
シクラメンはサクラソウ科の多年草の植物です。
香りを持つ品種もあり、毎年新しい品種がどんどん出てくるほど人気のある植物です。
特にお歳暮のギフト用としてよく出回っています。うつむいて咲く姿が美しいシクラメンの育て方と魅力をお伝えします。
基礎情報
日当たり
シクラメンは強すぎない日光を好みます。春、秋はカーテン越しに日光を当てて、冬は日中日光に当てて育てます。
ただし日本の高温多湿な環境には弱く、5月頃から生長が鈍って休眠状態に入ります。
夏越えは9月上旬まで休眠させる方法と、休眠させない方法があります。
休眠させる時は日光の当たり具合にはこだわらず、日陰で管理します。
休眠させない場合は半日陰になるようにします。
1.日光に当てられる時は当てる。
2.日光に当てないときはできるだけ涼しくて、風通しの良い場所で育てる。
3.夏以外の季節はやわらかい日光に当てて育てる。
この3つのポイントを押さえて育てて下さいね。そして花を楽しみたい方のために、もう一つコツをご紹介しましょう。
シクラメンの花は1枚の葉に1つ咲きます。シクラメンの花は実は球根の丈夫にちゃんと日光を当てないと、咲きません。
なので葉が生い茂る10月頃から、葉組みという手入れをしましょう。手順を説明します。
まず新しい芽が中心になるように、育った中央を葉を外側に引っ張ります。
蕾も中央に寄せます。古い葉は外や下の方に、新しい芽は中央や古い葉より上になるように、調整して下さい。
風通しを良くしておくのがコツです。1〜2ヶ月に1回、この葉組みをすると花が綺麗に咲きますよ。
置き場所
シクラメンは基本的に鉢植えで育てます。
5℃までの寒さに耐えますが、比較的暑さにも寒さにも弱い植物だということを覚えておきましょう。
特に霜に当たると株が傷み、すぐに枯れてしまいます。もし室外に置く時は、軒下などの雨や霜が防げる場所に置きます。
置く場所は夏を除いて日光が当たる場所か、一年を通して涼しい場所を選んで下さい。
日当たりで置き場所を選ぶなら、春や秋はカーテン越しに日光を当たる場所に、冬は日中は窓際で日光に当てて、夜間や早朝は窓から離して冷気から守るように移動させます。
そして休眠に入る夏〜初秋は半日陰か、休眠させる場合は涼しい日陰で育てます。
冬の置き場所で気を付けたい点が、20℃を超える環境でもシクラメンが弱ってしまうということです。
シクラメンは人間が快適に感じる温度より低い気温を好むため、暖房が効いたリビングよりも玄関や廊下に置く方が育ちます。
冷暖房の乾燥した空気に当てるのも、生育上好ましくありません。
もし鑑賞目的で育てるなら、日当たりよりも、温度を優先すると長く楽しめます。
水やり
夏
シクラメンを休眠させるか、させないかで夏の水やりが変わってきます。
休眠させる場合は一切水を与えません。新しい花芽が出なくなってから、休眠の準備をします。
徐々に与える水を少なくし、6月に入るか葉が黄色くなってきたら完全に水を断って下さい。
そして雨が当たらない涼しくて風通しの良い日陰に移動させます。
もし休眠させない非休眠法で夏越しをさせるなら、水やりはやや乾燥気味に行って風通しの良い半日陰か、日陰で育てます。
非休眠法の方が難しいので、もし開花を早めたいというわけじゃなければ、できるだけ夏は休眠させましょう。
冬
シクラメンを鉢植えで購入すると、底面給水鉢という鉢に最初から植えてあることが多くあります。
これは下の皿に水を入れ、中にあるヒモやスポンジを伝って適量の水が植物に吸い上げられる仕組みです。
シクラメンは冬に育ちまます。受け皿の水が途切れないように水を与えて下さい。
時々、土の上から水を与えると肥料が行き渡りやすくなります。
底面給水鉢以外の鉢で育てるなら、土が乾いたら水をしっかりと与えます。
シクラメンは水を好みます。なので、底面給水鉢と比べて水やりが大変かもしれません。
上から水を与える時は、土から出ている球根部分に水がかからないよう、注意しましょう。
球根は湿気に弱く、何度も水がかかると傷んでしまいます。
葉や花に直接水をかけるのも良くないので、手で葉を避けて水やりをしたり、先の長いじょうろを使うと安心です。
また、冬の乾燥した時期には軽く葉水を行っても良いでしょう。防虫効果も期待できます。
肥料・追肥
シクラメンの肥料は化成肥料か液体肥料を使います。
だいたい2ヶ月に1回くらいの間隔で化成肥料は土の表面に施して下さい。
普通の鉢植えで育てるなら、週に1回ほど薄めた液体肥料を与えても良いです。
底面給水鉢なら、受け皿に液体肥料を薄めて入れます。
肥料は休眠期を除く9月〜翌年の5月にかけて与えましょう。
用土
シクラメンの用土は、水はけと通気性の良いものを選びます。
初心者ならシクラメン専用の培養土も市販されているので、それを使いましょう。
自分で配合する場合、組み合わせは複数あります。
保水性を第一に考えるなら、赤玉小粒と腐葉土とピートモスを5:3:2で混ぜて肥料を加えます。
底面給水鉢で育てるなら、赤玉土と腐葉土と粉状のパーライトを6:3:1で混ぜるのがおすすめです。
砕いたパーライトが吸い上げられた水や養分を、すみずみまで行き渡らせてくれます。
こちらの場合も化成肥料を混ぜておきましょう。
シクラメン専用の培養土に粉状のパーライトを9:1で混ぜると初心者でもお手軽にブレンドできます。
植え替え・植え付け・種蒔
シクラメンの植え替えは8月下旬から9月に行います。
休眠させた場合は古い鉢から抜く時、そこまで慎重にならなくて大丈夫です。
既に株も根も休眠によって死んでいるからです。古い土を全て落として根も半分くらい切ってしまいましょう。
逆に休眠させなかった場合はダメージを与えないように、細心の注意を払わなければなりません。
水で丁寧に土を落としたり、木の棒で古い土をある程度落とします。
植え替えは球根のてっぺんが埋まらないように植えます。
だいたい球根の半分から3分の1が埋まる程度にしましょう。
種蒔きで発芽させることもできますが成功率は高くなく、時間もかかります。
増やし方
シクラメンは球根の植物ですが、分球で増やすことはできません。種を採取して増やすことなら可能です。
ただし、発芽しにくい上に時間がかかります。しかし運が良ければ成功するので、シクラメンを育てているならチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
花が落ちた後に丸い実が出てきたら、半年ほど待って色が黄色く熟したら実を取って下さい。
中に種が入っています。秋に種を撒き15℃くらいの室温で育てると、数ヶ月くらいで発芽することがあります。
土を乾燥させてしまうと発芽しないので、底から水を与えたら黒いビニールで覆い、日陰で管理します。
発芽後も葉が増えてくるまでに2〜3ヶ月かかり、15ヶ月ほどで花を咲かせます。
ただし受粉は株にかける負担が大きく夏越えの失敗にもつながるため、シクラメンを長く楽しむなら種子の作り過ぎは禁物です。
病気・害虫
枯れた花や葉を放置すると、灰色かび病という病気にかかりやすくなります。
しおれた花は指で根本からひねって抜きましょう。風通しの悪い場所に置くのも良くありません。
害虫はアブラムシ、ハダニに注意が必要です。
アブラムシは数が少なければ粘着テープで取り除き、多ければシクラメンが指定品種に入っている薬剤を使いましょう。
ハダニは乾燥しすぎると発生し、蜘蛛の巣のようなものを植物にかけます。
アブラムシと同様に数が少ない内は粘着テープで除去が可能です。増え過ぎたら薬剤で駆除しましょう。
管理温度
シクラメンの管理温度は5〜15℃が目安です。
人間が普段過ごしている18〜25℃くらいの環境では、たちまち元気を失ってしまいます。
寒すぎず、暖かすぎない温度で管理するのが理想です。
ですが、冷暖房の空気は乾燥していて、植物を育てるのには向いていません。
玄関や廊下など、霜に当たったり凍結の心配がなく、人間にとっては寒いと感じる場所で育てましょう。
温度が極端に変化する場所も、植物にとって良くありません。
昼は窓際、夜は窓から離すなどの工夫をして、極端に温度が変わらないように工夫をしてあげてください。
種類・品種
シクラメンは品種改良が盛んに行われていて、形も色も大きさも品種によって違い、バラエティーに富んでいます。
一般的に園芸用の鉢花として育てられているシクラメンは、18世紀から栽培が始まったペルシカムという品種が元になっています。
元々は小さな花でしたが、品種改良によって19世紀後半に入って大型の品種が登場するようになりました。
この頃の大型種は現存しておらず、現在では見ることができません。
20世紀に入るとこれまでに無かった赤色のシクラメンや、ロココ咲きと呼ばれる縁が波打っている花を咲かせるヴィクトリアという品種が生まれました。
ヴィクトリアは現存している品種で、このヴィクトリアから八重咲きの品種も誕生しています。
1960年代には音楽家の名が冠されたパステルカラーの花を咲かせる「シューベルト」「バッハ」などが登場し、これらも日本を含めて広く普及しています。
他にも「ミニシクラメン」と呼ばれる、ペルシカムから派生した小型の品種があり、耐寒性に優れたガーデンシクラメンはベランダなどに置けば冬越しも可能です。
また、本来シクラメンは香りを持たない植物ですが、芳香種も存在します。
種類の豊富さから分かる通り、シクラメンは長く人々に親しまれてきた世界的に人気の高い観葉植物だと言えるでしょう。
花の形態(どんな花を咲かせるのか)
シクラメンと言えば、うつむき気味で花びらを上に反らせた花が咲くという特徴がありますが、これにはちゃんと意味があります。
シクラメンは雨季と乾季がある地域が原産の植物です。雨季は雨に当たる時間が長くなるので、花粉が流れないようにあのような形になったのです。
さて、シクラメンの花は品種によって形が違います。花びらが反り返っているパーシカム咲き。
10枚の花びらがゴージャスな印象を与える八重咲き。フリルのように、花びらの端にウェーブがかかっているロココ咲き。
花びらの縁がギザギザとしているフリンジ咲きといったものがオーソドックスです。
他にはトサカのような花びらが飛び出ている、クリスタータという珍しいものや、通称トンボと呼ばれる大きくうつむいた花を咲かせる品種もあります。
花の色は品種によって異なりますが、赤、ピンク、白、黄、紫と色の種類も豊富です。
トリビア
風水
シクラメンは背が低く、風水では土の気を持つ植物とされています。
また、下向きなので陰の気を持ち、葉が丸いので心を優しく保ちリラックスできる効果も期待できます。
シクラメンと相性の良い方角は、南、南西、西、北西です。
特に南西は土の気が強いので、シクラメンとの相性はバツグンです。
また、シクラメンは色が豊富なので、高めたい運気によって色を変えてみましょう。
恋愛運ならピンク、金運なら黄、安定感を求めるなら白がおすすめです。置き場所は玄関が良いでしょう。
花言葉
シクラメンの花言葉は色によって異なりますが、中でも代表的なのが「内気」「はにかみ」「嫉妬」です。
内気はシクラメンがうつむいている様子から付けられました。
「遠慮」や「気後れ」といった花言葉も、シクラメンの姿にちなんで付けられています。
「嫉妬」は赤いシクラメンの花言葉で、反り返った花びらが炎に見えることが由来しています。
ピンクは「憧れ」で白は「純潔」と、色によって花言葉が違うのも特徴ですね。
誰かにプレゼントするときは、色ごとの花言葉も意識して選ぶと良いでしょう。
それと、シクラメンの名前には「死」と「苦」を連想する忌み言葉が含まれていること、
そして鉢植えで売られていることが多いので、病院のお見舞いとしてはタブー視される傾向があります。
花言葉と合わせて、注意しましょう。
由来伝承
シクラメンの名前の由来は、ギリシャ語で円や回転、螺旋などを意味するkyklosです。
花の形や球根が丸いことにちなんでいると言われています。
和名では「篝火花(かがりびばな)」と呼ばれ、シクラメンの反り返った花びらを見た貴婦人が、「まるで篝火(かがりび)のよう」と言ったことから、植物学者が名付けました。
また、豚がシクラメンの根茎を食べるので、英語では「豚のパン(sowbread)」とも呼ばれ、日本では「豚の饅頭」と訳します。
シクラメンの可愛い外見からは思いつかない、意外な別名ですね。
さて、シクラメンには宗教によって様々な神話がありますが、「はにかみ」や「内気」などシクラメンを代表する花言葉は、イスラエルの伝説が由来だと言われています。
簡単にご紹介しましょう。花の妖精と言葉を交わせるほど花を愛する、ソロモンという王様がいました。彼は王冠のデザインに花のモチーフを取り入れたいと考え、花の妖精たちに協力して欲しいと交渉します。
しかし断られてしまい、失意に沈むソロモン王に唯一優しい声をかけたのが、シクラメンでした。ソロモン王がお礼を言うとシクラメンは思わずうつむいて、恥ずかしそうにはにかんだ……という素敵な伝説です。
まとめ
シクラメンの育て方や性質など、基本的な情報をご紹介しました。
温度管理が難しいと感じるかもしれませんが、適温を把握していれば大丈夫です。
ミニシクラメンのように、寒さに強い品種もありますよ。
毎年新しい品種が出てくる植物なので、もし園芸店などで見かけたらどんな種類があるのかチェックしてみて下さい。

takenaka
お花と植物を愛するライター。 お花と植物と共に暮らすグリーンライフに憧れて、去年お庭付きの一軒家に引っ越しました。まだまだ理想のお庭にはほど遠いけど、週末の楽しみは少しづつお庭の手入れをすることです♪