育てるのが難しそうなイメージがあるブドウですが、実は家庭でも栽培できる果物です。収穫を楽しみながら、つるを生かして日除けとしても活用することもできますよ。
鉢植えでも栽培できるので、ブドウはベランダや庭先でも育てられます。今回は、そんなブドウの育て方についてご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね!
ブドウ(葡萄)はどんな果物?育て方は簡単?
- 連作障害
- 長く栽培するときは対策をする
- 栽培期間
- 12月〜翌10月
- 生育適温度
- 15〜30℃
秋を代表する果物のブドウは、西アジアと北アメリカが原産のつる性の果樹です。収穫時期に雨が少ない地域が適していますが、全国で栽培することができます。
ブドウは栽培が難しそうですが、実は初心者〜経験者まで、広く栽培を楽しむことができる果物です。大粒のシャインマスカットなどは栽培が難しいので、初心者は手間がかかりにくく、病気に強い品種を選んで栽培しましょう。
ブドウ(葡萄)の栽培に適した環境
ブドウは、水はけがよく、日当たりが良い場所を好みます。雨に弱く、雨に当たると病気が発生しやすい性質があるので、地植え栽培では雨除けをし、鉢植え栽培では軒下などの雨が当たらない場所で管理しましょう。
耐寒性・耐暑性ともかなり強いので、置き場所にはあまりこだわらなくても大丈夫ですが、日当たりの良さは確保するのが上手に育てるポイントです。
ブドウ(葡萄)の栽培手順
1.ブドウ(葡萄)の土づくり
ブドウは、排水性と保水性に優れた土壌を好みます。弱酸性〜弱アルカリ性の土壌が向いているので、日本の土壌に適している果樹です。
鉢植え栽培の土づくり
鉢植え栽培のブドウは、市販の果樹用培養土や、ブドウ専用の培養土を使用すれば良いでしょう。自分で用土を配合する場合は、赤玉土(小粒)と腐葉土を7:3の割合で混ぜましょう。割合を赤玉土(小粒)を8にして腐葉土を2としても育ってくれます。
地植え栽培の土づくり
地植え栽培のブドウは、土質にはあまりこだわりません。ただし、あまりに痩せている土地では、植え付け前に元肥として完熟堆肥や腐葉土をすき込んでおきましょう。
完熟堆肥や腐葉土は、栄養成分を持っているわけではありません。土の通気性や保肥性の向上など、状態を良くする「土壌改良」としての役割があります。
2.ブドウの植え付け
ブドウの植え付け時期は、温暖地では12月〜1月、寒冷地では3月下旬〜4月が適期です。苗木の大きさによって異なりますが、鉢植えで栽培する場合は、8〜10号の鉢を用意しておきましょう。苗の植え方は以下の通りです。
地植えのブドウは、仕立てのために広いスペースが必要です。風通しがよく日当たりの良い場所を選んで植え付けましょう。
- 鉢植えなどの容器に鉢底石を敷き、用土を8割ほど入れる。地植えの場合は苗よりもひと回り大きな植え穴を掘る
- ポットからブドウの苗を取り出し、底の中央をハサミなどで削る。ブドウは根が細いため、根を傷つけないように側面の土は削らない
- 植え穴の中央に幹が来るように苗を植える。ブドウは乾燥を好むので、地面より5cmほど高く浅植えにする
- 主枝は地面から50cmほどの高さで剪する
- 苗に沿わせるように支柱を立て、麻紐などで2箇所ほどを八の字に結ぶ
- 植え付け後は、たっぷり水をやる
ブドウ(葡萄)は種まきから栽培できますか?
ブドウは、食べ終わった実から種を採取して育てることもできます。ただし、手間がかかるので、一般的には市販の苗木を購入して育てるのがおすすめです。
採取した種の周囲には発芽抑制物質がついているので、種の周りの果肉や滑りをよく洗い、濡らしたキッチンペーパーなどに包んで冷蔵庫の中で保管しましょう。乾燥すると発芽率が高くなるので注意してくださいね。
種まきの時期は初春です。保管しておいた種を一晩水に浸してから、種まきを行います。発芽までには2〜8週間ほどかかります。発芽までの期間は、日当たりがよく気温が15度以上の暖かい場所で管理し、土が乾かないようにお水の管理しましょう。
3.ブドウ(葡萄)の水やり
ブドウは乾燥に強い植物です。鉢植え栽培の場合は水やりが必要ですが、地植えの場合は基本的には自然の降雨のみで問題ありません。
ブドウの葉茎は雨に弱いので、直接雨に打たれないように雨除け対策を施しておきましょう。鉢植えの場合は軒先などで管理し、地植えの場合は雨除けを作りましょう。梅雨の時期は特に注意が必要です。どうしても雨を避けられない時は、予防薬をまいておきましょう。
予防薬はブドウの株をコーティングして病気から守る薬剤です。予防薬は雨が降る前に塗りましょう。また、病気が発生してからは病気を治療するためのお薬を撒く必要があります。
夏の水やり
鉢植え栽培のブドウは、朝夕の涼しい時間帯に、表土が乾いているのを確認して鉢底から水が流れてくるぐらいたっぷり水をやります。
地植え栽培のブドウは基本的には水やりが必要ありません。ただし、夏場の日照りが続き、あまりにも地面が乾燥している場合は水をやりましょう。その場合には、目安として株元に水溜りができるくらいたっぷりあげます。
冬の水やり
冬場のブドウは、カラカラに乾燥した状態にしておきましょう。特に、地植え栽培の場合は水やりは必要ありません。
4.ブドウ(葡萄)の仕立て方
ブドウはつる性の植物ですので、つるを伸ばして大きく生長していきます。3年ほどかけて剪定し、支柱につるを誘引しながら樹形を整えながら育てていきましょう。ブドウの仕立て方は、1年目、2年目、それ以降でそれぞれ作業が異なります。
仕立て方には様々な種類がありますが、地植えの場合は棚仕立て、棒仕立て、垣根仕立てがあります。農園などでは棚仕立てを行っていますが、これは広い場所を必要とするので、家庭菜園にはあまり向かないでしょう。
ベランダや庭先でコンパクトに育てる鉢植え栽培のブドウは、行灯仕立てで育てましょう。
行灯仕立て:鉢植え向き
行灯仕立ては、アサガオなどでよく使われる市販のリング支柱を使用して仕立てる方法です。1年目は苗に沿わせるように1本の支柱を立ててつるを伸ばします。
2年目の春先から、行灯仕立てに仕立てていきましょう。春になり、枝の切り口から樹液が染み出てきたら、行灯仕立てに仕立てる合図です。
- 1年目の春:主枝を伸ばすため、幹に沿わせた支柱につるを誘引していく。副枝はかき取り、伸びた主枝を上に上にと誘引していく
- 1年目の冬:冬になり落葉したら、鉢の3倍ほどの高さになるよう行灯仕立てで支柱を立てる。支柱の中に幹を入れて這わせ、一番上のリングにつるで輪っかを作って2巻させる
樹形がしっかり整うように麻紐で誘引する
余ったつるは切り戻す
- 2年目の春:新梢が出たら、元気なものを残して剪定する
4月上旬になれば、油カスなどを施して追肥する
- 2年目の秋から収穫できるようになる
垣根仕立て:地植え向き
地植え栽培のブドウは、垣根仕立てか、棚仕立てで管理するのがおすすめです。垣根仕立ては、支柱とワイヤーを使って垣根を作っていく方法です。
- 1年目の冬:支柱とワイヤーを使って垣根を作る。一番長い主枝を誘引し、他の枝は切り戻す
- 2年目の夏:左右に1本ずつ主枝を誘引する。主枝から伸びた副枝を上に向かうように誘引する
- 2年目の冬:真ん中に伸びた主枝2本を残し、他の枝を切り戻す。残した主枝は誘引する
- 3年目の冬:2年目と同じように、中央の主枝2本を残して、他の枝を切り戻す。残した枝を誘引していく
- 4年目以降も同じ
棚仕立て:地植え向き
棚仕立ては、広いスペースと大規模な支柱立てが必要です。棚のように支柱を立てて、ブドウが屋根に這うように仕立てていきます。
- 1年目の夏:一番元気な主枝を選び、真上に誘引して伸ばしていく。棚から50cmほど下くらいまでの枝は棚に誘引する。他の枝は、下にねじ曲げて10節目で切り戻す
- 1年目の冬:棚に誘引した主枝以外は全て切り戻す。主枝の先端を1/5ほど剪定する
- 2年目の冬:主枝と反対方向に伸びた枝を第2主枝とし、伸ばして誘引していく。分岐した枝から1m以内のものは切り取る。主枝と第2主枝から出た枝葉、30〜50cm間隔で間引き、左右に伸ばして誘引していく
- 3年目〜:主枝、第2主枝から伸びた枝葉を1m間隔で間引く。6〜10芽で切り戻す。主枝の先端も強く切り戻す
- 4年目以降も〜:同じ作業を繰り返す
ブドウの剪定方法について、詳しくは関連記事を参考にしてくださいね。
5.ブドウ(葡萄)の追肥・肥料
ブドウの追肥は、生長を始める前の寒肥、実がなり出す6〜9月、実がなり終わったお礼肥の3回です。株の様子を見ながら追肥を行いましょう。
寒肥
ブドウが生長を始める前の1〜2月に、寒肥として緩効性化成肥料を施しましょう。木が大きくなって老木になれば、500gほどの肥料が必要です。
5〜6月の追肥
ブドウの実がなる前の5〜6月に即効性のある液体肥料を施します。ただし、ブドウの生長が著しい場合は、追肥は必要ありません。
余分な追肥で逆に実のつきが悪くなることもあるので、株の様子をみて施しましょう。特に地植えでは注意が必要です。
お礼肥
ブドウの収穫が終わったら、お礼肥として9月中に追肥を施しましょう。実をつけた後の樹木は、樹勢が衰えている状態です。お礼肥を与えて、来年以降の株を充実させましょう。
お礼肥には、即効性のある化成肥料か液体肥料が適しています。
実をたくさんつけるためにブドウは意外に多くの肥料を必要とします。しかし、株の様子をみながら、また成長段階に合わせた肥料選びをしないと、思った効果が得られないので注意しましょう。
6.ブドウ(葡萄)の摘穂・房の整形
ブドウは5月頃に開花します。まだ蕾の状態のときに花穂を整理することで、房の形をきれいに整えることができます。
- 一枝に一つだけ房を残し、他の節は取り除く。15節以上節がある場合は、2房残しても良い
- 根元から出ている花穂を切る
- 花穂の先端にを切り取る。こうすることで、下の粒に栄養がいくようにする
7.ブドウ(葡萄)の摘房・摘粒・袋かけ
摘房
ブドウは、前述の摘穂を行わず、開花後に房を整理しても大丈夫です。小さな実がつき始めた頃に、根元の実を取り除き、房の先端を切り取ります。
摘粒
ブドウの摘粒は、生長の遅い先端の実を取り除くことです。残す実に出来るだけ触らないように、生長が遅い小さな実を清潔なハサミなどで切り取りましょう。
袋かけ
ブドウの実がある程度大きくなってきたら、房の付け根から袋をかぶせます。こうすることで、病害虫や雨風から実を守ることができます。
8.ブドウ(葡萄)の収穫
ブドウの実の収穫時期は、7〜8月です。房全体が色づき始めたら熟したサインです。ブドウが収穫できるようになるまでに、地植えの場合は2〜3年、プランター栽培の場合は1〜2年ほどかかります。
ブドウは根元から熟していくので、房先の粒を食べて甘ければ収穫適期です。房の根元を切り取って収穫しましょう。幹全体が一気に成熟するわけではないので、状態を確認しながら収穫するのがコツです。
ブドウ(葡萄)の植え替え
鉢植え栽培のブドウは、2〜3年に1度の頻度で古い根を整理し、ひと回り大きな容器に植え替えます。植え替えの作業は11月〜3月頃に行いましょう。
植え替えの際には新しい用土を使用し、長い根は切らず、鉢に回し入れるようにして納めます。
ブドウ(葡萄)のトラブル・生育不良
ブドウは、ブドウの樹の葉や根にコブを作って生長を阻害するブドウネアブラムシなどの害虫が発生しやすいほか、多湿や雨で病気が発生しやすい樹木です。日当たりと風通しをよくすることを意識しましょう。
病気の発生には、事前に薬剤を散布して防ぐのが効果的です。袋掛けのあとに薬剤を散布するのも良い方法です。ブドウを食害する害虫を見つけたら、すぐに捕獲して駆除しましょう。
ブドウの病気や害虫について、詳しくは関連記事を参考にしてくださいね!
ブドウ(葡萄)の栽培に挑戦してみよう!
ブドウは育てるのが難しいと思われがちですが、じつは個人でも挑戦できる果樹のひとつです。プロと同じような綺麗な実は作れないかもしれませんが、家庭でも収穫することができますよ。
栽培には年数がかかりますが、樹が育つのを見守りながら、毎年手入れする楽しさは果樹特有のものです。グリーンカーテンのようにも育てられるので、ぜひ家庭菜園でブドウの栽培に挑戦してみてくださいね!
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