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so.ra
2021/03/23
🌸マーガレットの咲く道で🌸
その3
二人には子供がいた。それは可愛い女の子。
小さな頃は好き嫌いが多くて、なかなか大きくなれなかったが、小学校に上がってからは、仲良しの友達ができて、あちこちと駆け回り、ご飯もおかわりをするようになり、ぐんぐんと大きくなった。
小学校3年の頃には、なかなかのわんぱくで木登りもするし、時々は男の子も泣かしたり。
優しいところもあって、学校帰りには、野の花を摘んで『はい、これ!』って、照れたようにお父さんに渡すのだった。
3人は、休みの日になると、桜並木の続く土手を手を繋いで散歩した。花を飛び回る蝶のように父と母の間を、行ったり来たり散歩する時間が、みんな大好きだった。
それは、桜がもうすぐ満開という3月の終わり、その日は雨が降っていた。学校へ子供を送り出してから、しばらくして息を切らして娘が駆けもどってきた。
『どうしたの?何か忘れ物?』
『あのね、大切なことを忘れたの。
今日はお母さんの誕生日。これ、学校の花壇から持ってきたの。お母さんに、誰よりも一番にお祝いを言いたくて。お誕生日、おめでとう!』
そういって女の子は、ピンクのマーガレットを一輪差し出した。
『まぁ、有り難う。可愛い花ね。でも、学校の花を勝手にとってはダメなのよ』
『大丈夫なの。これはね、用務員のおじさんの草むしりをお手伝いしたときにお礼にって、小さな株を貰ったの。それから、内緒で私用の植え木鉢で育ててたのよ。お母さんのお誕生日をお祝いしようと思って!うふふ、じゃあ、言ってくるね。』
そういうと、傘をさしてまた雨の中へと駆けていった。
ありがとうを言う暇もなく、女の子が角を曲がる姿をみおくると、お母さんはマーガレットを胸に抱き締めて『ありがとう』と呟いた。テーブルの一輪挿しに可愛く揺れるマーガレット。
今日は素敵な誕生日。
今夜は何を作ろうかな、花を眺めながら、お母さんはニコニコと。
それからしばらくして、電話の音が鳴り響いた。
今度は忘れ物何かしら?。
笑いながらお母さんが電話に出ると、電話の向こうからは、緊張した女の人の声が聞こえてきた。
『お母さんですか?落ち着いて聞いてください。娘さんが事故にあいました。すぐに来てください!』
なんてこと!頭がぐるぐるして、心臓の鼓動が聞こえるほど大きく打っている。
『落ち着くのよ!落ち着くのよ!』声に出して自分に言い聞かせながら、お父さんに電話をすると傘をさして家を飛び出した。
その日は強い雨が降っていた。校門の少し手前の道で、女の子は車にはねられた。女の子を引いた車は逃げてしまい、女の子が倒れていたところを、近所の農家の人が見つけたのだった。
『お気の毒に、もう少し発見が早かったら。。雨が降っていたし、堀に落ちてしまったんで、発見が遅れてしまったんです。この子の傘が近くに落ちていて、拾おうとした人が気づいて発見してくれたんです。お子さんはおなくなりになってます。』
子供の変わり果てた姿を見ても、どこか夢の中にいるような、頭の中の時が止まってしまったような感覚で、お母さんは我が子の顔をのぞきこんだ。
女の子の体は、びしょ濡れで毛布に包まれていた。さっき薔薇色に上気して学校からかけ戻ってきた我が子なのに、今は人形のように真っ白で目を閉じて寝ているようだった。飛ばされて道路脇の堀の中に落ちてから、しばらく意識があったのか、その手に道のわきに咲いていた野の花を握っていた。
『しっかり花を握っているから、手を開いてとろうとしたんですがあまりに固く握っていて開かないので、そのままにしていました』
お母さんは子供の両手を震えながら包むように握った。その時、固く握っていた手が開いて、女の子の手から花が一輪こぼれ落ちた。
『ハルジョン』
この花が好きなのよ。
お母さんにあげるね。
私の秘密の場所にたくさん咲いてるの。真っ白なすっごいお花畑、本当に綺麗なんだよ。
いつか見せてあげるね。
そうだ、この花。
いつか娘が話してくれた。
花畑に私を連れていってあげると。
そう思ったら、一気に現実が押し寄せて、お母さんは我に戻った。そして、子供の名前を叫ぶように呼びながら娘を抱いて泣き崩れた。
車にはねられたことも
誰にも見つけてもらえずに、冷たい堀の中に落ちていたことも
何で今このタイミングなの
どうしてこんなことになってしまったの
ごめんね
痛かったね
苦しかったね
見つけてあげられなくて
ごめんね
なのにあなたは
死ぬときまで花を
泣いて泣いて
涙が出なくてなっても
まだ泣けてくる
桜の季節に
二人の娘は空へとのぼっていった
心にぽっかり穴のあいたまま
時が過ぎていく
🌸
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so.ra
大切なものを 預かっているよ いつでも取りに戻っておいで💖 たくさんの陽だまりの花たちと あなたをお待ちしています😊🍀 2021年12月14日 わたしの詩を、書きとめていただいて、とっても嬉しくて、今日から作家ですと名乗ることにしました🤗みんなに愛と勇気と癒しを贈る人になれるよう頑張ります😊
場所
お出かけ先
キーワード
sora の物語
マーガレットの咲く道で
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二人には子供がいた。それは可愛い女の子。
小さな頃は好き嫌いが多くて、なかなか大きくなれなかったが、小学校に上がってからは、仲良しの友達ができて、あちこちと駆け回り、ご飯もおかわりをするようになり、ぐんぐんと大きくなった。
小学校3年の頃には、なかなかのわんぱくで木登りもするし、時々は男の子も泣かしたり。
優しいところもあって、学校帰りには、野の花を摘んで『はい、これ!』って、照れたようにお父さんに渡すのだった。
3人は、休みの日になると、桜並木の続く土手を手を繋いで散歩した。花を飛び回る蝶のように父と母の間を、行ったり来たり散歩する時間が、みんな大好きだった。
それは、桜がもうすぐ満開という3月の終わり、その日は雨が降っていた。学校へ子供を送り出してから、しばらくして息を切らして娘が駆けもどってきた。
『どうしたの?何か忘れ物?』
『あのね、大切なことを忘れたの。
今日はお母さんの誕生日。これ、学校の花壇から持ってきたの。お母さんに、誰よりも一番にお祝いを言いたくて。お誕生日、おめでとう!』
そういって女の子は、ピンクのマーガレットを一輪差し出した。
『まぁ、有り難う。可愛い花ね。でも、学校の花を勝手にとってはダメなのよ』
『大丈夫なの。これはね、用務員のおじさんの草むしりをお手伝いしたときにお礼にって、小さな株を貰ったの。それから、内緒で私用の植え木鉢で育ててたのよ。お母さんのお誕生日をお祝いしようと思って!うふふ、じゃあ、言ってくるね。』
そういうと、傘をさしてまた雨の中へと駆けていった。
ありがとうを言う暇もなく、女の子が角を曲がる姿をみおくると、お母さんはマーガレットを胸に抱き締めて『ありがとう』と呟いた。テーブルの一輪挿しに可愛く揺れるマーガレット。
今日は素敵な誕生日。
今夜は何を作ろうかな、花を眺めながら、お母さんはニコニコと。
それからしばらくして、電話の音が鳴り響いた。
今度は忘れ物何かしら?。
笑いながらお母さんが電話に出ると、電話の向こうからは、緊張した女の人の声が聞こえてきた。
『お母さんですか?落ち着いて聞いてください。娘さんが事故にあいました。すぐに来てください!』
なんてこと!頭がぐるぐるして、心臓の鼓動が聞こえるほど大きく打っている。
『落ち着くのよ!落ち着くのよ!』声に出して自分に言い聞かせながら、お父さんに電話をすると傘をさして家を飛び出した。
その日は強い雨が降っていた。校門の少し手前の道で、女の子は車にはねられた。女の子を引いた車は逃げてしまい、女の子が倒れていたところを、近所の農家の人が見つけたのだった。
『お気の毒に、もう少し発見が早かったら。。雨が降っていたし、堀に落ちてしまったんで、発見が遅れてしまったんです。この子の傘が近くに落ちていて、拾おうとした人が気づいて発見してくれたんです。お子さんはおなくなりになってます。』
子供の変わり果てた姿を見ても、どこか夢の中にいるような、頭の中の時が止まってしまったような感覚で、お母さんは我が子の顔をのぞきこんだ。
女の子の体は、びしょ濡れで毛布に包まれていた。さっき薔薇色に上気して学校からかけ戻ってきた我が子なのに、今は人形のように真っ白で目を閉じて寝ているようだった。飛ばされて道路脇の堀の中に落ちてから、しばらく意識があったのか、その手に道のわきに咲いていた野の花を握っていた。
『しっかり花を握っているから、手を開いてとろうとしたんですがあまりに固く握っていて開かないので、そのままにしていました』
お母さんは子供の両手を震えながら包むように握った。その時、固く握っていた手が開いて、女の子の手から花が一輪こぼれ落ちた。
『ハルジョン』
この花が好きなのよ。
お母さんにあげるね。
私の秘密の場所にたくさん咲いてるの。真っ白なすっごいお花畑、本当に綺麗なんだよ。
いつか見せてあげるね。
そうだ、この花。
いつか娘が話してくれた。
花畑に私を連れていってあげると。
そう思ったら、一気に現実が押し寄せて、お母さんは我に戻った。そして、子供の名前を叫ぶように呼びながら娘を抱いて泣き崩れた。
車にはねられたことも
誰にも見つけてもらえずに、冷たい堀の中に落ちていたことも
何で今このタイミングなの
どうしてこんなことになってしまったの
ごめんね
痛かったね
苦しかったね
見つけてあげられなくて
ごめんね
なのにあなたは
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まだ泣けてくる
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二人の娘は空へとのぼっていった
心にぽっかり穴のあいたまま
時が過ぎていく
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