マルメロは、カリンとよく似た秋が春の果実です。見た目は洋梨に似ていますが、生食には向かず、お酒やジャム、砂糖漬けに加工して楽しまれます。古い時代、ヨーロッパでは子宝の象徴とされたほど、幸福のシンボルでした。
今回は、マルメロの基本的な育て方をご紹介します。収穫時期や剪定方法について詳しく記載しているので、ぜひ参考にしてくださいね!
マルメロ(西洋マルメロ)はどんな果樹?育て方は簡単?
マルメロは、中央アジアが原産のバラ科マルメロ属の果物です。「西洋マルメロ」という名前でも呼ばれ、見た目はカリンととてもよく似ています。
あまり手をかけなくても実つきがよく、狭い場所でも栽培しやすいことが特徴です。地植えだけではなく、鉢植えで栽培することもできます。
マルメロ(西洋マルメロ)とマルメロの違いは?
マルメロもカリンもバラ科の植物ですが、マルメロはマルメロ属、カリンはカリン属に属する別々の植物です。
マルメロの果実の表面には綿毛がありますが、カリンにはないので、綿毛の有無で見分けると良いでしょう。また、カリンは一本でも実をつけますが、マルメロは一本では結実しません。ただし、育て方はほぼ同じで、両者とも生食には適さないところは共通しています。
マルメロ(西洋マルメロ)の栽培に適した環境
マルメロは雨が少なく、関東以北の、夏でも冷涼な気候の土地を好みます。暖地では、実が成熟する前に落果してしまうことがあるので、生育には適しません。
地植え栽培、鉢植え栽培でも、日当たりがよく、水持ちと水はけ、風通しのよい場所を選んで育てましょう。
マルメロ(西洋マルメロ)の土づくり
マルメロは、水はけと水持ちのよいバランスの取れた土壌を好みます。肥沃な土壌の方が生育がよくなりますが、順応性があるので土質にはこだわらなくても大丈夫です。
鉢植え栽培の場合は、市販の果樹用培養土でももちろん栽培可能です。自分で土を作る場合は、赤玉土、腐葉土を8:2の割合で混ぜて作るのがおすすめです。地植えの場合は、土に2割ほど腐葉土を混ぜて栄養を与えましょう。
マルメロ(西洋マルメロ)の植え方
マルメロを植える時期は、12月〜3月です。マルメロは種から育てることもできますが、実をつけるまでに何年もの時間がかかるので、初心者の方は接ぎ木苗を購入して来る方が良いでしょう。
また、マルメロはマルメロと異なり、あまり自家受粉をしません。マルメロを育てるときは、在来種と外来種の2種類を一緒に育てた方が実つきがよくなります。
地植え栽培のマルメロの植え方
地植え栽培のマルメロは、植え付けたあと、若木の間は支柱を立てておきます。植え付け後は、株元をワラやバークチップなどで覆いましょう。
- 植える場所を決め、50センチ四方の植え穴を掘る。植え穴はすり鉢状にせず、垂直になるように掘る
- 掘り上げた土に腐葉土1:赤玉土1を混ぜておく。ただし、元の土が粘土質であったり、礫が多いときは使わない。その場合は新しい土を多めに用意する。
- 掘り上げた穴に古い根などがあれば取り除く
- 混ぜた土を植え穴の半分くらいまで入れる
- 苗を傷つけないようにポットから抜きとり、スコップなどで底を優しく削る
- 苗を仮置きし、地面とポットの上部の高さが揃うように土を入れる。幹が植え穴の中心になるように苗を置いて、周囲に土を入れる
- 植えた後は苗の周りを軽く踏み、土を落ち着かせる
- 樹高が高い場合は、植え付け時に、50〜60cmの高さまで苗を切り詰める
- 苗の周囲にドーナツ状に溝を掘り、たっぷり水をやる
鉢植え栽培のマルメロの植え方
- 8〜10号の鉢植えを用意し、鉢底ネットを敷いてから鉢底石を3〜5cmほど入れる
- やや高植えになるように半分ほど用土を入る
- 苗を傷つけないようにポットから抜きとり、スコップなどでそこを優しく削る
- 鉢の中心に苗を置き、周囲に用土を入れる
- 土の表面を平らにならし、手で押さえて根鉢と用土をよくなじませる
- 樹高が高い場合は、植え付け時に、50〜60cmの高さまで苗を切り詰める
- 鉢底から溢れ出るまでたっぷりと水やりする
マルメロ(西洋マルメロ)の水やり
鉢植え栽培のマルメロは、土の表面が乾いたら、鉢底から水があふれるくらいしっかりと水を与えてください。夏場の暑い時期は、朝夕の涼しい時間帯に1日2回水をやります。
地植え栽培のマルメロは、基本的に水やりは必要ありません。ただし、植え付けから2週間ほどの期間は、土が乾いたら水やりをして管理してください。
植え付けから2週間以上経てば、根もしっかりと安定しています。そこから先は自然の降雨のみで問題ありません。ただし、真夏などで日照りで地面が割れるほど乾燥することがあれば、地植えでも朝夕の涼しい時間帯に水やりをしてあげましょう。
マルメロ(西洋マルメロ)の肥料・追肥
マルメロは、肥料の与えすぎは禁物です。多肥になると、果肉が変色することがあるので注意しましょう。
植え付け1カ月後と、鉢植えから地植えに植え替えた後には、球肥を3〜4個、鉢のフチに埋め込みましょう。その後は、1〜2月と5月下旬、8月下旬に根元から少し離れた位置に緩効性肥料を施します。
マルメロ(西洋マルメロ)の仕立て方・剪定
マルメロの剪定は、通常は2年目以降の落葉期(12月〜2月頃)に行います。ただし、夏場には長い枝がよく伸びるので、夏季剪定も行った方が良いでしょう。夏に長い枝を伸ばしたままにしておくと、あまり実が付かなくなってしまいます。
新梢の先端はなるべく残すようにして短果枝を多く付けさせ、長果枝は切り戻します。切り戻したところから短果枝が出るので、翌年さらによく実が付くようになります。
地植え栽培のマルメロの剪定
地植え栽培のマルメロは、一般的に開心自然形に剪定して仕立てます。これは、主幹の高さが60〜90cm程度、主枝を3本くらい横方向に伸ばす自然に近い樹形です。植え付けから数年は、あまり切らず放任します。
- 植え付け時に、50〜60cmの高さで苗を切り詰める。根も1/3ほど切る
- 冬になれば、長く伸びた主枝を1/3ほど切り詰める
- 樹形ができてきたら、強剪定をせず、先端を切り詰める程度にして花芽のつく枝を伸ばす
- 6月〜7月ごろ立ち枝がよく出るので、横へ広げるように枝をきり、懐が込み合わないように透かす
鉢植え栽培のマルメロの剪定
鉢植え栽培のマルメロも、開心自然形に剪定しても良いですが、U字形の方がおすすめです。2本の主枝をU字形に仕立てると場所を取らずに済むので、ベランダなどにも置きやすいですよ。
- 植え付け時に、主枝を鉢の2倍ほどの高さに切り戻す
- 冬になれば、長く伸びた主枝を1/3ほど切り詰める
- 伸ばす側枝は先端を切り詰め、他の不要な枝はつけ根で切る
- 6月〜7月ごろになれば、左右に支柱を立て、U字に誘引していく
マルメロ(西洋マルメロ)の開花・人工受粉
マルメロはあまり自家受粉をしません。家庭菜園の場合は、在来種と外来種を2本以上育てている場合でも、人工受粉を行うと確実に実がなるでしょう。
マルメロの開花時期は、4月〜5月上旬です。花が咲いたら、雄しべについている花粉を筆などなどでまわし取って、雌しべの先端にある柱頭につけましょう。
マルメロの摘果
マルメロは、5月下旬〜6月上旬に実がなり始めます。基本的に摘果は必要ありませんが、実が多すぎるときや、形が悪い実は、この時点で摘果しておきましょう。
葉20〜25枚に1果の割合で、育ちの良い実を残して摘果します。6月下旬までに袋かけを行うことで、害虫の被害を抑えることができます。
マルメロ(西洋マルメロ)の収穫
マルメロの果実は、熟すと黄色い色に変色します。果実が黄色くなった12〜2月頃が収穫時期です。果実の長さは10cm前後、幅は8cm前後の、洋ナシのようなずんぐりとした形をしています。
熟した果実の毛は大半が取れていますが、収穫して食べるときには、この生毛は全て洗い流しておきましょう。マルメロの果実はとても良い香りがしますが、強い酸味があります。さらに硬い繊維質と石細胞でできているため、生食には向きません。マルメロは、果実酒や煮詰めてジャムとして利用するのが一般的です。
マルメロ(西洋マルメロ)の挿し木・接ぎ木
マルメロは「挿し木」と「接ぎ木」で増やすことが可能です。
挿し木は2月が最適です。枝を10cmほどカットします。健康そうな枝を選んでください。下のほうに葉がついていたら取り除きます。そして用意しておいた挿し木用の土に挿して挿し木が完了です。根が出るまでは、水やりをしっかりとして、管理してください。
マルメロは接ぎ木でも増やすことができますが、接ぎ木には当然ですが台木が必要です。種から育てたマルメロの苗かナシの幼木が必要なので、基本的には挿し木をおすすめします。
マルメロ(西洋マルメロ)の病気・害虫
マルメロはシンクイムシの被害に遭うことがあります。果実のなかに入って、美味しい部分を食べてしまうのです。シンクイムシの被害は広がりやすいので、6月下旬までに果実に袋をかけて、卵が産み付けられるのを防いでください。
害虫を見つけたらすぐに駆除し、必要に応じて果実にも使える薬剤をまきましょう。
マルメロ(西洋マルメロ)の植え替え
マルメロは、基本的に2〜3年に一度の頻度でひと回り大きな鉢に植え替えが必要です。植え替えを行わないと、根詰まりして弱ってしまいます。
植え付け時期は、12月または3月頃が適期です。植え替えの手順は、植え付けの時と同じです。
マルメロ(西洋マルメロ)を育てて収穫してみよう
マルメロは、そこまで手をかけなくても自宅で簡単に収穫できる果樹です。果実は、シロップやジャムに加工して楽しむことができますよ。
果樹は収穫できるまでには時間がかかりますが、収穫の喜びはひとしおです。ぜひ、家庭菜園で美味しいマルメロを収穫してくださいね!
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