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ヤブカンゾウ(薮萱草)は日本最古の和歌集である万葉集に、別名の「忘れ草」として登場するほど古くから親しまれてきた植物です。夏の7月頃に収穫のできる山草で、食べることもでき、つぼみや新芽は美味しいと評判です。ただし、似た植物に毒草が混じっているため、収穫には注意の際には必要です。ここではそんなヤブカンゾウの特徴や似た植物との見分け方、食べ方や収穫方法、効果効能、花言葉についてもご紹介します。
ヤブカンゾウは元来ユリ科に分類されていましたが、研究の結果現在はツルボラン科とされています。林間の道端や野原、土手などの日当たりのよい環境に自生しており、地下茎(ランナー)をのばし群生していることもあります。
ヤブカンゾウは別名「忘れ草(ワスレグサ)」とされ、1日しか花を咲かせないことに由来します。しかし、実際は3日ほど咲いていることも多いです。
また、鮮やかな黄緑色の新芽を食べたり美しい花を眺めたりすることで、心に抱えた不安などを忘れてしまうと信じられたことから「忘れ草」とされた説もあります。万葉集には忘れ草を詠んだ歌が複数ありますが、“恋”にまつわる歌が多いです。
ヤブカンゾウに似た植物には、「ノカンゾウ」や「キツネノカミソリ」などがあります。
ノカンゾウ(野萱草)との違いは、ヤブカンゾウが八重咲きであるのに対し、ノカンゾウは一重咲きという点にあります。
キツネノカミソリとの違いは、開花時期です。ヤブカンゾウは夏前に花を咲かせるのに対し、キツネノカミソリは夏本番になってから花を咲かせます。
花姿や色までそっくりですが、キツネノカミソリの方は毒草ですので、くれぐれも注意してください。
ヤブカンゾウは6月~8月の真夏が開花時期で、花やつぼみは山菜としても食べられます。
ヤブカンゾウは花が咲かないと思っている人も多いはず。それはヤブカンゾウの花が明るい時間に1日だけ咲いて、その日の夜には花を咲き終えるため、あまりお目にかかれないことが理由です。花を咲かせているヤブカンゾウを見られたら幸運かもしれません。
ヤブカンゾウの花はやや赤みがかった鮮やかなオレンジ色をしており、直径8cmほどの大きな花を咲かせます。雄しべや雌しべの一部が花びらに変化することで、上品で華やかな八重咲きとなっています。
ヤブカンゾウは毒草のキツネノカミソリと似ていることから、食べられないと思っている方も多いですが、ヤブカンゾウ自体には毒はないので、食べることができます。
葉や新芽はほんのり甘みがあり柔らかく、生で食べても美味しくいただけます。レタスのような葉野菜に近い食感です。ただし、少々ニンニクのようなにおいがあるため、食べ過ぎには注意したほうがよいでしょう。
つぼみは、やや酸味のあるアスパラのようで美味しいと評判です。少しぬめりがでることもあり、オクラのようにも料理に使えます。
春に芽吹いたばかりのヤブカンゾウの新芽は、さっと茹でておひたしや酢味噌和えにするのがおすすめです。生のままサラダにして食べても美味しいですが、軽く茹でることで甘味が増します。また、蒸すことで食感がよりよくなるとの声もあります。
バナナのような特徴的な見た目のつぼみは、食感や味がアスパラに似ていることもあり、蒸してマヨネーズをかけて食べるのがおすすめです。また、天ぷらにしても美味しくいただけます。
ヤブカンゾウの花も天ぷらや甘酢和えにすることで、シャキシャキとした食感を生かして食べられます。
ヤブカンゾウは暑さの激しい7月に花やつぼみを収穫できます。新芽を食べる場合は、ふきのとうと同じ時期である3月~5月頃がよいでしょう。
ヤブカンゾウの葉は黄緑色で薄っぺらく、根元にかけて茎が白くなります。その根元の部分を手で折るように採取するか、鎌やナイフで刈り取ります。葉は横に広がって大きいものを選ぶとよいでしょう。
小さなバナナのような見た目のヤブカンゾウのつぼみは、次の日花を咲かせそうなしっかりと膨らんだものを選びましょう。余裕をもってつぼみよりも少し下の茎の部分を採取します。
乾燥させたヤブカンゾウの根は「萱草根(かんぞうこん)」という生薬として利用されます。
利尿作用や消炎鎮痛、止血に効果があるとされています。また、不眠症や膀胱炎にも利用されることもあります。
ヤブカンゾウのつぼみを蒸した後、天日干しにして乾燥させたものを「金針菜(きんしんさい)」といい、消炎剤や止血薬に効果がある生薬として利用されます。さらに風邪や不眠症、むくみの軽減にも効果が期待されています。
また、成分としてβ-シトステロールや複数のアミノ酸が報告されているといわれています。
ヤブカンゾウには「愛の忘却」「悲しみを忘れる」「憂いを忘れる」「宣告」などの花言葉がつけられています。
主な花言葉は恋の寂しさや悲しさ、憂いなどをヤブカンゾウを身に着けることで忘れさせてくれるとして、万葉集で詠まれたことからつけられたとされています。
ヤブカンゾウは川沿いの土手や野原に自生していますが、私有地などで無断で採取することは厳禁です。
可食部分が多く、春だけでなく真夏も楽しめる山菜であるヤブカンゾウを探しに出かけてみてはいかがでしょうか。
GreenSnap編集部