInstagramの併用が鍵
GreenSnapとInstagramの違いは感じましたか?
SNSアカウント運用はGreenSnapもInstagramも同時に始めましたが、やはり園芸にフォーカスしたSNSだということもあって、GreenSnapのほうがユーザーのコミュニケーションが活発だと感じました。
運用を始める前までは、Instagramには園芸初心者や興味だけはあるという方が多くて、GreenSnapには熱狂度の高い方たちが集まると考えていたのですが、実際に運用してみてユーザー層自体にはあまり違いはないことが分かりました。むしろGreenSnapもInstagramも両方やっているアクティブユーザーも一定数いるんですよね。
その中で違いがはっきり出たのがユーザーの反応でした。やはりGreenSnapのほうが投稿に対してコメント数が多く、さらにはユーザー同士でコメントのやり取りもあったりと、コミュニケーションもかなり活発なので、先ほど言ったようなプロモーション戦略がとりやすいと考えています。
たしかにコメントすることへの心理的ハードルが低いのか、GreenSnapはユーザー同士で盛り上がることも多いですね。
そうですね。やはりInstagramには裾野が広いというメリットがあるので、まずはInstagramを入り口にして新規の園芸ユーザーさんに広く周知し、ゆくゆくはGreenSnapを使っていただいて、より熱狂度を上げていくといった戦略を考えています。一緒に運用する相乗効果やメリットが大きいなと。
Instagramは広くキャンペーンを打つくらいしかできないですが、GreenSnapならYouTubeライブやアンケート、オンライン商品発表などを実施したり、いろいろと積極的かつ斬新なプロモーションにチャレンジできるので、フォローユーザーさんの熱狂度を上げる施策につなげたいと思っています。
また、今までは単発的な商品紹介しかできませんでしたが、今は週1回、GreenSnap公式アカウントで定期的に商品紹介できているので、サントリーフラワーズの認知が浸透してきたという実感もあります。